【初詣の歴史】知っていますか? 鉄道から始まる「初詣」の100年
毎年、9000万人以上がお参りするという初詣。
そんな初詣がいつから始まったのか、ご存知ですか?
近年の初詣参拝者数の順位を見ると、最も数が多いのは明治神宮で、次に成田山新勝寺、川崎大師と続いています。
それぞれおよそ300万人の人出があります。
参拝者数第一位の明治神宮が創建されたのは大正時代のこと。
2020年は、鎮座からちょうど100年の節目を迎えました。
明治神宮と同じ、「100年」という数字。
実は、今ある形の初詣は、この100年ほどのあいだに築かれてきたものなのです。
今回の記事では、主に明治時代の後半以降、現代に至る100年という時の流れのなかで、初詣がどのように生まれ、変化してきたのか、ということを追っていきます。
そして最後に、これからの初詣についても少しばかり考えてみましょう!
御統眞澄(みすまるますみ)
学問の世界と世の中のあいだをつなげていきたい、と思っている一学生です。同人サークルも主宰しています。
江戸から明治へ:色々なお参りのスタイル
初詣の歴史はここ100年、といってもそれはあくまでも「今ある形で」のこと。
年の初めに神社お寺にお参りする、ということ自体には、明治時代になる前、江戸時代から様々な例がありました。
ここでは「年籠り(としごもり)」「恵方詣(えほうもうで)」「初縁日(はつえんにち)」の3つを取り上げます。
年籠り(としごもり)
大晦日の夜に神社お寺にこもって新年を迎えることを「年籠り」といいます。
村や一族の単位で産土神(うぶすながみ)・氏神に籠る、ということも行われました。
江戸時代の俳人である小林一茶さんも、「とかくして又(また)古郷(ふるさと)の年籠(としごもり)」(あれこれしてまた故郷で年籠りをする時期が来た)と詠んでいます。
恵方詣(えほうもうで・えほうまいり)
恵方といえば節分に食べる恵方巻を思い浮かべる方も多いと思いますが、毎年恵方巻を食べるときに向く方向は変わりますよね。
これが「恵方」という、年ごとに変わる縁起の良い方角です。
江戸時代には元日などの年のはじめにも、この縁起の良い方角にある神社お寺を選んでお参りする、ということが行われていました。
初縁日(はつえんにち)
今でも「お不動さんの縁日」のように、定期的に「縁日」があります。
江戸時代のお正月には、「初卯(はつう)」や「初不動」「初水天宮」など、年の初めに縁日が回ってきたときに、それに合わせて神社お寺にお参りする、という人々も多くいました。
古典落語に、父子が縁日に行く「初天神」という有名なお話がありますが、これも初縁日の一つですね。
例えばこの初天神の場合、日付は旧暦の1月25日になります。
初縁日は年籠りや恵方詣と違って、元日前後になるとは限らない、といえます。
このように、江戸時代までのお正月のお参りは、「氏神」や「恵方」、「縁日」といった決まりにしたがって行われるものでした。
この「決まり」が明治時代以降変わっていくことになります。
今の私たちは神社お寺に籠ることはほとんどしないので、恵方詣と初縁日の2つが私たちの初詣にだいぶ近いように見えますが、まだ実は違っているのです。
明治から大正へ:鉄道が生んだ「初詣」
明治になって最初に起こった変化は、人々の休日が元日や三が日に集中したことでした。
これにより、「日付」が決まっている初縁日より、「方角」だけ決まっている恵方詣が盛んになります。
ここからさらに、この「方角」という縛りもなくなることで、現代につながる「初詣」が現れてきます。
意外なことに、「初詣」の誕生には鉄道が深くかかわっていました。
「初詣」という言葉が初めて用いられたのは、1885年の『東京日日新聞』記事でのこと。
ここで登場するのが、現在参拝者数第三位の川崎大師です。
当時、新橋と横浜のあいだを汽車が走っていましたが、普段、急行列車は川崎には停まっていませんでした。
しかし、三が日は川崎大師へ「初詣」に行く人が多いため、特別に停車することになった、ということが記事には書かれています。
人々は、単に信心からお参りするというだけではなく、当時はまだ新しかった「汽車」に乗り、「郊外」に遊びに行く、ということそれ自体を楽しみました。
この官鉄の汽車に加え、京浜電鉄も川崎大師に路線を開通させ、鉄道会社による参拝客の奪い合いが起こっていきます。
そして、このような鉄道会社の集客競争は、川崎大師以外にも全国のあちこちで起こっていくことになりました。
例えば、現在参拝者数第二位の成田山新勝寺も、複数の鉄道が競争することでお参りする人が増えた神社お寺の一つです。
ここまで見てきたような鉄道会社同士の競争のなか、はじめのうちは恵方詣が盛んになりました。
しかし、恵方は毎年変わる上に方角も限られており、鉄道が儲かるためには少し不安定でした。
そのため、鉄道会社のキャンペーンは次第に、方角を限定せず主に郊外の神社お寺にお参りする、という形の「初詣」にシフトし、恵方詣に取って代わっていくようになるのです。
大正から昭和へ:明治神宮あらわる
東京において「恵方」から「初詣」へ、という流れを確定したのが、冒頭で触れた明治神宮の創建でした。
東京の中心にできた明治神宮に、当然「恵方」は関係ありません。
すなわち明治神宮は、「正月にどこかの社寺にお参りする」という現代的な「初詣」のスタイルにまさにふさわしい神社でした。
東京市街地の中小寺社が関東大震災で少なからず被害を受けたということや、新しい乗り物として地下鉄が登場したこともあり、明治神宮には多くの人がお参りし、メディアも重点的に報じるようになります。
一方で、震災からの復興の中で都市化が進んだことから、そこから脱け出して遊びに行くものとしての「郊外」へのお参りは引き続き盛んに行われていきました。
しかし、その宣伝の中で「恵方」の語が使われることはもはやなくなっていくのです。
さらに、私たちが現在共有している「国民的行事」としての初詣のイメージも、戦前のこの時期に形作られていきます。
昭和から平成へ:自動車と企業参拝
続いて、戦後の初詣はどのように変化してきたでしょうか。
ここでは、「自動車の普及」と「企業参拝」の2つの例を挙げることができます。
自動車の普及
鉄道会社による参拝者の奪い合いは、戦後になっても続いていました。
これに対して、人々の新しい交通手段として急速に普及してきたのが、自動車です。
日本が車社会となるのにともなって、自動車でお参りする人が増え、交通安全の祈願や車のお祓いも行われるようになります。
企業参拝
1992年2月の「神社新報」には、「企業の正月参拝急増」とする記事が載っています。
例えば、神田明神が企業の新年参拝の予約を受け付けるようになったのは、昭和の末ごろのことです。
1月4日の仕事始めの日に集団でお参りに行く、ということも、最近の初詣における変化だといえるでしょう。
平成から未来へ:地元を再発見する初詣
ここまで見てきたように、現在私たちが知っている「初詣」は、100年のあいだに様々な変化を遂げながら形作られてきました。
この「初詣」は、お正月であればいつでもよく、神社お寺もどこでもよい、という非常にアバウトなものです。
ところが、そのようなアバウトなものとして初詣が発展してきたために、人気のある神社お寺とそうではない神社お寺とのあいだで、参拝者数に大きく差が開いてきています。
実は、初詣に行く人の数はどちらかというと年々増えており、若い人ほど初詣に行っている、というデータもあります。
しかし、そのお参り先は一部の有名な神社お寺に集中し、小さな神社お寺への参拝者は減り続けています。
「初詣」が今の形になってからおよそ100年、地元の神社お寺も応援したいという思いから誕生したのがホトカミです。
今年は大きな神社お寺に加えて、地元の神社お寺も訪れてみるようにするのはいかがでしょうか?
自分の氏神がどこか、自分がどこの檀家か、ということが分からない方も多いかもしれません。
まずはこだわらずに、近くにある神社お寺を探してみましょう!
ホトカミの現在地検索機能が便利です。
ホトカミの新しい提案は、ネットの力で地元を再発見する初詣です。
スマートフォンを片手に、色々な神社お寺をめぐってみましょう!
地元なら、混雑も避けてゆっくりとお参りできるかもしれませんね。
それでは、よい年末年始をお過ごしください!
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