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戊辰戦争150周年が人生の転機!猪苗代を「ここに住んでよかった」と思える地域に【土津神社(福島県)宮澤重嗣禰宜インタビュー】

最終更新:2021年05月07日(金)
公開:2021年03月08日(月)
宮澤重嗣禰宜と土津神社御本殿

福島県会津地方にある、日本で4番目の大きさを誇る猪苗代湖(いなわしろこ)。
その北にあるのが会津藩の歴代藩主をまつる土津(はにつ)神社です。

土津神社の主祭神は将軍徳川家光公の弟で、初代会津藩主を務めた保科正之(ほしなまさゆき)公。
紅葉スポットとしても人気で、秋には8万人もの参拝者が訪れます。

月間120万ユーザーが集まる神社お寺・御朱印の検索サイト「ホトカミ」では、
「神主さんの言葉を通じて、神主さんや神道の魅力を伝えたい」という想いから日本全国
10名の神主さんのインタビュー記事を公開します。

第三弾となる今回は、土津(はにつ)神社の禰宜(ねぎ)を務める宮澤重嗣(しげつぐ)さん。

「四季が詰め込まれた限定御朱印」のお話や「猪苗代にかける想い」「神主になるまでの経緯」「土津神社で心に残る体験をしてもらうための取り組み」などをうかがいました。

    目次

  1. 御朱印を通じて土津神社の四季の魅力や伝統文化を伝えたい
  2. 生まれ育った会津・猪苗代をより豊かな地域にしたい
  3. 戊辰150周年をきっかけに、仕事を辞めて神主に専念
  4. 家族のアルバムに残る体験を神社で
  5. 復活!東北の日光・猪苗代 神社から地域を豊かに
  6. 土津神社の情報

御朱印を通じて土津神社の四季の魅力や伝統文化を伝えたい

土津神社では、いつもカラフルで季節が感じられる限定御朱印を頒布されていますね。

季節ごとに「春詣」「夏詣」「秋詣」「冬詣」の限定御朱印を頒布しています。

土津神社の冬詣の限定御朱印(頒布期間:12~2月)

「土津神社に四季を通じてお参りしていただきたい」と思い令和2年6月から始めました。

土津神社は境内のイロハモミジの紅葉が人気で、秋に多くの人が訪れる神社でした。
しかし、土津神社の境内の魅力は秋だけではありません。

四季折々の土津神社

春はタカトウコヒガンザクラというピンク色が鮮やかな桜が咲き乱れ、
夏は青紅葉をはじめ、徳川将軍家や会津藩主松平家の家紋であるフタバアオイなどの緑がとても爽やかです。
冬は雪に包まれた境内の凛とした空気感を味わえます。

境内の風景がとても好きで、秋に限らず四季が織りなす土津神社の魅力を知っていただきたかった。
ふらりと訪れ、五感を使って全身でその瞬間や季節の移ろいを味わうことで、心が軽くなる場所が神社だと思うのです。

限定御朱印を頒布することで、季節ごとにお参りにいらっしゃる方が増えました。

インタビューに応じる宮澤重嗣禰宜

どの季節も御朱印の種類が豊富ですが、すべて宮澤さんが考えていらっしゃるのですか?

そうですね。
伝えたい魅力が多くて結果的に種類が増えていきました。

一番最初に作りたいと思ったのは五行をモチーフにした御朱印。
土津神社の名前は、「万物は『木・火・土・金・水』からなる」とする五行思想に由来します。
五行には季節や色、神獣(しんじゅう)が当てられているので、それぞれの意味にそったデザインを意識しました。

土津神社の冬詣の限定御朱印(頒布期間:12~2月)

他にも、花言葉や年中行事をテーマにした御朱印を頒布しています。
御朱印を通じて、日本の伝統文化への理解につなげていきたいです。

新たに御朱印を頒布しようと思っても、なかなかできるものではないと思います。どうしてご自身でデザインからすべてできるのでしょうか?

神主以外の仕事の経験が活きています。

大学を卒業してからは10年間福祉施設に勤め、広報の経験がありました。
広報誌やイベントのチラシを作るうちに、イラストレーターなどのツールを使えるようになっていったのです。

授与所の宮澤重嗣禰宜

生まれ育った会津・猪苗代をより豊かな地域にしたい

宮澤さんは神主の家系のお生まれですが、もともとは神主以外のお仕事をなさっていたのですね。いつ頃から神主になろうと思われたのですか?

小さいころから神主になろうと意識していたわけではありません。
大学や社会で多くのことを学ぶうちに、だんだんと神社への想いが強くなっていきました。

うちは神主の家系といっても、祖父も父もサラリーマンをしながら休みの日に神社で奉仕する、いわゆる兼業の神主でした。

父から「神社を継ぎなさい」と言われたことはないですね。
ただ「神主の資格だけはとっておくといいよ」とは言われていました。

もともと「自分の生まれ育った猪苗代をより豊かにしていきたい」と思っていたので、
大学では地域福祉を学びました。

地域福祉は「ここに住んでて良かった」と思ってもらうにはどうしたらいいかを研究する学問です。

大学卒業後、神主の資格をとるために1年間國學院大学に通いました。

國學院大学では、神社やお祭りが、地域のつながりや助け合いの心、郷土愛を育む存在であると学びました。
神社やお祭りには地域福祉に通じる部分があると感じたとき、面白いと思ったんです。

その後、社会人として福祉施設で働きながら、
夜間の大学院に通い、地域福祉とお祭りと神社の関係を研究して修士をとりました。

大学院の卒業後、「明るく豊かな地域をつくる」という理念のもと活動する青年会議所に入ります。

それまでは研究やインプットが中心で、学んだことを実践する場がありませんでした。
学んだことを青年会議所を通して実践するなかで、ノウハウやスキルも身につきましたし、地域に対する思いも強くなっていきました。

こうして、「神社を通して地域を豊かにしていこう」と思うようになったんです。

インタビューに応じる宮澤重嗣禰宜

大学では地域福祉を学ばれたとのことですが、進学される前から地元への関心があったのでしょうか?

ありましたね。

小さいころに村のお祭りでかついだおみこしや、村の人が企画した焼きそばや金魚すくいが思い出に残っています。
そういった経験から郷土愛が育まれ、「自分が生まれ育ったところを豊かによりよくしていきたい」「ここに住んでてよかったと思えるような地域にしたい」と強く感じるようになりました。

戊辰150周年をきっかけに、仕事を辞めて神主に専念

現在は神社でのご奉仕がお仕事の中心となっているようですが、転機はありましたか?

2018年に福祉施設を退職して、神主に専念するようになりました。
それまでは福祉や青年会議所の活動に携わりつつ神主をしていたので、年末年始やご祈祷が入ったときに奉仕していました。

仕事を辞められるというのは大きな決断だと思いますが、きっかけは何だったのでしょうか?

「神社から猪苗代や日本を元気にしたい」という思いが強くなったタイミングと、
会津で激戦が繰り広げられた戊辰戦争の150周年がちょうど重なったのが2018年でした。


実は2016年から福島県のインバウンド事業「ダイヤモンドルート・ジャパン」プロジェクトに携わりまして。
会津の現地コーディネーター支援で、またロケ地となった土津神社の神主として協力しました。

本殿で御祈祷する様子

ダイヤモンドルート・ジャパン
「ダイヤモンドルート・ジャパン」は福島県・栃木県・茨城県の3県を結ぶ観光ルート。
外国人観光客に人気の東京・箱根・富士山・名古屋・京都・大阪を周遊する「ゴールデンルート」に次ぐ、新たな観光ルートとして提案された。
3県の魅力的な観光コンテンツを映像化し、YouTubeを通じて世界に発信している。
「サムライ」「ブシドー」をテーマにした映像は海外からの人気が高く、総再生回数は6000万回を越える。
Diamond Route Japan 公式サイト
Diamond Route Japan YouTubeチャンネル

国内外の方に「福島に、会津に、土津神社に来てください!」と言っているのに、
当時はほとんど神社にいなかったので、参拝者を受け入れられる状態ではなかったのです。

せっかくお参りに来てくださった方に、きちんと価値を提供できていないことに歯がゆさを感じるようになりました。

また、2018年は戊辰戦争150周年で、会津に注目が集まった年。
初代会津藩主である保科正之公のお墓がある土津神社にも、取材の依頼が増えました。
しかし、サラリーマンだとなかなか予定を合わせられない。

「今しかない」と思って退職し、神社に力を入れはじめました。

神主に専念なさるようになって、一番最初に取り組まれたことはなんですか?

まずは土津神社やご祭神について徹底的に調べ、神社の歴史や魅力を自分のなかに落とし込みました。

「ダイヤモンドルート・ジャパン」を通じて、
当たり前だと思っているものも、第三者から見ると、価値や魅力であると気づいたんです。

土津神社に眠っていた資源の整理が概ね進んできたところで、体験できる形にアウトプットしていきました。

最初に取り組んだのは、御朱印帳とお守りです。
ちょうど台風で倒れてしまっていた御神木から作りました。

ご祭神の保科正之公が大切にしていた敬内義外(けいないぎがい)という考え方があります。 慎みの心を持ち、自分に対しても他人に対しても義を大切にしていくという考え方をもって政治を行った方だったので、その価値観を大切にした御朱印帳を奉製しました。
お守りは、保科公の事績を刻んだ石碑の土台にいる神獣「贔屓(ひいき)」がモデルになっています。

御朱印帳とお守りを持つ宮澤重嗣禰宜

家族のアルバムに残る体験を神社で

授与品のほかに取り組まれたことはありますか?

七五三詣に来た子が、ご祈祷だけでなく碁盤の儀(ごばんのぎ)も体験できるようにしました。
せっかくお参りに来てくださったなら、忘れられないような体験をして、感動を与えられるようにしたいです。

七五三の時の本殿

神社の良さのひとつは、変わらずあり続ける場所であることだと思います。

土津神社で結婚式をあげた夫婦が、安産祈願、初宮参り、七五三とお参りにくる。
大きくなった子供たちがまた結婚式や安産祈願と、来てくれるのです。

世代を越えて受け継がれていく環境を残していくことが、地域の人にとっての価値になると感じています。
家族の心の風景のような、アルバムに残る場面を神社でつくり、残していきたいです。

神主は「社会や誰かの幸せを願う仕事」ですから、幸せな仕事をさせてもらってるなと思います。

インタビューに応じる宮澤重嗣禰宜

神社の良さというお話がありましたが、宮澤さんにとって神社とはどのような場所ですか?

神社は自分と向き合う場所だと思うんです。

「いのり」は、お願い事をする「祈り」だけでなく、自分の意思を宣言する「意宣り」とも書けます。
また、神道の「道」は何かの途中を意味していて、理想を追求する姿勢を感じ取れます。

あるべき自分や平和な社会の姿を願い、理想の実現のために自分がすべきことを考え、誓いを立てる「いのり」の場所が神社なのではないでしょうか。

復活!東北の日光・猪苗代 神社から地域を豊かに

最後に、土津神社や猪苗代を、今後どうなさっていきたいかお聞かせいただけますか。

土津神社には活用しきれていない魅力がたくさんあるので、掘り起こして、価値を可視化していく。
そして来てくれた方が感動できるような体験のできる場所にしていきたいです。


あとは、戊辰戦争で焼ける前の土津神社の社殿を復興したいとも思っています。
江戸時代の土津神社の境内を描いた屏風絵が残っているので、できるだけ当時の姿を再現したいですね。

江戸時代の土津神社を描いた屏風『土津神社図屏風』(福島県立博物館蔵)

昔は日光東照宮のような豪華絢爛な社殿が建っており、「東北の日光」とも言われていたそうです。
世界遺産である日光と並ぶような神社が猪苗代にあれば、
「猪苗代は良いところだよ」
と誇れて自慢できるようになれば、
多くの人が「行ってみたい」「住んでみたい」と思うようになると思います。

土津神社の参拝者を増やすことで、猪苗代に住む人たちの精神面だけでなく、暮らしや経済も豊かにしていきたいです。

雪が積もった鳥居の前に立つ宮澤重嗣禰宜

土津神社の情報

所在地:福島県耶麻郡猪苗代町字見祢山3
アクセス:磐越自動車道「猪苗代磐梯高原IC」より車で10分
JR磐越西線「猪苗代駅」よりタクシーで10分

電話番号: 0242-62-2160
公式ホームページ:土津神社
ホトカミ:土津神社

協力:神道青年全国協議会

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