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「実物を見て、感じたことそのままを大切にしてほしい」神主と教員を両立する小林さんの想い【海山道神社(三重県)小林一憲権禰宜インタビュー】

最終更新:2021年05月07日公開:2021年03月18日

三重県四日市市にある海山道(みやまど)神社。
伊勢神宮へと続く伊勢街道のそばに位置し、かつては「伊勢路の伏見稲荷」とも呼ばれた、赤い鳥居の美しい神社です。

月間120万ユーザーが集まる神社お寺・御朱印の検索サイト「ホトカミ」では、
「神主さんの言葉を通じて、神主さんや神道の魅力を伝えたい」という想いから日本全国10名の神主さんのインタビュー記事を公開します。

5回目となる今回インタビューしたのは、海山道(みやまど)神社の小林 一憲(かずのり)さん。
普段は私立中高一貫校で社会科教師として働きつつ、海山道神社の神主もされています。

教員と神主をされている小林さんに、「神主だからできる日本史の授業」「実際に自分で体験することの大切さ」「SDGsと神道」についてうかがいました。

    目次

  1. コロナ禍でも思い出を作ってほしい!神主の先生とめぐる伊勢志摩の旅
  2. 運命に導かれ、教員・神主に
  3. 自然を敬う神道はSDGsに通じるものがある
  4. 海山道神社の情報

コロナ禍でも思い出を作ってほしい!神主の先生とめぐる伊勢志摩の旅

小林さんは普段、私立高校の教員として働かれているそうですね。神主だからこそできた学校での活動はありますか?

去年は有志の生徒を連れて、伊勢神宮をはじめとした三重県内の研修旅行を企画しました。

コロナウイルスの影響で体育祭などの行事が中止になってしまったんです。
生徒たちに思い出を作ってほしいと思い、自分にできることは何かと考え、感染拡大防止に配慮して、県内に限った日帰り旅行を企画しました。

例年は授業の一環として奈良や京都へも旅しています。
マイクロバスに20人ほどの生徒を乗せて、伊勢神宮の外宮と内宮・猿田彦(さるたひこ)神社・二見浦(ふたみがうら)などをめぐりました。

それぞれの神社に勤めている神主仲間に案内をしてもらい、正式な参拝の仕方を学んだり、普段見られない場所も見せてもらったりしました。

普段は元気でさわがしい生徒たちが、おとなしく神主の説明に聞き入っている姿が印象的でした。
神主の人脈をフル活用した旅で、生徒たちにも喜んでもらえたようで良かったです。

個人でお参りするのでは絶対にできない経験ですね。 他にも神主だからこそできたことはありますか?

平安時代の貴族が着ていた狩衣(かりぎぬ)を着る機会を授業のなかでつくりました。

日本史の教科書に狩衣がでてくるんですが、生徒たちは見たことがない。
神主は今でもご祈祷のときなどに狩衣を着ます。
生徒たちは本物の狩衣を見たらどんな反応をするのかなと思ったのが始まりです。

実際に着た子たちは、目がきらきらしていて嬉しそうでした。
今では恒例行事となり、職員室の先生方にも好評です。

歴史の授業というと、先生が黒板に書いたものを写して暗記して…という座学のイメージが強いです。
日本文化の研修旅行や狩衣体験などの取り組みはどのようなお考えから始められたのですか?

百聞は一見に如かず、実物を見ることが大事だと思っています。

教科書に載っている貴重な文化財も、実際に見れば感じるものがあるはずです。

歴史というものは、現代の人は誰も見たことがありません。
見たことのないものを史実や伝説にしたがって伝えるわけですが、少しでも見たものの話ができればよりリアルに歴史を伝えられます。
ですから私も伝えるためにいろいろなものを見るし、学んでもらう生徒たちにも実際にいろいろなものを見てほしい。

それに、ただ座って学ぶだけじゃ面白くないと思います。

実際に体験することを通じて、生徒さんたちに何を伝えたいですか?

自分の主観はあまり言わないようにしています。
言ってしまうと、生徒たちは教師である私のフィルターを通して見てしまう。
言葉の端々には出てしまっているでしょうが…(笑)

生徒たちが自然に感じたことそのままが大切だと思います。
違うなと感じたり、面白くなかったりしても、それでよいです。


ですから生徒たちに「これを感じてほしい」「これを知ってほしい」とはあまり伝えません。
大切なのは、実際に見る、感じるなどの経験を積むことだと思います。

あえて言わないところに、小林さんの熱い想いを感じました。 教員と神主を両立されていますが、どういったところに違いを感じられますか?

精神的な話になりますが、袴(はかま)を着ると言葉遣いや姿勢、たたずまいなどが変わりますね。

神主でいるときは、より心をきれいに整えようという気持ちになります。
神主は掃除をよくするし、格好も白が基調です。
神道が大切にしている言葉に「浄明正直(じょうめいせいちょく)」とあるように、「清く明るく正しく真っすぐな心でいよう」と思っています。

神主としての意識は学校にいるときにも影響しているかもしれません。

身の回りをきれいにすると、自分自身の心もきれいになります。
生徒にも、勉強机の上を整理整頓することの大切さを伝えています。
だからといって自分の机がきれいかというとそんなことはないのですが(笑)

運命に導かれ、教員・神主に

小林さんは神主ではなく一般の家系のお生まれだそうですが、神道に興味を持ったきっかけは何ですか?

歴史が得意で人の生き様を知るのが好きだったこともあり、皇學館大学の国史学科に進学しました。

入学前は皇學館大学が神主の資格を取れる大学だとは知りませんでした。
大学の部活動の先輩に「せっかく皇學館に来たのだから、他ではできない神道の勉強もするといい」と言われ、神道の授業も履修するようになったんです。

するとお正月の助勤(神社のお手伝い)に行くことが増えて、神社の仕事が面白いと思うようになりました。
今まで経験したことのない非日常の空間でしたし、何よりお世話になった神主さんが楽しそうで充実している様子で、神主の仕事もいいなと思いましたね。

神主もいいなと思いながらも、最終的に教員の道を選ばれたのはなぜですか?

国史学科では教員免許取得を目指していたので、大学三年次に母校へ教育実習に行きました。

母校への愛着もありましたし、生徒たちと触れ合う時間が楽しくて、 実習後「絶対にここで先生になりたい」と思ったんです。

教員免許を取得して大学を卒業したあとは母校に就職し、今でも社会科の教員を続けています。

どうして海山道神社の神主になられたのですか?

そろそろ結婚したいと考えていたときに、妻とのご縁をいただきました。
そして妻の実家が海山道神社を預かる神主の家系だったため、神主の資格を取りました。

皇學館大学で神道を学び、多くの神社でご奉仕させていただきましたし、
本業は教員ですが、大学卒業後も地元の神社でお手伝いしていたことから、
妻とのご縁も不思議な運命だったと感じています。

いずれは神主として海山道神社を守っていく立場になりますね。

では、小林さんからみた海山道神社の魅力は何だと思いますか?

人と人が出会う場所であることが魅力だと思います。

神社にはお祭りがあって、いろいろな方が来られます。
お祭りのあとは直会(なおらい)という皆でお供えもののお下がりをいただく宴会が開かれます。
私自身、海山道神社のお祭りを通しての出会いから多くのご縁をいただきました。

海山道神社に限った話ではないかもしれませんが、ご縁が生まれる場所であることが一番の魅力だと思いますね。

小林さんはどのくらい海山道神社で奉仕されているのですか?

普段は教員をしていますが、お正月や大祭など、参拝者が多いときに神主として奉仕しています。
神主としてご祈祷などをきちんと勤めることを意識しています。
まだまだ経験の浅い若輩ですので、先輩方に教えていただいています。
皆さん、本当に良い人ばかりでいつも助けられています。

年末は、氏子さんの家をまわりお祓いもします。
氏子さんから地域や地域の人々の昔の話をうかがって、神社がいかに大切にされているのか実感しますね。

また、三重県の若手神主の団体である三重県神道青年会にも所属して、できる範囲で活動しています。

自然を敬う神道はSDGsに通じるものがある

三重県神道青年会ではどういった取り組みをされているのですか?

神主に向けて、SDGsを知るグループワークや新職員の交流研修を行っていました。

SDGs(持続可能な開発目標)
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標。
17のゴールから構成されており、2015年の国連サミットで採択された。

SDGsを知ったのは教員として参加したJICA(国際協力機構)での研修。
はじめて聞いたときに、SDGsと神道は共通する部分が多いと思いました。

例えば三重県神道青年会では、神道の自然を敬う精神から、海岸の清掃活動を定期的に行っています。
これはSDGsの「11. 住み続けられるまちづくりを」「12. つくる責任 つかう責任」「14. 海の豊かさを守ろう」などに通じていますよね。

   

ですからSDGsが重要視されるようになったからといって、神道青年会の活動内容は変わっていません。
ただ、SDGsを学ぶことで神道の考えの大切さを再認識でき、
青年会の活動や日々の神社での奉仕にSDGsの項目を意識しながら取り組めるようになったのではないかと思います。

神道の考えの大切さというお話がありましたが、小林さんの考える神道の魅力は何ですか?

「絶対にこうしなければならない」という教えがないのが魅力だと思います。

柔軟で、他の宗教も受け入れて、来るものを拒まない。

神道は道ですから、追い求めていくことが神道なのではないでしょうか。

いろんな人の考え方があって、皆さんの思った形のものが神道。
それが面白いですね。

他の宗教だけでなく、SDGsとも融合していけることは新たな視点でした。
普段あまり意識したことはありませんでしたが、確かにSDGsと神道は親和性が高いですね。

持続可能なよい社会をつくるためには、受け継いできたものを次に繋いでいかなければなりません。

伊勢神宮では、式年遷宮(しきねんせんぐう)を通して20年に一度お宮を建て替えることで、美しい社殿や神宝を保つとともに、技術を受け継いできました。
常に若々しく美しいという意味の「常若(とこわか)」を大切にする神道の精神から、式年遷宮は1300年続いています。

私も、神社は過去から受け継いだものという感覚があります。
そして自らだけのものではなくて、いずれは次の世代に渡すもの。
今は勤めることでいっぱいで将来のことは具体的に考えられていませんが、
先祖から受け継いだ自然や伝統、神社を次の世代にどう残せばよいのか、そのためには何をしたらよいのかと探っています。



【海山道神社の情報】
所在地:三重県四日市市海山道町1丁目62
アクセス:近鉄名古屋線海山道駅から徒歩1分
電話番号:059-345-5419
公式ホームページ:海山道神社
ホトカミ:海山道神社

協力:神道青年全国協議会

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