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生まれ育った「大山」を多くの人につなげたい。神社の魅力を発信し続ける神主さんの素顔。【大山阿夫利神社(神奈川県)目黒久仁彦権禰宜インタビュー】

最終更新:2021年03月27日公開:2021年02月28日

神奈川県にそびえ、国定公園にも指定される自然豊かな大山。その大山には、古くから信仰を集める 大山阿夫利(あふり)神社が鎮座しています。

江戸の人口が100万人だったころ、年に20万人がお参りしたとされる大山阿夫利神社。都心からも程近く、太平洋を見渡す眺望や紅葉のライトアップを楽しむ人々で、今なおにぎわう神社です。

月間120万ユーザーが集まる神社お寺・御朱印の検索サイト「ホトカミ」では、「神主さんの言葉を通じて、神主さんや神道の魅力を伝えたい」という想いから日本全国10名の神主さんのインタビュー記事を公開します。

大山阿夫利神社に勤める神主の目黒久仁彦(くにひこ)さんにインタビューをしました。

境内でのカフェの開設や地域の広報との連携など、新しいことへ積極的に取り組む目黒さん。大山を愛する神主の、隠された想いと素顔をご紹介します。

    目次
  1. ミシュラン認定の絶景を楽しめるカフェに秘めたこだわり
  2. 小学生で「神主になる!」宣言 大山を守る決意
  3. 大山の文化を通じて、若い世代の経験を育てたい
  4. 映える大山の魅力を発信!その裏には映画好きの素顔が
  5. 大山を知ってもらうため、考え抜き続ける
  6. 大山阿夫利神社の情報

ミシュラン認定の絶景を楽しめるカフェに秘めたこだわり

大山阿夫利神社では、神社の横に新しく開いたカフェが大人気だそうですね。

(目黒さん) 令和元年に「茶寮 石尊(さりょう せきそん・以下「石尊」)」というカフェを開きました。

「石尊」では大山の湧き水を引いて、コーヒーや紅茶を淹れています。水の神様をまつる大山阿夫利神社ですので、一番のオススメが水なのです。プロのバリスタの方から「この水で淹れたら何でも美味しくなる」とほめられた名水です。テラス席からは日の出や江ノ島を見晴すことができ、絶景を楽しみに来る方も多くいます。


「石尊」には「神社の新しい入口」というコンセプトがあります。

たくさんの方が普段から慣れ親しむカフェを神社が境内につくることで、大山阿夫利神社に初めてお参りに来る方にもより親しみを持ってもらえるのでは、と考え「石尊」を企画しました。

「石尊」では神社の雰囲気を感じられる工夫を凝らしています。たとえば、畳でくつろげる和室は、神社の建物をそのまま客席に活用したものです。また、同じ喫茶店の意味を持つ言葉であっても、「カフェ」ではなく「茶寮(さりょう)」という言葉を選びました。

お客さんからは、「神社にいるけれども、すごく居心地がいい」と聞いています。

現代の人の感覚からすると、神社って緊張感のある場所だと思われてしまうことも多いのですが、本来の神社って心地のいい場所なんです。それに、大山阿夫利神社は観光地としても江戸の民衆に愛されてきた神社。聖と俗が混在した歴史を持ちます。それを体現するのがこの「石尊」です。


小学生で「神主になる!」宣言 大山を守る決意

目黒さんは、どういった経緯で神主になられたのですか?

(目黒さん) 私は大山のふもとで古くからの宿を営む家で生まれ育ちました。また、目黒家は神主として代々と大山阿夫利神社に勤めてきた家系でもあります。

4歳の頃には、大山の伝統芸能『大山能』の初舞台を踏みました。夏には宿へたくさんお参りの方が来るので、お客さんの布団を敷くなど、よく家の手伝いをしていました。大山の文化が自分の日常だったんですよね。

神主になろうと意識するようになったのは小学生の頃でした。

町内旅行のバスの中で「将来は何になりたいの?」という質問が回ってきたときに、「神主になる!」と答えて周囲がどよめいたことをよく覚えています(笑)。とはいえ小学生ですので、父や祖父の背中を見ながら、漠然と「自分もなるべきは神主なのかなぁ」と思っていた気がします。

成長するにつれて段々と深く神社に関わるようになると、「大山の伝統や歴史を自分の代で途絶えさせることがあってはならない」と思うようになりました。それに「自分から大山を取ったら何が残るんだろう」と考えたとき、ほかに思い当たるものがなかったんです。「この大山と神社の伝統と歴史を守れるのは自分だ」というちょっとした自負みたいなものもありました。

自分の生まれた大山という地域では、少子高齢化が進み、参道の旅館も減り、昔ながらのお参りの方も減っています。

この流れがさらに10年間続けば、確実に大山の規模は小さくなり、神社が多くの方とつながることが難しくなってしまいます。そう気づいたときに「大山阿夫利神社とつながる人達を、自分から探して増やさなければならない」と思うようになりました。

昔からのことだけを続けていても、いずれは減少や衰退に向かっていきます。どこかで持ち上げないといけません。大山阿夫利神社ではこの数年で4つほど新しい大山講が生まれました。神主の仕事は、人と神様をつなげることであり、人と人をつなげることでもあります。現代に合った方法で、しっかりと神社とお参りの方との関係を作り続けていくことが重要だと思います。

大山の文化を通じて、若い世代の経験を育てたい

今日はインタビューの前に、子どもたちの神楽舞を撮影されていました。

(目黒さん) 大山阿夫利神社では地域の小学生を集めて、神楽舞の指導をしています。今年は新型コロナウイルスの影響で、子どもたちが舞を披露する場所がありませんでした。今日は、子どもたちのやったことを形に残したい、という思いで神楽舞の撮影をしていたんです。

神社が子どもたちの晴れの舞台の役割を担えればいいですし、そうした活躍できる場所を創出することも神社の役割だとも思っています。神社にはお祭りがあって、多くの方の前に立つ機会がありますよね。能楽堂もあって文字通り舞台を踏むこともできる場所です。

地域の小学生たちに神社で思い出を作ってもらう。自分の人生で何かをやった、という自信をつけてもらう。大人になったときには、歴史や伝統を守ってきたと次の世代に誇ることができる。そうした舞台を神社が率先して作ってあげる。外部とのコラボレーションの話をなるべく断らないようにしているのも、子どもたちの発表できる場を作ってあげたいという思いからなんです。

地域の学生といえば、近くにある産業能率大学の学生とも一緒に活動しています。

「地域のことを伝えて欲しい」という依頼をきっかけに、令和元年から産業能率大学の授業を一コマ受け持つようになりました。今年も依頼があったのですが、コロナウイルスの影響もあり、オンライン講義となりました。普通のオンライン講義ではつまらないと思ったので、1ヶ月かけて大山の紹介をする動画を作りました

学生たちが大山とつながりたくなる、そんな動画を目指して作りました。

堅苦しい紹介は誰でもできると思いますが、そこをかみ砕いて、相手に合わせて話をすることは、今の時代においてとても大事なことです。大山とつながるポイントをこちらから探し、つながりたいと思った方に対してはこちらから引っ張ってあげる、そのような取り組みをできるだけしたいと思っています。

大山とつながった経験を糧に世界に羽ばたいてもらい、今後もなにかの折には再び大山とのつながりを持ってもらいたいですね。

映える大山の魅力を発信!その裏には映画好きの素顔が

大山地区の写真や動画の撮影は、どういったきっかけで始めたのでしょうか。

(目黒さん) 大山の将来に危機感を抱くなか、「今の大山の姿を最低限記録には残さなければ」と思い、カメラを買って撮影をするようになりました。

写真や動画を撮るうちに、記録するだけでなく、活用できるのではないか、と考え始めるようになり、雑誌や鉄道会社に撮影データを提供したり、伊勢原市のYouTubeに提供したりして、だんだんと連携につながっていきました。

実は私、もともと映画が好きなんです

特に、『007』とか、『インディ・ジョーンズ』とか、少し古い世代のアクション映画が好きで。自分の動画撮影の参考にするために映画を見ることもあります。このシーンはどうやって撮っているんだろう、と思いながら、『ウルトラマン』や『ゴジラ』などのメイキング映像を見たり。

あと、テレビ局の取材が来ると、機材の話で盛り上がってしまいますね。今日の神楽舞の撮影でもドローンを使っていました。撮影用のクレーンもいつか欲しいですね(笑)。

映画好きがお仕事に活かされているんですね。

(目黒さん) コーヒーも好きなんです。「石尊」でコーヒーを出すからには、自分でも詳しくなりたいと思っていて、いつかバリスタの資格が取れたらいいなと思いますね。休日には鎌倉など観光地のカフェに行くこともあります。

自分が携わっているものって、さらに深く知りたくてしょうがないんです。

自分の知らないものを知りたい性格なのかもしれないですね。昔ラッセンの絵をよく見ていた時期があるんですが、この海底洞窟の奥に何かあるんだろうか、と考えるのが好きだったんですよね。そういえば、小さい頃に考古学者になりたかった時期もありました。

これまでの仕事を通じて、知識は得るほど自分の武器になる、と実感するようにもなりました。浅くでいいから、とりあえず知識を得て仕事に活かす。講演会などでも、知ることの大切さを学生たちに伝えるようにしています。

大山を知ってもらうため、考え抜き続ける

目黒さんにとって大山阿夫利神社での仕事はどのようなものでしょうか。

(目黒さん) 私の仕事は究極的には「大山阿夫利神社を知ってもらうこと」だと思っています。

「大山を盛り上げたい。そのためにはどうしたらいいだろう」と考えてみると、多くの方に大山への興味を持ってもらう必要がある。さらに深掘りをして「興味を持ってもらうためにはどうしたらいいだろう」と考えると、まずは多くの方に大山を少しでも知ってもらうことが大切だ、という結論に行き着きます。

「大山を知ってくれた方が、もっと大山とつながってもらうにはどうしたらいいか」と考えたことが、これまでの私の仕事に結びついているんです。

神社のことを伝え、神様のご神徳を語ることは、私たち神主にしかできない仕事です。日本に住む人たちへ神道を根付かせていくための活動を、日本中の神主の方々と一緒にしていきたいな、と思っています。

インタビューありがとうございました。最後にお参りの方へ一言お願いします。

(目黒さん) 大山阿夫利神社では、東京スカイツリーを超える標高からの景色であったり、新緑や紅葉などの四季折々の自然を楽しむことができます。もちろん、そうしたお参りの楽しみ方もありますが、今までより一歩踏み込んだお参りはいかがでしょうか。

たとえば、神社は歴史や伝統が色濃く残る場所です。「たった今自分が登った階段を、先人たちも登っていたのだ」と思いを馳せるだけで、今までと全く違うお参りに感じられます。

さらには、大山を「神様がいる山」と実感してもらいたいですね。山への敬意がしっかりと心に根づけば、自然を大事にしようという思いにつながり、皆さんのお参りがいっそう楽しいものになるのでは、と思います。(終)


大山阿夫利神社の情報

【住所】
神奈川県伊勢原市大山355
【アクセス】
伊勢原駅〜(バスで25分)〜大山ケーブル駅〜(参道を徒歩15分)〜大山ケーブル・山麓駅〜(ケーブルカーで6分)〜大山阿夫利神社下社
【電話番号】
0463-95-2006
【FAX】
0463-96-6167
【公式HP】
http://www.afuri.or.jp/
【ホトカミの寺社紹介ページ】
大山阿夫利神社
【由緒】
崇神天皇の時代に創建と伝わる。平成二十八年に「大山詣り」が日本遺産に認定。
【御朱印】
有り
【拝観時間】
平日  9:00~16:30(ケーブルカーの運行時間に準じます。)
土日祝 9:00~17:00(ケーブルカーの運行時間に準じます。)

協力:神道青年全国協議会

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