観音菩薩はどんな仏像?人々の悩みに応じて姿を変える仏様を徹底解説
※記事中に使用したイラストの無断転載を禁止します。
「観音菩薩ってどんな仏様?」
「菩薩と観音菩薩の違いは?」
「それぞれの違いを知って、お寺めぐりをもっと楽しみたい!」
全国8万ヶ寺以上のお寺を紹介する日本最大の神社お寺・御朱印の検索サイト「ホトカミ」編集部の高原です。
お寺に行くと頭に冠を被り、たくさんの顔や腕を持った姿の仏像を目にすることがありますよね。
このような仏像の多くは「観音菩薩(かんのんぼさつ)」と呼ばれる仏像です。
京都にある三十三間堂の千手観音や、奈良の聖林寺にある十一面観音は国宝に指定されるほど有名です。
有名な仏像が多い観音菩薩ですが、千手観音は1000本の手を持っていたり、十一面観音は11の顔を持っていたりと様々な姿をしています。
「なぜ、たくさん種類があるの?」
と疑問を抱く人もいるのではないでしょうか?
今回の記事では、観音菩薩の中にも、たくさんの種類がある理由や、それぞれの見分け方を紹介します。
仏像ごとの違いやその背景も知ることで、お寺への参拝がより楽しく、深い体験になるはず。
ぜひ最後までお読みいただき、実際にお寺を訪れてみてください!
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人々を救うために姿を変える「観音菩薩」の基本を解説
仏像は上から「如来」「菩薩」「明王」「天部」の4つの階層に分かれています。
今回紹介する観音菩薩は、上から2番目の位に属する「菩薩」の中の1つです。
さまざまな姿に変化しながら、私たちの悩みや願いを解決してくれる仏様です。
観音菩薩:頭のうえに小さな仏像
観音菩薩は世の人々の声を聞いて、その苦悩を救う仏様です。
観音菩薩は、様々な姿に変化します。
そのため、見分けることは難しいですが、
【宝冠に小さな仏像】がついていたら観音菩薩であることが多いです。
この小さな仏像は「化仏(けぶつ)」と呼ばれ、如来が人々を救うために別の姿で現れることを表しています。
観音菩薩は阿弥陀如来の化仏をつけていることが多いです。
上図のイラストは、観音菩薩の基本の姿である聖観音(しょうかんのん)です。
観音菩薩は、世の人々の声を聞いて、あらゆる苦悩を救う仏様です。
すべての人々の苦悩や願いの声に対応するため
・千手観音:1,000の手と目を持ち、すべての生き物を救済する仏様
・十一面観音:11面の顔を持ち、憂いや悩みなどを取り除く仏様
など、様々な姿に変化します。
この変化した姿の観音菩薩を変化観音(へんげかんのん)と呼びます。
ここからは、人々の悩みや願いに応じて姿を変える観音菩薩は、どのように信仰されてきたのか、
また、どのように生まれ、広まっていったのかを紹介していきます。
【私たちの悩みを聞いてくれる仏様】観音菩薩の信仰
観音菩薩は、悩みや願いに応じて姿を変化させながら、すべての人々を救う菩薩 として信じられてきました。
また、私たちが一生を終えるまでの現世での利益 を叶えてくれるとされており、代表的なものとしては、「七難」と呼ばれる、火災や水害などの難を退けることができるとされています。
※七難の内容は経典ごとに異なります。
基本的な信仰は以上のような内容ですが、観音菩薩が日本に伝来してから少しずつ観音信仰の形は変わっていきます。
・飛鳥時代
慈悲によって人々を救う仏様として信仰され、死者の冥福を祈ったり、災いを退けるために観音像が作られ始めました。
・奈良時代
現世利益を得ることができる観音信仰の教えが定着し、観音菩薩に関する国家的な行事が宮廷やお寺で行われるようになりました。
・平安時代
世相が荒れて修行と悟りを得ることができなくなると言われた末法思想 などの影響から現世利益的な信仰に加え、来世での救済 を求めて信仰されるようになりました。
ここから、六道での救済を目的として6つの観音がセットで信仰されるようになりました。
この6つの観音をまとめて六観音 と呼びます。
>>六観音について
さらに、平安時代後期ごろから観音霊場が生まれ、多くの人々が巡礼をするようになりました。
>>ホトカミで全国の観音霊場を見る
ここまで、観音信仰の広がりを紹介してきました。
ここからは、広く信仰される観音菩薩がどのように生まれたのかを紹介していきます。
【ニーズに合わせて姿を変える】観音菩薩の起源
観音菩薩はサンスクリット語でAvalokiteśvara(アバローキテーシュバラ)といい、「観世音菩薩」や「観自在菩薩」とも呼ばれます。
中国で最初に伝わった際には、
・avalokita(観)
・svara(音)
を合わせて「世間を観察して音を拾いとる」という意の「観世音」と訳されました。
のちに改めて中国で経典が漢訳された際には、
・avalokita(観)
・īśvara(自在)
とされ、「音を拾いとり、自在に願いを叶える」という意の「観自在」と訳されました。
観音菩薩が誕生した時期は定かではありませんが、1世紀から3世紀ごろにインドで成立した「法華経(ほけきょう)」という経典のなかでみられます。
法華経のなかで、観音菩薩は人々の苦悩や悩みに合わせて姿を変化させて、救済するとされました。
ここから、千手観音など様々な姿に変化した観音菩薩が登場しました。
ここからは、人々の声に応じて変化し、たくさんの形が生まれた観音菩薩の中でも、特に有名な7つの観音 を紹介していきます。
7つの変化観音
六観音:6つの世界を救う観音菩薩のチーム
仏教では、私たちは6つの世界を生まれ変わりながら徳を積んでいき、最終的にはすべてから解放された世界を目指します。
六観音は、その六つの世界それぞれに対応した観音菩薩のことです。
聖観音(しょうかんのん):人間に近い姿+頭上に小さな仏像
聖観音はすべての観音の基本となる仏様です。
聖観音は姿形も観音菩薩の基本形で、人間に近い姿をしています。
基本的な菩薩の特徴に加えて、宝冠に小さな仏(化仏:けぶつ)がついています。
聖観音は、これから紹介する観音菩薩の基本的な姿です。
それぞれの教えに応じて姿が変わる「変化観音」と区別され、「聖観音」と呼ばれています。
また、慈悲の心で人々の悩みや苦しみを救う仏様として親しまれています。
単独で祀られる場合と、阿弥陀如来の隣に配される場合があります。
聖観音が有名なお寺
・薬師寺(奈良県)聖観世音菩薩像
約800年前の白鳳時代と呼ばれる時代に制作された国宝に指定される仏像です。
衣のシワなど細部まで表現されており、仏師のこだわりを感じます。
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十一面観音(じゅういちめんかんのん):頭に11の顔
十一面観音は11の顔で人々の願いを叶える仏様です。
十一面観音はその名の通り頭に11の顔を持っています。
頭部の顔はそれぞれ異なる表情をしています。
・正面の3つは穏やかな顔(菩薩面)
・向かって右側の3つは怒り顔(瞋怒面)
・向かって左側の3つは牙を出した顔(狗牙上出面)
・後ろの1つは大笑いした顔(大笑面)
・頭頂部の1つは如来の顔(仏面)
この11の顔には、全方位を見渡して人々の悩みや病気、悪い心から救い、あらゆる願いを叶えるという意味が込められています。
十一面観音が有名なお寺
・聖林寺(奈良県)十一面観音立像
奈良時代に制作された国宝に指定される仏像です。
アメリカの東洋美術史家のアーネスト・フェノロサも見惚れたと言われています。
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千手観音(せんじゅかんのん):たくさんの手+頭に11の顔
千手観音はすべての悩みや苦悩も救う仏様です。
千手観音はたくさんの手+頭に11の顔です。
千手観音の多くは実際に1000本の腕があるのではなく、
合掌する2本の腕とそれ以外の40本の腕の合計42本の腕を持っています。
千手観音の腕は一般で25の世界を救うとされ、
40(腕の数)×25(各腕が救う世界の数)=1000
になることから、計1000の世界を救うと考えられています。
数は少ないですが、1000本の腕を持つ千手観音も存在します。
また、それぞれの手のひらには目がついています。
手のひらの目は苦しんでいる人を見つけるためについています。
さらに、頭上には十一面観音と同じ11の顔を持っています。
十一面観音をパワーアップしたような仏様ですね。
「千」は無限を表し、人々を救う術を無限に持っている存在として信仰されています。
つまり、どんな問題も解決してくれる、万能な仏様ということです。
千手観音が有名なお寺
・三十三間堂(京都府)千体千手観音立像・千手観音坐像
三十三間堂には千手観音が1000体が祀られています。
お堂の中に整然と並ぶ姿は圧巻です。
お堂中央には、千手観音坐像が配されています。
1000体の千手観音立像とお堂中央の千手観音坐像はすべて国宝に指定されています。
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馬頭観音(ばとうかんのん):頭の上に馬の頭
馬頭観音は人々の一切の煩悩を断つ仏様です。
馬頭観音はその名の通り、頭上に馬の頭を乗せ、怒った顔(憤怒相)をしています。
・頭上の馬
・3つの怒った顔
・8本の腕
の特徴があれば馬頭観音です。
馬頭観音は、馬が雑草を食べ尽くすように、人々のすべての煩悩を断ち切る力を持つとされています。
また、近代では家畜をはじめとする動物の守り神としても広く信仰されるようになりました。
馬頭観音が有名なお寺
・観世音寺(福岡県)木造馬頭観音立像
この仏像は平安時代に作られました。
平安時代以前に制作された馬頭観音は非常に少なく、その中でも高さが5mを超える唯一の仏像です。
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如意輪観音(にょいりんかんのん):膝を立て、右手を頬
如意輪観音はすべての人々の願いを満たす仏様です。
如意輪観音は右膝を立て、右手を頬に添える姿をしています。
・右膝を立てて両足の裏を合わせた輪王座(りんのうざ)
・右側の手を頬に添える思惟(しい・しゆい)の姿
・6本の腕
といった特徴があります。
如意輪観音は左側の手に法輪(ほうりん)、右側の手に如意宝珠(にょいほうじゅ)を持っています。
・如意宝珠(にょいほうじゅ):如意(=あらゆる願いを自在に叶えること)を象徴
・法輪(ほうりん):煩悩を打ち砕き、仏の教えが広まることを象徴
右手を頬にそえ、右膝を立てる姿が弥勒菩薩に似ていることから、中宮寺の仏像のように寺の伝承では如意輪観音とされていながら、一般的には弥勒菩薩とされている仏像もあります。
如意輪観音が有名なお寺
・観心寺(大阪府)如意輪観音坐像
平安時代に制作された、国宝に指定される仏像です。
普段は一般公開されていませんが、毎年4月17日、18日にご開帳されます。
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不空羂索観音(ふくうけんさくかんのん):縄を手に持ち、眉間に第三の目
不空羂索観音はすべての人々を漏らさず救う仏様です。
不空羂索観音は手に持つ縄(羂索:けんさく)と眉間の第三の目が特徴の仏様です。
通常は1つの顔と8本の腕を持っていますが、異なる姿をしている場合もあります。
不空羂索観音を見分ける際には、特に手の縄と眉間の第三の目に注目すると良いでしょう。
不空羂索観音の「不空」とは、「空いているところがない=余すことなく」という意味です。
また、「羂索」には「人々を煩悩の海から救いとる縄」という意味があります。
「不空」と「羂索」の意味から、人々を羂索で余すところなく救う仏様として知られています。
さらに、病気や水害、火災から守ってくれる仏様としても信仰されています。
不空羂索観音が有名なお寺
・東大寺(奈良県)不空羂索観音像
東大寺の法華堂に置かれる不空羂索観音は国宝に指定されています。
頭上の宝冠が美しいことで有名です。
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准胝観音(じゅんでいかんのん):18本の腕と印を結んだ手
准胝観音は、たくさんの仏様を産んだ母のような仏様です。
准胝観音は18本の腕が特徴です。
千手観音と似た姿をしていますが、
・千手観音:胸の前で手を合わせている(合掌)
・准胝観音:胸の前で施無畏印(せむいいん)や説法印(せっぽういん)などの印を結ぶ
といった違いがあります。
准胝観音は、無数の仏を生み出した母のような存在です。
そのため、准胝仏母(じゅんでいぶつも)とも呼ばれています。
菩薩は基本的に性別を超越した存在ですが、この特徴から、女性の姿で表現されることもあります。
准胝観音が有名なお寺
・大報恩寺(京都府)木造准胝観音立像
大報恩寺には国宝に指定された六観音(不空羂索観音を除く)の仏像があります。
准胝観音の仏像は数少ないため、貴重な作例です。
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終わりに
ここまで観音菩薩の見分け方や役割について解説してきました。
人々の声によって姿を変える「観音菩薩」
それぞれ特徴的な姿にはたくさんの意味が込められています。
仏像に込められた教えや物語を知ることで何気なく手を合わせていた仏像から、新たな学びや感動を得られるはずです。
ぜひ、この機会に仏像を見にお寺に参拝してみてはいかがでしょうか。
お寺に参拝した際には、ホトカミにも投稿してくださいね!
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