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元郷氷川神社の日常(8回目)埼玉県川口元郷駅

鳥居が語るもの(その4 最終話)

投稿日:2020年06月16日(火)
昨日までは鳥居の裏面の刻文を見てきましたが、
本日は表面と鳥居建立の背景に迫ります。

先ずは表面、参道入口から見て左側には、『國土安全』、
右側は『天下泰平』と刻まれています。
文字の内容としては極ありふれたものに思えますよね。
ですが、そこには当時の方々の切なる想いが込められていたのです。

一昨日、裏面の右側を「安政二年に起こった地震が収まった」と
解説させて頂きましたが、この年の10月2日(新暦では11月11日)に
「安政江戸地震」という非常に大きな地震が発生し、その規模は
マグニチュード7クラスとも云われ、発生から4日後の幕府の公式
調査で町方において4,394人、更に数日後の調査では4,741人、
倒壊家屋は14,346戸、これに寺社領や武家屋敷を含めると死者は
1万人くらいであったと推定されています。

このことを踏まえて改めて裏面の刻文「維是安政二歳在龍輯」、
「旃蒙卯晩穐吉祥日鐫」を読んでみますと、「安政二年に起きた地震も
収まったので、乙卯の晩秋の縁起の良い日にこれを刻む」となり、
これ(維)とはつまり「國土安全」、「天下泰平」を指すのではないでしょうか。

当社の鎮座します川口市元郷は、江戸からもほど近く、やはり甚大な被害を
蒙り、きっと元々有った鳥居も倒壊してしまったのでしょう。本震や余震も
収まり、少しずつ落ち着きを取り戻し復興を進めてゆく中にあって、当時の
方々は「今後このような国土におこらないように、そして皆が平和にくらせる
ように」と切実なる願いを込めて新しい鳥居を建立したのでしょう。

160年という歳月を経た現代の私達も、先人たちの想いを継承し時代に繋げて
ゆかなければなりません。私達は今、新型コロナウイルスという国を超えた
難題に直面しています。地震と疫病とでは性質を異にしますが、難局を乗り切る
ために心を一つにすることは変わりません。

そして神社はいつの時代も“祈りの場”であるということも変わらない大切な
ことです。
元郷氷川神社の鳥居
左は「國土安全」、右には「天下泰平」と刻まれています。

すてき

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