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普元寺の日常(31回目)愛知県西尾駅

普元寺前住職の命日の法話「おじいちゃん、また会おうね。」

投稿日:2020年04月28日(火)
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今日は普元寺前住職の命日です。映画好きな前住職でした。以下は当時(5年前)中学生だった孫娘のさあやが綴った作文で、ある冊子に掲載されたものです。仏さまの教えにもふれています。命日の法話にかえて紹介させて頂きます。

「おじいちゃんの血圧が下がってきた。急いで病院へ来て!」
病院にいる姉から電話がかかってきました。私は飛びおきて父の車で病院に向かいました。長い長い20分でした。そして病院の廊下をドキドキしながら早足でかけぬけると病室へ飛び込みました。昨年の4月28日の深夜のことです。祖父は一昨年の9月7日に体調を壊して病院に入院して以来八ヶ月目を迎えていました。廊下を走りながら祖父と過ごした思い出が次々とよみがえってきました。

 祖父は八年前に父と住職を交代するまでは、お年寄りと思えないくらい元気にお参りに出かけていました。父と代替わりをすると、すべて父にまかせて毎日囲碁をしたり大好きな映画のDVDを鑑賞したりして自由気ままな時間を過ごしていました。私とも一緒に畑で果物をとったり、喫茶店に行ったり、若い頃の話もたくさん聞かせてくれました。中でも特に心に残っている二つの話があります。

 一つは、戦争中の話です。祖父は旧制中学校の生徒だったのですが、学徒動員で工場で働くのが授業の替わりだったそうです。そんなある日、市内の映画館で祖父の見たい映画が上映されると分かり、映画好きの祖父は工場長に、一日分の仕事を午前中に片付けるから午後休みにしてほしいとたのみこんだそうです。午前中、がんばったかいあって何とか許可が出て、午後は同じグループの仲間と映画を見に行ったのです。その日の午後、その工場に空襲がありました。工場は全壊し、残って仕事をしていた同級生が亡くなりました。祖父は悲しそうな顔をして「自分たちだけが助かったことが申し訳ない気がするよ・・・。でも、さあやと会えたね」と言うとしわの深い手を胸の前で合わせました。私はその時、自分が今ここにいることに、当たり前じゃない重みを感じました。そして心の中で「おじいちゃん、生きていてくれてありがとう」とつぶやきました。

 もう一つの心に残る話は、祖父の父、曽祖父(ひいジイちゃん)のことです。明治生まれの曽祖父が初めてレントゲンを撮ることになった時のことです。レントゲンってどんなものかと聞く曽祖父に祖父が「からだの中が映って悪い病気があるかどうかわかるカメラのようなものだ」と説明すると「ほー。からだの中だけでよかったのお。こころの中まで映らんで。なまんだぶ」とつぶやいたそうです。
「さあや、人間はね、みんな他人には見せられないような愚かな心を隠し持っているんだよ。どんな偉い人でもね。レントゲンには映らないけど仏さまには全部お見通しだ。だから将来どんなに偉くなってもいばったらだめだよ」と祖父は言いました。私は祖父の言った言葉の意味がはっきりとはわからなかったけれど、なにかとても大切なことを教えてくれているような気がして、これからもずっと大事にしていきたいと思いました。

 一昨年の夏休み、私は箱根で開かれた卓球の大会に出場しました。祖父は試合が見たいといってわざわざ足の悪い祖母を車椅子に乗せて箱根まで泊りがけで見に来てくれたのです。 「おじいちゃんは85歳を過ぎたから、もういつ死んでもおかしくない。さあやと一緒に旅館に泊まれるのはこれが最後になるかもしれないなあ」と言いました。その時は祖父との別れがこんなに早く来るとは思ってもいませんでした。もっともっと祖父のそばにいればよかった。祖父に優しい言葉をかけてあげればよかった。そう思うと涙があふれてきます。

 入院してからの祖父は、食欲がなくなってだんだんと弱っていきました。体はやせ、歩くことも、立ち上がることもできなくなりました。それでも、お見舞いに行くといつも明るくて、「さあや、よくきてくれたねえ。ありがとう。会いたかったなあ」と優しい笑顔で迎えてくれました。祖父が亡くなる三日前のことです。父がお見舞いに行くと、息が苦しくなってきた祖父が「そろそろ往くから、お葬式の準備をしなさい・・・」と言いました。父は幼い日から今までの感謝の気持ちを伝えると、祖父は「あんまりいいお父さんじゃなかったのに、有難う。お浄土でまた会おう」と言いました。


そして3日後、ついにその時が来たのでした。 .
「おじいちゃん、さあやが行くまで生きていて。どうかどうかお願いだから待っていて」。私は祈りながら廊下を走り、病室に飛び込みました。すると先にいたお母さんとおねえちゃんが泣いていました。私は我慢していた思いが涙と一緒にあふれでて、祖父の耳元で「おじいちゃん、さあやだよ。さあやだよ。おじいちゃん大好きだよ。おじいちゃん、ありがとう。いっぱい、いっぱいありがとう」と何度もお礼を言いました。

祖父と過ごした大切な日々の思い出は、今も私の心を明るく照らし続けてくれています。いつか、お浄土で祖父に会った時、恥ずかしくないように、明るくたくましく生きていきたいです。祖父に教えてもらった仏さまの教えを大切にして。「おじいちゃん、また会おうね。ありがとう。」
普元寺の建物その他

すてき

みんなのコメント1件)

素敵なお話を、ありがとうございます🙏
私は、去年から父との家族との想い出の地を、
訪れています😊
あまり、いい想い出は無いのですが😔
やっぱり、色々と思い出しますし、
昔とは違う発見が、有って楽しいです😌

2020年04月29日(水)
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