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「お寺は文化活動の発信地」毎朝の坐禅で人々が集う【香林院 金嶽住職】

最終更新:2018年04月23日(月)
公開:2018年04月22日(日)

あなたはお寺で坐禅をしたことがありますか?

こんにちは。ホトカミ運営の村上です。
私は毎日、自宅で坐禅をしています。
坐禅をすると、なんだかすっきりして晴れやかな気分になるんです。

毎日の坐禅がきっかけで、ホトカミでは、坐禅に関する記事を書きました。

座禅については、ぜひコチラの記事をお読みください。
座禅のやり方は?効果ってあるの?東京都内や京都・鎌倉で座禅を体験できるお寺も紹介!

そこで坐禅会を行っているお寺の住職さんにお話を聞きたい!と思い、

今回縁あって、渋谷区広尾にある香林院(こうりんいん)の金嶽(かねたけ)住職にお話を聞きました。
香林院は、平日は朝7:00から、日曜日は夕方の17:00から坐禅会を開いています。
実は、毎日のように坐禅会を行っているお寺って珍しいんです。


金嶽住職自身も、坐禅によって救われたという想いがあり、
「坐禅をやってみたい!」という参拝者の声がきっかけで坐禅会は始まったそうです。

以前、私も香林院での坐禅会に参加しました。
坐禅会のあとのお茶会で、檀家(だんか)さんや信徒(しんと)さんに支えられているお寺なのだなぁと実感しました。

そんな参拝者を大切にする金嶽住職の想いを紹介します。
是非最後までチェックしてみてくださいね。

インタビューするのは、ホトカミ代表の吉田です。

このインタビューの聞き手
ホトカミ運営代表 / 出雲観光大使

吉田 亮


1990年岐阜生まれ。東京大学文学部卒。
在学中から「日本の文化や歴史を現代に生かし、未来に繋げたい」と神社ツアーや塾の運営など行う。
この記事の書き手
ホトカミライター

村上 太郎


神社お寺を知ってもらうため、100年後も読まれる記事を目指しています。毎朝の坐禅が日課。

    目次

  1. 一休さんに憧れてお坊さんに
  2. 毎朝の坐禅は香林院で 深まる常連さんの仲
  3. 落語もお坊さんから! 日本文化と禅の深い関係
  4. インタビューを終えて


一休さんに憧れてお坊さんに


ー金嶽住職は、お寺ではなく、一般のご家庭出身だと聞きました。どうして12歳という若さでお坊さんになろうと決意されたのでしょうか。


きっかけというのはいくつかありますが、
一番大きな理由は、一休さんに憧れたことですね。

早い話、小学生のころは勉強が嫌いでした。

僕の父親は、中学校の校長をやっていました。
あるとき、父の勤める学校の教員が、よその学校に異動になったことがありました。
驚いたことにその教員が、うちの父親に飛ばされて異動になったと勘違いし、家に乗り込んできたんですね。

たまたま父親が家にいなかったので、母親が対応に出ました。
すると、その教員が興奮し、なんとうちの母親の首をしめたのです。

小学生ながら、その教員の姿を見て、
「教育者である学校の先生ががこんなことをするのか。教育で人は救えない
と思うようになりました。

偶然その頃に一休さんの本を読んでいて、
悟り(さとり)というのは勉強ではない」と書いてあるところを見つけたのです。

当時は「これだ!」と思いましたね。

10歳のときにお寺に入りたいと頼みましたが、小学生ではダメだということで、
中学校に上がると同時に、正式にお寺に入りました

京都にある大徳寺(だいとくじ)という、一休さんがいたお寺です。

お寺に住みながら学校に通う、昔ながらの小僧さんという形を取っていました。

悟りとは勉強ではない、ということで、
中学を卒業した義務教育のあとは、お寺のことだけに専念すればいいのかと思っていました。

ところが、お師匠さんが「今のお坊さんは最低でもみんな大学まで行っている」というわけです。

そのときはもう学校に通う必要はないと思っていたので、
「話が違うじゃないか」と思いました(笑)


ー「勉強が嫌い」でお坊さんになったというのに(笑)。
10歳という若さでお坊さんになることを決意してから、お坊さんであることに葛藤した時期はありませんでしたか?。

高校生くらいの多感なときになると、
やっぱり違うかな、と思ってお寺から飛び出そうと思ったこともありました。

そんな頃、お寺で掃除をしているときに偶然、観光客の方に声をかけられたのです。

観光客の方とお話をしているなかで、
「僕はお寺の家の生まれではないけれども、お坊さんになりました」
という話題になりました。

すると、
「あなたは山本玄峰(やまもとげんぽう)さんという人を知っていますか」
と問いかけられたんですね。

僕は当時山本玄峰和尚が誰だかを知りませんでしたが、その方に、
あなたには、玄峰さんのようなお坊さんになってほしい
と言われました。

その後、すぐに山本玄峰和尚について調べました。

山本玄峰というお坊さんは、江戸時代の終わりの1866年生まれ。
捨て子でしたが、村の人に拾われて幼少期を過ごします。

10代の前半になると林業に従事して、17歳のときに結婚しました。
しかし、やっと自立したという矢先に、突然目が見えなくなります

視力を失った玄峰さんは、絶望の末に、四国の八十八ケ所巡りを始めます。
7巡目のお遍路のときに、33番札所、高知の雪蹊寺(せっけいじ)の前で行き倒れになるんですね。

お寺の住職が介抱したところ、玄峰さんは元気を取り戻してこう言います。

自分はろくに学校にも行っていないし、字もろくにかけない。目も見えない。こんな人間でもお坊さんだったらなれるでしょうか。

住職は答えます。

あなたは普通のお坊さんにはなれない。普通のお坊さんにはなれないが、本当のお坊さんにだったらなれる

玄峰はその言葉に心を打たれて、出家を決意します。
そして、玄峰さんは厳しい修行に励み、昭和の名僧となり、臨済宗(りんざいしゅう)のトップ(妙心寺管長 / みょうしんじかんちょう)になりました。

実は、戦争中に「負けを認めて民主化せよ」と提言(ていげん)をしたり、
玉音放送にある「堪え難きを堪え、忍び難きを忍び」の言葉を勧めたのは、
この山本玄峰和尚でした。

僕は、自分の宗派のトップにこんな人がいたということを知り、おどろきました

しかも、この方は昭和36年(1961年)まで生きてらっしゃいました。
僕が生まれた頃にまだ生きていたのです。
何百年も前の話ではなく、身近な話だったことが、大きく僕の心を動かしました。

それで、お寺から飛び出すことを踏みとどまった、ということがありました。

毎朝の坐禅は香林院で 深まる常連さんの仲

ー香林院では平日は毎朝坐禅会を開いていますね。他のお寺は月に数回というなかで、坐禅会に熱心なお寺だな、という印象があります。

坐禅会は、僕が香林院の住職になってから始めました。今年で17年目くらいです。
「坐禅とかやってないんですか」と聞かれたことがきっかけで始めました。

はじめは時間も決めずに、1対1でやっていたのですが、
次第に毎日やりたいという人が出てきて、
時間を決めて平日は毎朝7:00からやるようになりました。
日曜日にも夕方17:00から坐禅会をしています。

月2だと1回休んだら、1ヶ月も間が開いてしまいます。
そうすると、モチベーションが下がります。
毎日やっていると、坐禅会に参加しやすくなりますよね。

僕は自分のような者でも坐禅によって救われたという想いがあるので、
「坐禅というものを人にも知ってもらおう」と坐禅会を開催しています。


ー坐禅会の後、常連メンバーで和やかにお茶を飲んでいますよね。坐禅会の参加者には、どんな方が多いのですか?

坐禅会には、恵比寿だとか、近くで働いている方がよく来ます。

あと、香林院の坐禅会に来る人の特徴としては、若い人や外国人が多いです。
坐禅会参加者の、3分の1が外国人ということもあります。

特別に外国人に来てほしいというわけじゃないのだけれども、
香林院は『来るものは拒まず』なので、
どうぞいらっしゃい、と思っています。

はじめて来る外国人の方に応対するために、
常連の外国人の方に、英語の説明書を作ってもらいました。

また去年、坐禅会の常連で合宿をやったんですよ。

海岸で朝日を見ながら坐禅しようという企画です。
坐禅会のあとお茶を飲んで話していたところ、合宿をやりたいという声が出て、じゃあやろうか、となりました。

合宿がきっかけで、坐禅参加者のつながりが芽生えてきた気がします。

落語もお坊さんから! 日本文化と禅の深い関係

ー香林院には「お寺は文化活動の発信地」というコンセプトがあるそうですね。どういった理由からなのでしょうか。

一休さんのお弟子さんに金春禅竹(こんぱるぜんちく)という人がいます。
その、金春禅竹の孫弟子が観世流(かんぜりゅう)というの流派を始めました。

また、一休さんのお弟子さんには村田珠光(むらたじゅこう)という人もいて、
村田珠光の孫弟子が茶道で有名な千利休です。

だから、日本の文化って一休さんから発信されているんです。

それに、落語はもともとお坊さんが始めたって知っていますか?
話を聞いてもらうために、仏教の話を面白く語っていたのが、落語に発展しました。

食べ物でも、梅干し・たくあん・味噌・醤油
禅宗が日本へ伝えたものですよね。
瓦の屋根も、禅宗からなんです。

かつて禅宗が日本へ伝えたものが当たり前に日常に溶け込んでいるから、
仏教をもとに広まったとは、誰も気づかないんですね。

ーもっと禅宗や仏教の良さが伝わってほしいと思うこともありますか?

たとえば、最近マインドフルネスがもてはやされていますね。
マインドフルネスのもとをたどれば、実は禅宗です。
坐禅から宗教性を取り除いたものをマインドフルネスと言います。

アメリカから逆輸入されたマインドフルネスは、日本でも流行していますよね。
でも、どうして日本人が学ぶのに、宗教精神を取り除かなくてはいけないのでしょうか。
禅の文化は、日本人がもともと持っているのだから、抜く必要がありません。


確かに、マインドフルネスには優れた部分もあります。
でも、それが全てではありません。

日本には日本のよさがあるということを伝えたいです。

ーたしかに、日本人が気づいていない、日本らしさってありますよね。もう少し詳しく禅とは何かを教えてもらえませんか?

禅宗は現実主義なんですね。

お金持ちになれないかもしれないけれども、
病気は治らなかもしれないけれども、
そのなかでこころ穏やかに生きる道はあるのですよ、と教えるのが禅宗です。

坐禅と瞑想(めいそう)も違うものです。
瞑想では目をつむって、自分の心地よい世界をイメージします。
そのことによって癒される状態をいうわけです
いっときの現実逃避だったらそれでいいかもしれません。

でも禅宗は、普段生きている人間に役に立つからこそ、意味があると考えているわけです。

だから、目を開けて坐禅を組みます。
目を開けていれば、嫌なものも視界に入ってくる。

その状態で心穏やかな状態を作れるようになって、
はじめて本当に力になり、役に立つのではないでしょうか。

そんな想いで坐禅会を開催しています。

インタビューを終えて


お寺に生まれたというわけではないのに、お坊さんをこころざし、厳しい修行をしてきた金嶽住職。

だからこそ、坐禅会に参加する人たちは、金嶽住職を自然と慕(した)っているのでしょう。

これから香林院で初めて坐禅される方は、坐禅の後に少し時間をとって、ぜひ住職とお話してみてください。
インタビューには載せきれていない、たくさんのことを聞くことができますよ。

私も、また香林院へ坐禅を組みに行こうと思います。



香林院の情報
住所:東京都渋谷区広尾5-1-21
アクセス:地下鉄日比谷線広尾駅徒歩3分
車の場合は明治通り豊沢交番前より進入
宗派: 臨済宗大徳寺派
ホームページ:http://kourin-in.com/index.html
香林院 | ホトカミ

一休さんゆかりのお寺!大徳寺の情報はコチラ

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