中陰について

　お釈迦様の時代のインドでは、命は六つの世界で生まれ変わりを繰り返しているとされていた。これを六道輪廻という。ある世界で亡くなると、一定の期間を経て次の世界に生まれ変わる。その期間が中陰である。

　中陰の長さは諸説あるが、一般には四十九日とされる。七日ごとに死者の追善供養を行い、七回目となる四十九日をもって中陰を終えて六つの世界のいずれかに生まれ変わる。これが当時のインドの死生観と考えられる。

　中国の道教では、人間は死後に十人の王から裁判を受けて、その行く先が決まるとされている。中国に仏教が伝わった際、中陰の間に十王から七回の裁判を受けるということになり、この間の遺族の供養によって裁判の結果が良くなるとされた。こうして中陰の供養が重要視されるようになった。

　遺族による中陰のお勤めが死者の行く末に影響するというのは、仏教本来の教えではないかもしれない。しかし、親しい人が亡くなった時、少しでも良い所へ行って欲しいと思うのが私達の心情である。その為のお勤めによって心が安らぐのなら、それも必要なことである。