今月のことば　2020年8月

自ら信じ　人をして信じせしむるは
難(かた)き中にも転(うたた)更に難し

『往生礼讃』


【意味】
　仏教を自らから信じ、人にも信じさせるのは、難しいことの中でもより一層難しいことである。

【注釈】
・往生礼讃＝中国の善導大師(六一三-六八一)の著書。浄土往生への願いと阿弥陀仏への称賛を詠んだ詩文。

【解説】
　現代日本において、ある事柄について詳しく知るということ自体は難しくない。今は大抵のことについての資料は手に入るから、それを読めばいい。仏教についても同様だ。浄土や阿弥陀様や念仏のありがたさについて解説した本を読めば理屈は理解できるだろう。
しかし、知識として知ることが仏教を信じる心に繋がるとは限らない。言葉では語り尽くせない、理屈を超えたところにこそ信仰がある。だから自分が信じることも、他の人が信仰心を持てるようにすることも難しい。それでも実行することが私達を救おうとする仏様の恩に報いることになると善導大師は述べている。
その為の最適の手段が、ひたすらに念仏を唱えることであるというのが浄土宗の教えである。　まずは手を合わせて南無阿弥陀仏と唱える。そこから信仰が生まれ、念仏を唱える自分自身の姿こそが何よりも人の心に訴えかける布教となる。それが浄土宗の目指す「自ら信じ、人をして信じせしむる」ことの実践である。