今月のことば　2021年9月

備わるを一人に求むること無かれ
『論語』


【意味】
　一人の人間にあらゆる能力が備わっていることを求めてはいけない


【解説】
人に頼らず、自分だけの力で何かを成し遂げる。そうせざるを得ない時もあるだろうから、その心意気が悪いとは限らない。しかし、一人の人間にできることは限られている。どうにもならなければ、人の手を借りればいい。それは決して甘えや妥協ではない。自分ができることとできないことを見極め、人を信じて任せる。そのためには今あるしがらみやこだわりから離れ、自分や他人のことを良く知らなければならない。

仏教徒が大切にすべき「三宝」がある。それが仏と法と僧である。仏は私達の師となる仏様、法は仏様の説く教え、僧は共に修行をする仲間達である。

古代のインドにおいて、修行は出家して社会を離れて行うものだった。そうすることで様々なしがらみから解き放たれ、今までとは違った視点で自分や他人を見られるようになる。その上で信じ合って共に修行する仲間達こそ、本当に互いを支え合える宝のような存在である。

完璧な人間はいない。だから私達は助け合って生きている。誰かがあなたを助けてくれるように、あなたも誰かを助けることができる。そのことに気付いた時、人と自分の本当の繋がりが見えてくる。