今月のことば　2020年10月

心暗きときは即ち遇ふ所悉く禍(わざわい)なり
眼(まなこ)明らかなれば則ち途(みち)に触れて皆宝なり
-空海上人-


【意味】

心が暗い時は、遭遇する出来事が全て災いとなる。心の目が明るく開いていれば、触れるもの全てが宝となる。


【解説】

　占いが人間の心に及ぼす影響を調べた実験がある。被験者を二組に分け、Ａグループには一週間の運勢がいいと占い、Ｂグループには運勢が悪いと占う。一週間後に近況を尋ねると、Ａグループはいい出来事ばかりを報告し、Ｂグループは悪い出来事ばかりを報告したという。

　日々起きる出来事には、自分にとっていい事もあれば悪い事もある。心が明るい方に向いていればいい事ばかりだと思い、暗い方に向いていれば悪い事ばかりと思う。そんな人間の心理がこの実験結果に表れていると言える。

　明るい気持ちを持って前向きに生きていきたいが、些細なことで気持ちが暗い方に向いてしまう。それが人間の弱さである。そんな時に無理をして明るく振る舞う必要はない。無理をすればかえって心は苦しくなる。

　自分の弱さを認めて受け入れ、ありのままの心で生きていけば、自然と心は明るい方へと向く。それが仏教の目指す理想の生き方であり、そうなれるように私達を導くのが仏様の教えである。仏様の導きに身を委ねて生きれば、遭遇する出来事全てが宝となる。それが悟りを開くということである。