熱田神宮のお参りの記録(1回目)
愛知県神宮前駅

熱田神宮は、愛知県名古屋市熱田区神宮に鎮座する、東海地方を代表する古社である。名鉄名古屋本線・神宮前駅より拝殿までは徒歩約10分。早朝の境内はまだ人影もまばらで、都市の喧騒から切り離された静けさに包まれていた。深夜バスに揺られて名古屋入りし、夜明けとともに鳥居をくぐると、澄み切った空気の中に神域特有の緊張感が漂う。身を正して一礼し、参道の玉砂利を踏みしめながら進むと、朝の光が木漏れ日となって差し込み、拝殿の屋根が神々しく輝いて見えた。

主祭神は三種の神器の一つ・草薙剣（くさなぎのつるぎ）をお祀りする熱田大神（あつたのおおかみ）。その御神威は古くから篤く信仰され、武門や庶民を問わず多くの崇敬を集めてきた。創建の年代については諸説あるが、平成25年（2013年）に創祀千九百年大祭が盛大に斎行されたことから、景行天皇43年（西暦113年）に遡ると伝えられている。つまり、1900年以上もの長きにわたり、この地で人々の祈りを受け続けてきたということになる。社殿の背後には神々の鎮まる杜が広がり、古来より「熱田の森」と称されてきた。

愛知県内でも屈指の初詣客数を誇る熱田神宮は、正月三が日ともなれば多くの参拝客で境内が埋め尽くされる。しかし、時間帯を選べばその喧騒とはまったく異なる、厳かで静謐な表情を見せる。早朝の参拝では、境内を掃き清める神職の姿や、控えめに響く鈴の音が印象的で、まるで時がゆっくりと流れているかのようであった。名古屋という大都市の中心にありながら、古代の息吹を今に伝えるこの神域は、訪れるたびに新たな清々しさを与えてくれる。