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精進場稲荷神社は、東京都練馬区大泉町に鎮座します。最寄り駅は西武池袋線の石神井公園駅で、徒歩にしておよそ十二分。住宅地の中を抜け、関越自動車道の高架が見えてくるあたりで、そのすぐ脇に鎮まる社の姿が現れます。関越はこれまで何度か車で通過したことがありましたが、こうして実際にその脇を歩いて参拝するのは今回が初めてのこと。車窓から眺めていた風景の奥に、静かに息づく社があるとは、まるで新しい層を発見したような不思議な感慨がありました。境内に由緒書が見当たらず、創建や御祭神は信頼にたりうると思われる情報源が見つかり次第、追記いたします。
境内に足を踏み入れると、まず目に入るのは稲荷神社らしい朱の世界。風にたなびく幟は朱地に白文字で、境内を鮮やかに染めています。社号碑は「平成建立」と刻まれ、時代の比較的新しさを感じさせます。一の鳥居も同じく平成期の建立で、石肌の白さと角の立った形が、まだ年月を浅くする印象を与えます。それに続く二の鳥居は昭和期のもの。わずかに年季が入り、表面に苔をむしてはいないものの雨風に耐えきた様子がうかがわれます。しかし構造は極めて頑強。コンクリート造りの重量感と安定感があり、まさに“守護”という言葉がふさわしい風格を漂わせています。
鳥居をくぐり、石畳を踏みしめて進むと、お狐さまが左右に構え、参拝者を見守るように鎮座。その奥に拝殿が見えてきます。銅板葺の屋根に、緩やかな反りを持つ流造の社殿。過度な装飾はなく、静謐で落ち着いた佇まいながらも、信仰の厚みを感じさせる正統派の神社建築です。夕刻が近づき、光がやや薄れはじめた頃合い、拝殿前で一礼して手を合わせました。遠く関越を行き交う車の音が微かに響き、その下で人々の祈りを受け続けてきた時の流れを思うと、胸に染み入るものがあります。
拝殿の左奥には、小ぶりながらも厳かな境内社が鎮座していました。周囲が薄暗くなっていたため、文字を読み取ることは叶いませんでしたが、祠が玄武岩を積み上げた台座の上に置かれている点が印象的でした。玄武岩は火山由来の堅牢な石。その素材から察するに、山岳信仰あるいは大地や火の神々とゆかりのある神霊を祀っているのではないかと推測されます。神無月の夕べ、風にわずかに木の葉が揺れる音がして、そこに何か見えざるものの気配を感じた気がしました。
その祠の右手には、大東亜戦争戦没者慰霊の碑が静かに建っています。刻まれた名前の数々を見つめると、時の流れを越えてなお語りかけてくるような重みがあります。練馬区内のいくつかの神社を参拝した折にも、同様の慰霊碑を目にする機会がありました。この地の氏子たちは、戦没者の記憶をいまなお受け継ぎ、祭祀の場の中にその追悼の心を息づかせているのでしょう。
参拝を終え、一の鳥居の前に戻ると、幟の奉納者として記された氏子の苗字と、慰霊碑に刻まれた戦没者の苗字がいくつか一致していることに気づきました。かつて命を捧げた方々の縁が、こうして地域の信仰の中に生き続けている。世代を越えて紡がれる祈りの連鎖を思いながら、深く一礼して辞去いたしました。忘れてはならぬ人々の存在が、この社には確かに息づいています。










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