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耕田院の日常(419回目)山形県羽前大山駅

「みずからの体験によって得る智」

投稿日:2024年03月29日(金)
輪橋山徒然話 2023/3/20 「みずからの体験によって得る智」

◆島崎藤村「書籍(ほん)」という奇妙な童話がある。

「書籍(ほん)」より

何もない草が路ばたの石のわきに咲いてしいました。

そこへ一人の学校の生徒が通りかかる。
するとその草が呼び止めた。
「生徒さん、何をそんなに急いでいるのですか。」

生徒はびっくりしてこう答える。
「私はいろいろな本を読んで
いろいろな人の生涯を旅したいと思っているのです。
そこでこうして急いでいるのです。」

「それなら」野の花は語る。
「この石に腰掛けて見てください。
読もうと思えば 本はこの石の上にありますよ。
私は何もない草ですが、
あなたのような人に読んでもらいたいと思って、
こうして小さな本を広げているのです。」

◆この童話は、身近にあるものをよく見、耳を傾けることへの努力も欠かしてはならないとのメッセージともとれる。頭でっかちの学生を戒めているのだ。それはいつの時代も同じだ。
現代社会は、情報で溢れている。その情報で、安易に全てを理解したと思いがちだ。実物を見ることや自ら体験せずに、だ。

◆忘れてはならないのは実物へのアプローチだ。よく見、よく聞くことで、どんなささやかなものからも、自分なりの深い感動 深い言葉を見つけることができるのだ。あるいは、はっきり見えずに、気が付かなかったこと、見落としていたこと、眠っている何かを見出すことができるのだとの詩人からのメッセージだ。

◆そのように考えれば、私たちの人生のどんなささいなできごとも、喜びも、成功も、失敗も、苦しみも一つとして無駄なものはないということになる。些細な日常の中にさえ、よりよく人生を生きるための深い感動、深い言葉が隠されているかもしれないのだ。

◆島崎藤村は「人の世に三智がある。学んで得る智、人と交わって得る智、みずからの体験によって得る智がそれである」とも言う。

◆「みずからの体験によって得る智」これが一番大事な「智」だろう。暗記競争は終わった。なぜなら、みんなが知っていることはAIが教えてくれるからだ。転換期の今考えるべきは、「みずからの体験による智」をどのように価値づけ、構築していくか、だと思うがどうであろうか。

◆「深呼吸と一筆付箋写経」心を清々しく保つための術として。今日も一日オンニコニコで。

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耕田院(山形県)

すてき

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