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耕田院の日常(400回目)山形県羽前大山駅

「琴瑟相和(きんしつあいわ)す仲」

投稿日:2024年03月06日(水)
輪橋山徒然話 2014-3-5  「琴瑟相和(きんしつあいわ)す仲」

◆このあたりでも、月遅れのひな祭りが始まった。

◆「琴瑟相和(きんしつあいわ)す仲」とは、お雛様のように夫婦の仲がむつまじいことの例えだ。瑟(しつ)は大琴のこと。琴が7弦に対して瑟(しつ)は25弦。この二つの楽器がよく調和している音色を夫婦の仲に例えている。

◆よく調和している夫婦とは、「息が合う」ということだ。「息が合う」とは気持ちや動作がうまく噛み合うこと。そして、その究極は「以心伝心」だ。ことばがなくても心が通じ合うという。

◆今朝は、言葉にしなくても心が通じ合っている「以心伝心」の夫婦のお話だ。

◆昔、中国の王さまが石匠に命じて、300メートルもの石の卒塔婆を作らせた。
日本で言えば、五重塔だ。

◆ある日、石匠は、長年かかって完成させた巨大な塔の上に立ち、喜びと感慨に浸っていた。

◆「ところが」である。

王さまは、この素晴らしい塔を他国が真似して作ることを恐れた。
そこで、なんと足場を一気に取り外してしまったのだ。

◆可哀想に、石匠はたった1人塔のてっぺんに取り残されてしまう。

◆石匠は王さまに対する怒りでいっぱいだった。

◆それとともに、地上に残した家族のことも心配だった。
妻も子どもたちも私のことを探し回るだろう。
しかし、声は届きそうにもない。
それでは、どうして妻に知らせたらいいのか…。

◆石匠は考えた。

◆そのころ妻も、石匠は何も知らせないで、消える人ではない。
「きっと何か知らせてくる」に違いないと信じて疑わなかった。
妻は、妻で石匠の痕跡を探し回った。

◆とうとう石匠は、服を解いて糸にして、それを下ろすことを思いついたのだ。
そして、ゆっくりゆっくり地上に向けて糸を落としていく。
その糸が妻に届くことを祈って糸をのばしていく。

◆願いが通じ、地上で妻は、ついに1本の細い糸を発見する。
これこそが夫だと確信した妻は、細い糸に糸をつなぎ、少しずつ太い糸に変えていく。
そうしないと途中で糸が切れてしまうからだ。

◆二人の糸を通してのやりとりは、丁寧にていねいに、優しくやさしくなされた。
そして、ある日、とうとう、宙を漂っていた糸が、見事な太い綱にかわった。
ようやく石匠はその綱を使い地上に降り立つことができた。

◆これこそ「以心伝心」。石匠の知恵に、妻は知恵で見事に応えたのだ。
それから夫婦は生涯「琴瑟相和す仲」で暮らしたという。

◆さて、宙に舞う細い糸。この細い糸は、「縁」である。この世での夫婦二人の「縁」を、二人で切れないように、やさしく、丁寧に、互いを思う「信頼」と「智慧」とで太い綱に育てたのだ。

◆大切な人との「縁」を紡ぐには、「縁」はそもそも宙に舞う細い糸だということを心得ておかねばならない。この「縁」は、ちょっとのことでキレたり、見失うほどの糸なのだ。だからこそ、手にした糸は、互いを思う「信頼」と「智慧」で大切に「より太い糸」に育てていかねばならないのだ。

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耕田院(山形県)

すてき

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