耕田院の日常(399回目)|山形県羽前大山駅
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投稿日:2024年03月05日(火)
2024/3/5 輪橋山徒然話 「あれ、あれ、あの人。だれだっけ」
◆脳科学者の黒川伊保子先生は、物忘れを意識した40代の頃だそうだ。そして、師事していた言語学の先生に「物忘れ」の不安を打ち明けたそうだ。
◆齢(よわい)80にならんとするその先生は、こうおっしゃったという。
「あなたが忘れるのは、まだ固有名詞だろう? 固有名詞なんて、たいしたことはない」
◆固有名詞とは、「山田太郎」「東京」「富士山」など。人名、地名、国名、書名など個々の名称のことをいう。たとえば、人の名前はこの固有名詞にあたる。
◆そして、次のように付け加えたそうだ
「そのうちあなたがもう40年も生きていると、普通名詞を忘れるようになる。」と。
◆「普通名詞」とは一般的な物事の名前を表す。「四つ足で毛と尻尾があり、ワンと吠える生き物」これが「犬」という「普通名詞」だ。広く意味を束ねる言葉。先ほどの固有名詞はブルドックやチワワのように狭い意味の名詞となるのだ。
◆言語学の先生は次のように説明したそうだ。
「普通名詞を忘れるとね、ものの存在価値もわからなくなるんだ。たとえば、しゃもじを見て、これなんて言うんだっけ? と思ったとたん、それが何に使われるものだったかも闇に失せて思い出せなくなる」
-略-
「大丈夫。余計なものから、消えていくから。しゃもじがわからなくなるころには、自分でごはんをついじゃいないからね。逆に言えば、ごはんをついでいるうちは忘れないわけだ」
◆固有名詞を忘れ、やがて普通名詞も忘れていく。「女優」を忘れるということは「綾瀬はるかさん」も「広瀬すずさん」も忘れてしまうのだ。
◆なぜ「忘れる」のかといえば、それは、脳に予めプログラムされた、ゆっくりと「生」を終え、苦しみを取り除く脳の導きなのだ。何年もかけて、脳は活動を少しずつ停止し、そして死んでいく。ゆっくり、穏やかに。「苦しみ」も「悲しみ」も「喜びも」さえもなくしていくのだ。それは、楽に逝くために脳に仕組まれた、プログラムの発動そのものなのである。
◆さて、中島敦の「名人伝」で、史上最高の弓の名人は「至射は射ることなし」と二度と弓矢を持つことはなかった。そして、最後に至る境地は、名人が「弓」そのものも忘れてしまうという話なのだが、この難解な結末は「脳は、要らないものから忘れる」という原則に当てはめれば、それは至極当たり前のことではないかと思った。
◆「あれ、あれ、あの人。だれだっけ」悔しいことに姿・形・声までは浮かぶが、名前がでてこない。それは失望することではない。至極正常なのだ。
◆いつもニコニコハラタテマイゾヤソワカ
#心は大山
#輪橋山徒然話
#写経をしてみたい人と繋がりたい
#鶴岡市
#黒川伊保子
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#あなあさここ
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#60歳のトリセツ
◆脳科学者の黒川伊保子先生は、物忘れを意識した40代の頃だそうだ。そして、師事していた言語学の先生に「物忘れ」の不安を打ち明けたそうだ。
◆齢(よわい)80にならんとするその先生は、こうおっしゃったという。
「あなたが忘れるのは、まだ固有名詞だろう? 固有名詞なんて、たいしたことはない」
◆固有名詞とは、「山田太郎」「東京」「富士山」など。人名、地名、国名、書名など個々の名称のことをいう。たとえば、人の名前はこの固有名詞にあたる。
◆そして、次のように付け加えたそうだ
「そのうちあなたがもう40年も生きていると、普通名詞を忘れるようになる。」と。
◆「普通名詞」とは一般的な物事の名前を表す。「四つ足で毛と尻尾があり、ワンと吠える生き物」これが「犬」という「普通名詞」だ。広く意味を束ねる言葉。先ほどの固有名詞はブルドックやチワワのように狭い意味の名詞となるのだ。
◆言語学の先生は次のように説明したそうだ。
「普通名詞を忘れるとね、ものの存在価値もわからなくなるんだ。たとえば、しゃもじを見て、これなんて言うんだっけ? と思ったとたん、それが何に使われるものだったかも闇に失せて思い出せなくなる」
-略-
「大丈夫。余計なものから、消えていくから。しゃもじがわからなくなるころには、自分でごはんをついじゃいないからね。逆に言えば、ごはんをついでいるうちは忘れないわけだ」
◆固有名詞を忘れ、やがて普通名詞も忘れていく。「女優」を忘れるということは「綾瀬はるかさん」も「広瀬すずさん」も忘れてしまうのだ。
◆なぜ「忘れる」のかといえば、それは、脳に予めプログラムされた、ゆっくりと「生」を終え、苦しみを取り除く脳の導きなのだ。何年もかけて、脳は活動を少しずつ停止し、そして死んでいく。ゆっくり、穏やかに。「苦しみ」も「悲しみ」も「喜びも」さえもなくしていくのだ。それは、楽に逝くために脳に仕組まれた、プログラムの発動そのものなのである。
◆さて、中島敦の「名人伝」で、史上最高の弓の名人は「至射は射ることなし」と二度と弓矢を持つことはなかった。そして、最後に至る境地は、名人が「弓」そのものも忘れてしまうという話なのだが、この難解な結末は「脳は、要らないものから忘れる」という原則に当てはめれば、それは至極当たり前のことではないかと思った。
◆「あれ、あれ、あの人。だれだっけ」悔しいことに姿・形・声までは浮かぶが、名前がでてこない。それは失望することではない。至極正常なのだ。
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