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耕田院の日常(382回目)山形県羽前大山駅

 『100年たったら』また会えるよ

投稿日:2024年02月16日(金)
輪橋山徒然話 2024-2-16   『100年たったら』また会えるよ
                          
◆卒業式の準備が始まる頃だろうか。もうすぐ別れの3月。しかし、大人への階段とはうまくいったものだ。一つ大人になる晴れがましさ。そんな穏やかな日差しの中の教室を思い出す

◆新しい出会いがある。今日初めて会ったのに、ずっと前から知っていたような気持ちは誰にでもあるだろう。

◆今日はそんなお話を一つ。
鎌田實先生が「この国の壁」(潮出版)という近著で紹介していた。『100年たったら』(作)石井 睦美 (絵)あべ弘志 出版社:アリス館 2018年秋の絵本だ。

「われわれは、ひゃくじゅうの王。どうぶつのなかで いちばんの王だ」
ライオンが ちいさかったころ、とうさんライオンは じまんげに そういった。
「ふん。それが、なんだっていうんだ。このそうげんには、どうぶつは もう、おれひとりさ」

◆草原の動物を食べ尽くしてしまったライオンは、仕方なく草や虫を食べ、寂しい思いをして過ごしている。そこにある日一羽の「ヨナキウグイス」が降り立つ。鳥は怪我をしているのか病気をしているのか、もう飛ぶことができず、ライオンに「私を食べたらいいわ」と言う。

◆しかし、ライオンは鳥を食べずにいっしょに暮らすことにする

「ヨナキウグイス」はライオンに歌ってやり、ライオンは鳥の鬣の中で寝かしてやる。そんな風に過ごすライオンと「ヨナキウグイス」だ。

◆月のきれいな夜、「ヨナキウグイス」は、ライオンの背中から、転げおちるようにして地面におりた。

「ヨナキウグイス」がライオンに「私は行くよ。遠いところに」と告げる。ライオンはそれが何を意味するのか理解し、涙する。

「また あえるよ」
と、鳥はいった。
「いつ?」
「うーん そうだね、100年たったら」

朝がきた。
むねのしたに ひっそりと 鳥をだいて、ライオンがいた。

いったい、百年とはどれくらいの長さなのだろう。

◆百年後にライオンは貝になり「ヨナキウグイス」は海の小さ波になって再会を果たす。また百年が経つと今度はライオンが3人の孫のいるおばあさんになり、「ヨナキウグイス」は孫娘が持ってきた1輪の赤いひなげしの花になって、またしても再会を果たす。

◆そうして 何度も、何度も、何度も生まれ変わって再会を果たすライオンと「ヨナキウグイス」。そして、何度目かの百年後に思わぬ形で再会を果たす。続きは是非、本を探して読んでほしい。

◆鎌田先生は語る

僕は医者であり、医者は科学者であるだから、僕はあの世があるとは考えてはいない。科学的には証明できないからだ。ただし緩和ケア病棟で終末期の患者さんたちに接していると、家族や友達にまたどこかで会えると思うことで救われている人たちがいることは認めざるを得ない。僕はこの「100年たったら」が大好きで、読むたびに人の死について考えさせられると話す。

◆あの世が、ない理由も証明できないが、ある理由も証明できないのだ。

◆瀬戸内寂聴さんは、宗教者の眼で次のように話されている。

死ぬことを往生というのは、仏教では来世を信じ、この世で死ぬことは、あの世に生まれ直すことと考えているからです。

◆いつもニコニコ、一筆啓上付箋写経。
                           修正しての再ポストでした。  
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耕田院(山形県)

すてき

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