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耕田院の日常(348回目)山形県羽前大山駅

「半径3メートル」は隣の隣

投稿日:2023年09月06日(水)
「半径3メートル」は隣の隣 輪橋山徒然話 

◆「半径3メートル」という用語を最近よく見かける。これは自分を中心にしたテリトリーを表すものであるが、他の表現で言えば隣の人のまた隣という関係に相当するようだ。例えば、スナックのカウンターに座って隣の人と会話している時、そのもう一人向こうの人という感じだ。また、私のようなヘボ将棋でいうと「自分が打つ」「相手が打つ」「自分が打つ」というように、3手先までを考えるというくらいの距離感だ。

◆地球環境や宇宙の果てなどの壮大なスケールの悩みよりも、人間の悩みは圧倒的に自分自身と身の回り、つまり「半径3メートル」の範囲に関する悩みが多い。どんな悩みも一朝一夕には解決できないこともあるが、この本では高校社会の倫理に登場する思想家を中心に、悩みについて「こんな考え方もある」という道筋を示している。その示唆を解決の糸口にしようという本が、「半径3メートルの倫理学」である。著者はオギリマサホさんで、中高一貫校で社会科の教壇にも立つイラスト・コラムニストでもある。

◆ご近所づきあいの疑心暗鬼という「半径3メートル」の課題があった。

◆概要は次の通りだ。

24歳の男性。
最近引っ越した地域は、とても静かで暮らしやすく、引っ越して来て良かったと思っていた。 しかし、 2週間ほど経って、家の前のごみ集積所に、回収できない込みが放置されるようになった。
引っ越してきたばかりということもあって、私がその犯人だと疑われてしまうのではと思った。しかし、3週間ほど経った頃にゴミの不法投棄がピタリと止まったという。 ほっとしていたら、隣のおばさんがこっちを睨んでいるような気がしたという。

◆さて、どうしたらいいかという相談だ。

◆解決すべく登場した高校社会の倫理に登場する思想家は、「公共性の構造転換」のドイツの哲学者ハーバーマス。彼の主張は「コミュニケーション的行為」の重視だ。つまり、相談者は「ゴミの不法投棄は自分ではない」と言葉できちんと伝え、近所のおばさんたちの言い分もきちんと聞くべきだというアドバイスだ。

◆黙っていたら、「女子高校生のうわさ話が銀行をもつぶす? 」「自己成就予言」のように、本物の犯人にされてしまうかもしれない。これが「半径3メートル」の怖さだ。

◆だからこそ、言葉を尽くして話し合うことで、正しく、素敵な半径3メートルの関係ができていくということだ。

◆ちなみに、相談者の住む通りには監視カメラがつけられることになったそうだ。監視社会だ。このような状況をハーバーマスは「生活世界の植民地化」という指摘もしている。

◆「半径3メートル」の疑心暗鬼は、コミュニケーションの放棄か原因なのだ。

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◯瀬戸内寂聴さんも、「半径3メートル」の閉塞感に物申す。

「誰かの犠牲になる義務などない」

◯「利他の心」と「人の犠牲になる」のでは全く違う。あなたの人生はあなたのものなのだと。そして、時には「誰かを頼ること」も「逃げ出すこと」も必要あるのですと。

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