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耕田院の日常(345回目)山形県羽前大山駅

独り法師

投稿日:2023年08月31日(木)
輪橋山徒然話 

◆「独り法師」はあることばの語源である。
法師は僧侶のことである。意味は「ひとりの僧侶」となるのだが…。
おわかりだろうか。「ひとりぼっち」である。

◆なぜ、仲間や家族からはぐれ、孤独な状態を表す「ひとりぼっち」が「独り法師」なのだろう。

◆独り法師とは、「宗派や教団などを離脱した僧侶、あるいはみずから脱退するなどして、ひとりで世の中を放浪している僧侶」を指している。その境遇は、あてもなく世の中を彷徨い歩くことから、「独法師の三界坊」ともいう。その孤独な姿から「独り法師」「ひとりぼっち」という言葉ができたのだ。

◆先日のリールに載せた「泣いた赤鬼」(浜田廣介)もこの「孤立」と「孤独」という視点で考えることができる。

◆このお話に出てくる赤鬼は「人間と仲良くなりたい」と願っているが、訪ねてくる人間はいない。つまり、人間界で「孤立」している。

◆赤鬼はどうしても我慢ならずに家の前に

ココロノ ヤサシイ オニノ ウチデス
ドナタデモ オイデ クダサイ

と立て札を書いた。しかし、人間は鬼が「コワイモノ」と考えていたので当然訪れるものはなかった。

◆がっかりしている赤鬼のところに親友の青鬼が訪ねてきた。彼は一つの提案をする。

◆自分(青鬼)が人里で暴れるから、赤鬼がそれを止めれば、人間はきっと君のことを信じるようになると。

◆この提案はうまくいき、赤鬼は人間に信用されるようになる。

そのうちに、そこで赤鬼はだんだんと青鬼のことが気になり出してくる。青鬼の家を訪ねると張り紙がされていた。

赤鬼君

人間たちとは、どこまでも仲よく、
真面目に付き合って、
楽しく 暮らしていってください。

僕はしばらく、君には お目にかかりません。
このまま君と 付き合いを続けていけば、
人間は、君を疑うことがないとも限りません。
薄気味悪く思わないでも ありません。

それでは、誠につまらない。
そう考えて、僕は、これから
旅に出ることにしました。
長い旅になるかもしれません。

けれども僕は、いつまでも
君を忘れますまい。
どこかで、また会う日が
あるかもしれません。

さようなら、君。
体を大事にしてください。

どこまでも、君の友だち。 青鬼

◆なんということだろう。人間と友だちになり、人間界での「孤立」は解消された赤鬼なのだが、その代償として唯一の親友を失ってしまうのだ。孤立を恐れ、多くの交わりを求めたが、結局更なる孤独を感じる赤鬼が残された。

★☆★☆★☆★☆★☆

◯寂聴さんは説く。

「生ぜしもひとり」「死するも独り」ね。

「生ぜしもひとりなり」というのがあります。生まれることも一人。双子でも別々に生まれてくる。「死するも独りなり」そうでしょ? 心中したって、別々に死にますからね…。

◯「孤独だから、だからこそ愛する人を求める」ということなのだ。孤独を知る人が人を愛せるということだ。「孤独を知ること」がそれがまぁるい心を育むのだ。

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耕田院(山形県)

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