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耕田院の日常(228回目)山形県羽前大山駅

#と日記には書いておこう

投稿日:2023年03月25日(土)
◆昭和49年にこんなCMがあった。覚えているだろうか。龍角散トローチ280円。マドンナはセーラー服の村地弘美さんだ。 
 https://www.youtube.com/watch?v=m-y2f6NLaoY

◆ナレーションが流れる

雨が降っている。
今日偶然みちこさんに出会った。
可哀想に咳をしている。
風邪で喉を痛めたらしい。
僕は龍角散トローチをあげて親切に家まで送って行った。
嬉しかった。
と、日記には書いておこう。

やさしく白き手をのべて
林檎をわれにあたへしは
薄紅(うすくれなゐ)の秋の実に
人こひ(い)初めしはじめなり

と、日記には書いておこう

島崎藤村って偉いなあ 。

◆コマーシャルはもちろん恋する高校生の妄想である。しかし、50年近くたち、彼の思い出の都合の悪いところは上手に書き換えられ、日記は大切な宝物になっていることだろう。

◆「やさしく白き手をのべて」は島崎藤村の初恋である。さて、この藤村に「書籍(ほん)」という奇妙な童話がある。こんな話だ。

「書籍(ほん)」

何もない草が路ばたの石のわきに咲いてしいました。

そこへ一人の学校の生徒が通りかかる。するとその草が呼び止めた。
「生徒さん、何をそんなに急いでいるのですか。」

生徒はびっくりしてこう答える。
「私はいろいろな本を読んでいろいろな人の生涯を旅したいと思っているのです。そこでこうして急いでいるのです。」

「それなら」野の花は語る。
「この石に腰掛けて見てください。読もうと思えば 本はこの石の上にありますよ。私は何もない草ですが、あなたのような人に読んでもらいたいと思って、こうして小さな本を広げているのです。」

◆現代は、なんでも安易に答えてくれるデジタル情報で溢れている。私たちはその情報で、全てを理解したと思いがちだ。この童話は、それだけではなく、身近にあるものをよく見、耳を傾けることへの努力も欠かしてはならないとのメッセージともとれる。

◆詩人の感性が現代を予言していたかのようだがそうではない。頭でっかちの人間を戒めているのだ。

◆実物へのアプローチ。よく見、よく聞くことで、何もない草花、どんなささやかなものからも、深い感動 深い言葉を見つけることができるのだ。あるいは、眠っている何かを見出することができるのだとの詩人からのメッセージだ。

◆そのように考えれば、私たちの人生のどんなささいなできごとも、思い出も、一つとして無駄なものはないということになる。苦しみや悲しみ、些細な日常の中にさえ、よりよく人生を生きるための深い感動 深い言葉が隠されているのである。

◆そんな心持ちで、彼岸の今日1日を過ごした。と日記には書いておこう。

◆「深呼吸と一筆付箋写経」心を清々しく保つための術として。今日も一日オンニコニコで。


耕田院(山形県)

すてき

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