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耕田院の日常(138回目)山形県羽前大山駅

『徘徊と笑うなかれ』  

投稿日:2022年12月18日(日)
◆私より10歳上だ。

◆昭和27年生まれの今井恵子さんは、母親と娘二人と夫と5人家族だ。母親の介護という環境だ。こんな短歌を読まれている。

杖(つえ)をつく音 響(ひび)かせて母が来て漬物(つけもの)のような感じに座る

今朝われは寝不足ゆえに老母を大きな声で一喝(いっかつ)したり

「おばあちゃん楽でいいねぇ」「アコちゃんはうごけていいねぇ」日曜の午後

◆一番終わりの短歌がほっとさせる。「アコちゃん」はお孫さんだろうか。どうしても重苦しさのある介護とはちょっと違うあたたかさがある。母と娘の一対一でなく家族の中での介護だからだろう。

◆もう一つほっとする話。

◆その方は、たぶん「徘徊」なさっていたのだろう。夕暮れ刻、私は帰宅途中、歩道に転んで立てないでいるその方を見つけた。真っ赤な血。声をかけても、「だいじょうぶとしかいわない」。あまり表情もない。その方を起こし、たまたま通りかかった若いカップルにお願いした。私は近くの交番まで走った。私は、子どもの頃から、とりあえず「交番」を頼る。

◆その場にもどると、先ほどの若いカップルが、怪我したその方を囲んで、何か一生懸命話しかけていた。4人でパトカーを待った。コロナ禍前のいまの季節の出来事だ。

◆さて、先日の「リール」で取り上げた『徘徊と笑うなかれ』である。

『徘徊と笑うなかれ』             
           藤川幸之助

徘徊と笑うなかれ
母さん、あなたの中で
あなたの世界が広がっている
あの思い出がこの今になって
あの日のあの夕日の道が
今日この足下の道になって
あなたはその思い出の中を
延々と歩いている
手をつないでいる私は
父さんですか
幼い頃の私ですか
それとも私の知らない恋人ですか

妄想と言うなかれ
母さん、あなたの中で
あなたの時間が流れている
過去と今とが混ざり合って
あの日のあの若いあなたが
今日ここに凛々しく立って
あなたはその思い出の中で
愛おしそうに人形を抱いている
抱いている人形は
兄ですか
私ですか
それとも幼くして死んだ姉ですか
徘徊と笑うなかれ
妄想と言うなかれ
あなたの心がこの今を感じて

◆作者である詩人の藤川幸之助さんは20年以上認知症のお母さまの介護をなさったそうだ。その体験が「支える側が生かされていく」という詩集にある。20年以上認知症との闘病の中で次第に記憶と言葉を失っていく、お母さまの命に寄り添い続けた藤川さんだ。

◆この詩について藤川幸之助さんは以下のように述べている。

◆私は「できる、できない」「分かる、分からない」で向き合っていましたが、母には「感じる、感じない」は残っていました。母の心は若い頃の自分に戻り、若い頃の世界をしっかり生きていました。頭の中に広がっている世界に生きているという意味では母も私も同じ。そう思えた時、正常な世界と異常な世界という区別が消えていきました。その体験から生まれたのが『徘徊と笑うなかれ』という詩です。

◆藤川幸之助さんは、私とたぶん同年齢。以前学校の先生もなさっていたという。

参考
 致知出版HP https://www.chichi.co.jp/web/20191104_hujikawa_konosuke/

◆今日の輪橋山徒然話は、徘徊と介護と若いカップルと藤川幸之助さん

◆深呼吸で「心のデトックス」。一度息を全て「大地に」吐き出します。次に胸を広げて鼻から息をたっぷり入れます。最後は「吐く息は細く長く」です。呼吸をコントロールし、呼吸に集中。自分の心にアプローチ。

◆「自分の根っこ」に感謝。ここに自分があること。お父様、お母様。あなたの隣にいる人とそのご縁。これから出会う新しいご縁。全てに合掌しましょう。

◆いつもニコニコ怒りません。「オンニコニコハラタテマイゾヤソワカ」は、自分もまわりも明るく・仲良く・イキイキと導くおまじない。「オンニコニコハラタテマイゾヤソワカ」。
耕田院(山形県)

すてき

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