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耕田院の日常(112回目)山形県羽前大山駅

「小噺」

投稿日:2022年11月20日(日)
◆落語には、本編に入る前におこなう「まくら(枕)」というものがある。導入のようなものだ。そこで使われるのが「小噺」である。字の通り小さな噺。短い落とし噺をいう。たとえば、次のようなものだ。

◆「ついで」

「定吉、ちょっと郵便局まで行っとくれ」
「へーい」
「あ、用も聞かないで飛び出してったよ」
「旦那、戻りました」
「郵便局どうだった」
「特に変わったことはありませんでした」
「手紙を出してもらおうと思ったんだがな」
「なあんだ。なら、ちょうど今行ったところだったのに」

◆仁王

浅草の観音様に泥棒が入り、賽銭箱を担いで表から出ていった。
門番の仁王さまが泥棒を捕まえ、地面に叩きつける。
さらに大きな足で泥棒の腹を踏みつけたので、泥棒たまらず一発、「ブッ!」
仁王「くせものー」
泥棒「におうか」

◆これだけで笑える。ここから、落語がスタートだ。すーと話に引き込まれる。

◆故桂枝雀師匠が赤道をテーマとして述べた「まくら」がある。傑作だといわれている。

「わたくしが子供のころは海外旅行なんてのは夢のまた夢のでございましてね。
あっこがれのハワイ航路なんてこと申しましてね。
飛行機に乗っておりますとスッチュワーデスさんが右手の方をご覧ください、てなことを仰(おっしゃ)られまして。
見ると海の上に赤っい線がずーっと、向こからこっちへズ~っと」

◆観客は大爆笑。手振り身振り、時にはジャンプの桂枝雀師匠の落語がスタートした。

◆「上方落語の爆笑王」桂枝雀師匠が亡くなったのは1999年であるからもう20年以上たつ。高座を転げ回る派手で型破りなアクション。スピード感がある軽妙な語りは、実はその破天荒な芸風からは想像もつかない計算された笑いだったという。鍛錬された芸だったという。

◆「NHKアーカイブス」にかつての桂枝雀師匠の映像とインタビューが残っていた。その映像では、散歩しながら師匠が落語の稽古をしている。ものすごいスピードで語っているのだ。寝ても覚めてもわずかな時間を惜しんでの稽古。

◆インタビューの中で、鬱になり、以前引きこもり、高座から姿を消したことがあったという。その時は、自分のしたい仕事ばかり選んでバチがあたったのだと話していた。そのあとのエネルギーが切れるまでの大活躍である。

◆鬼気迫るものがあった。そして、成し遂げた功績も大きい。例えば英語での落語。外国に出かけ落語を披露する。落語を英語に移したのではない。よくわからないが師匠のいう「聞き手と語り手が笑い合う一体感」が国境を超えて実現していたような映像だった。

◆そしてサブタイトルには「自分を思うことが 自分を滅ぼすこと。人を思うことが 本当は 自分を思うこと」とあった。

◆道を究める条件は「利他」だ。道を究めた人はみな「利他」心に見つけ、それを生き方の真ん中に置いて精進しているのだ。
耕田院(山形県)

すてき

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