「樫と葦」　2022/8/7 朝4時半住職の話より

◆「樫と葦」というイソップ童話がある。

◆ほんの少しの風にも首を垂れてしまうナヨナヨとした葦を見て、樫の木は「なんだ情けない。俺はどんな風がきても平気だぞ！」と威張っている。そこへ大きな台風がやってくる。葦は大風に吹かれて地面に這いつくばったようにしなっているが、持ち前のしなやかさでなんとか一晩やり過ごした。しかし、樫の木は「なんだこんな風くらい！」と踏ん張り、一夜が明け、台風が過ぎ去ってみると、見事に根本からバキバキバキッと折れて倒れていた。その横で葦は何事もなかったかのように、風になびいているという話だ。

◆人間も同じである。一見元気で、むしろ周囲からは前向きで、元気に生きていると思われていた人が、ちょっとしたきっかけで心のバランスを大きく崩してしまうケースが、圧倒的に多いのだ。

◆「樫の木」ばかりではいけないのだ。一見ナヨナヨしている「葦」に学ばなければならないことも多い。

◆未だ社会は、弱音を吐かないことが、美徳なことだとしている。そして、我慢強いのが我が国の国民性だ。しかし、人間のこころは、いつまでも「我慢し続けていくこと」はできない。心も折れることもあるのだということを自覚しなければならない。

◆目の前にあるのは、強固なストレス社会である。そんな現代で健やかな心を保ち続けるにはどうあればよいのか。必要なことは、こころを折ることなく、自分の人生を大切に歩き続けていく力だと思う。

◆それは、大きな台風にあっても生き残る葦の知恵だ。葦に学ぶのは、「しなやかなこころとストレスを溜めない知恵」である。つまり、柔軟な思考方法と受け流していく力である。

◆困難な状況も見方によって変わる。視点を変えると違った風景が見える。ストレスやプレッシャーに強い人間は、この見方ができるのである。そして、ストレスを溜めないとは、葦のように受け流す力である。やり過ごしてやるのだ。柔軟であることはいい加減ではないのだ。