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耕田院の日常(56回目)山形県羽前大山駅

「柔軟心(にゅうなんしん)」2022.9.12朝4時半の住職の話より

投稿日:2022年09月26日(月)
◆相田みつをさんの詩だ。

ちょっと変えたら    相田みつを

えらい車の数だなぁ…
これじゃ動きが取れないね
「なんでこんなに混むんかね」
歩橋の上で立ち往生していた車の中で
私は少しイライラして
ハイヤーの運転手にぼやいた
すると運転手が笑顔で答えた
「お客様で車の混む原因の一ツは
自分の車なんですよねえ
こんな時はのんびりと
川の流れでも眺めていて下さいよ」

私は私より若い運転手に見事に一本とられた思いだった
そして車の窓から川下の方を眺めると
遠い浅瀬の中に白鷺が一羽いるのが見えた
白鷺の白い光は深い秋の色だった
偶然乗り合わせたタクシーの
運転手のおかげで心の向きを
ちょっと変えたら
静かに深まる秋の色が見えた

◆白鷺は飛び立つ時、まず大きく羽を広げる。二、三度羽ばたき、水面を滑空する。その姿は実に見事である。バダバダしない。スゥーと飛んでいく。また、水面に姿を映し、立ち姿も優雅である。そして、魚でも見つければ一瞬で捕らえる技も持つ。

◆相田みつをさんが見た白鷺は、まさに、道元禅師が詠まれた一句の如くである。

峰の色 渓の響きも みなながら 
我が釈迦牟尼仏の 声と姿と

◆渋滞の橋の上でイライラし、前ばかりみていた目線から、横にちょっと目線を移すことで相田みつをさんは「釈迦牟尼仏」を感じたのだと思う。

◆車の渋滞巻き込まれ、イライラし、その渋滞の原因に自分も加担していることにも気がつかないのが、この現実世界に住む我々の実態なのである。いつの間にか、タダまっすぐ前、物事を一方向からしかみることができなくなっている。つまり、いつも固定観念や先入観、思い込みに「とらわれ、心が凝り固まっている」状態なのだ。いや、それにすら気がついていない。

◆相田みつをさんは目線を転ずることで、すぐそばに「釈迦牟尼仏」がいることを教えている。このように、前ばかり見ることに執着せず、この物事を柔らかく、しなやかに生きることを「柔軟心」という。物事を一方向からだけではなく、360度見渡せるような、あるいは俯瞰ともいってよい。

◆。柔軟な物の見方を心掛ければ、「物事の受け取り方」も変わっていくはずだ。あなたの受け取り方が変わると「周り」も変わる。そして、「柔軟心」は、マイナスをプラスに転じるキッカケ・チャンスにも成り得るのだ。

◆さて、1週間の始まりだ。先週の「和顔愛語」の「オンニコニコハラタテマイゾヤソワカ」に加えて、「柔軟心」でかんばろう。
耕田院(山形県)

すてき

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