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耕田院の日常(43回目)山形県羽前大山駅

棺桶の詩人2022/4/17 朝四時半の住職の話より

投稿日:2022年09月13日(火)
◆この詩人には、「一日の仕事を始める前に棺桶に横たわった」という。詩人は生きたまま棺桶に入り、死を擬似体験し、創作活動のインスピレーションを得たという伝説である。伝説ではなく、本当のことだったろうと私は思う。

◆この詩人とはイーディス・シットウェル/Edith Sitwell (1887.9.7 - 1964.12.9 )である。

◆英国の女流詩人。ヨークシャーのスカーバラ生まれ。代表作は「道化らの家」「黄金海岸の奇襲」「なおも雨が降る」「原子時代の三詩編」。

◆「広島の原爆-英国詩人の視点 寺沢京子」によれば、イーディス・シットウェルは1945年 9月 10日にタイムズ紙で広島の原爆投下の記事を読み、強い衝撃を受けたそうだ。「トーテンポールのような原爆の姿に、創造の象徴であるはずのトーテンポールが、破壊そのものと化している」と慄いたという。そして、彼女は「原子時代の三詩編」を生みだした。       

◆「新しい日の出のための挽歌より」(原子時代の三詩編)

   略

 だが私は見たのだ
 蟻のような小さな人間が
 世界の汚れの 人間の汚れの
 すべての重みを背負い-
 情欲や貪欲が
 太陽熱より更に高い熱を持つに至り
 おしつぶされて
 逃げまどうのを

   略

 生きている亡者と
 見ている死者が
 まるで愛し合っているかのよう
 横たわり………
 もはや 憎しみもなく 愛もなく
 人の心は
 消えてしまった

◆今は瞬時に「東部マリウポリで攻勢強め“拠点1つを掌握”と主張」の如く戦況が報道される。逃げる市民、赤ちゃんをだく母親。現実に鈍感になっていく自分がいる。言葉に重みがなくした「報道」とともに。

◆彼女の時代は全く誓う。彼女は新聞の写真や記事、目撃者の証言から、創造の言葉を紡いでいだのだ。「原子時代の三詩編」は、棺桶に横たわって創作を始める詩人の使命感が生み出したものなのである。

◆彼女は、伝えている。「原爆投下は、敵や味方で語るのではなく、人類全体の罪であることを」。現在のマリウポリでの惨劇も、他人事ではなく、人類全体の罪なのだと。

◆「広島の原爆-英国詩人の視点 寺沢京子」のレポートを参考にさせていただきました。みなさまにも是非読んでいただきたいと思う。
耕田院(山形県)

すてき

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