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耕田院の日常(37回目)山形県羽前大山駅

「夏の雨蛙」 2022/9/4「朝4時半の住職の話」から

投稿日:2022年09月07日(水)
◆蛙の置物が好きな人がいる。家中のあちらこちらに蛙の置物。無事に「帰る」という願いだろうと思っていた。しかし、それだけではないらしい。

◆風水では、カエルの置物は幸運の象徴。世界各国で「福が返る(カエル)縁起物」と信じられているそうだ。また、置き方もきまりがあるらしい。場所は、玄関に置き、カエルの顔は家の方に向けて飾るのがよいという。「お金を家にもってカエル」という意味なので、顔が反対ではまずいらしい。

◆お寺のどこの玄関にもカエルの置物もフィギアさえない。風水的にはアウトだ。

◆しかし、この夏、お寺の庭に通じる縁台のあたりに、雨蛙が住み着いていることに気がついた。調べてみてわかったのだが、雨蛙の寿命は4年程度もあるのだという。この厳しい暑さも、あの冬も乗り切って4年以上生きていたのだ。

◆あんな小さい体で、4年以上生きていることを知り、見る眼が変わった。彼らの黄緑色で、目の後ろに黒い筋のような模様もかっこよく見えてきた。まわりの環境に反応して、器用に色を変えるのだが、白っぽい蛙、土色の蛙と随分とおしゃれなところも。そして「腹」が白色で模様がなく怖さがないところも最高だ。(食用蛙のお腹を見たことあるがそれは恐ろしい模様だった。)雨蛙は「かわいい」とまでは思わないが、ちょっぴり愛しく、ともに庭で四季を生きる仲間に見えた。

◆吸盤を使って、ガラスの面や壁を垂直に登ることができる。この時期の雨蛙はいつも同じ場所でじっとしている。壁にはりついている雨蛙は、相当高い位置にいる。3メートルも上にいるので、「降りてこれないのでは?」と心配になる。この暑さだ。干からびてしまってからでは遅いと思って、恐る恐る捕まえて、そっと睡蓮バチに移した。涼を取らせようと思ったのだ。

◆ところが、それを見ていた家人に「蛙は夜行性よ」嗜められた。「えっ」。それが本当ならまったく余計なことをしてしまったものだ。雨蛙からすればえらい迷惑だ。一番安全で快適な場所から、突然拉致されたのだから。

◆調べてみると、蛙は、乾燥に弱い。太陽光線を浴びるとたちまち干からびてしまう。そのため、昼間の蛙は眠っているのだ。その時には、体をピタッと張りつけ、腹部が乾燥しないようにしている。しかも、驚いたことに、背中の粘液を乾かして、皮膚をカピカピにして、水分の蒸発を防ぎ、保護しているのだ。無駄なエネルギーを使わずに、身につけた技で、「昼寝」をしながら乗り切っていたのだ。それを睡蓮鉢に放り込むとはとんでもない。

◆生き物は環境の厳しさに対応して様々な能力を身につけている。その能力は、テクノロジーの塊にも、芸術品にも見える。無知な人間には及びもつかない。

◆昨日の夜は網戸に雨蛙が来ていた。光に集まってくる虫が食べ放題なのだろうか。
耕田院(山形県)

すてき

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