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耕田院の日常(26回目)山形県羽前大山駅

「空との対話」 2022/7/13「朝4時半の住職の話」

投稿日:2022年08月27日(土)
◆その人は、大切な人を亡くした悲しみに押しつぶされそうに見えた。救急に入ったときから、いや、病気を告知されたときから、そっと泣いていたのだろう。

◆闘病生活、あの夫婦だったらこんな会話だったろう。

「痛いでしょう」(痛みは薄らいだよ)
「苦しいでしょう」(さっきより楽だよ)
「楽しかったね」(楽しかったよ)
「…」(大丈夫だよ。ありがとう)

◆非常に苦しい闘病生活と聞いた。

◆そうして、命は尽きるが、思いは、家族一人ひとりの心の中に収められる。心の奥の置き場所にそっと置かれる。

◆山田太一さんに「空との対話」(神奈川新聞2015 /9 /14)というエッセーがある。偶然に老人施設で出会えた人との交流だ。

「それは妻を失い、子供の世話になる訳にもいかない男の決心して入居したホームでの孤独、喜びの少なさもクッキリ感じさせるものだった」が、 そんなことをものともせず 明るく今の喜びを語っていた。

(略)

「話し相手ができてよかったな」  (山田太一)
「このあいだ救急車で運ばれてったよ」
「その人が」
「それっきりだ」
「そう」
「そういうもんだ。しかし、いると思って思い出している。そうなりゃ強いもんだ。女房だろうと、母親だろうと、こっちの都合でどうにでもなる。いい思い出ばっかりだ」

◆「妻を失い、子供の世話になる訳にいかない孤独な男」は、「心の奥の置き場所にそっと置いた」人との交流の方法を教えている。それは、「いると思って思い出す」「ここにいると持って話をする」こと。さすれば、いい関係がまだまだ続くと。いい人生だと思えることがまだまだ増えていくのだと。

◆そして、この話はこう結ばれている。

「このごろは天気と話をしている。朝、カーテンをあけると、天気が言うんだ。今日はうす曇にしといた。あんたのためだけにな、と」

◆幼子が風とはなしをするように「いると思って話をすれば」天気とでさえも、よき友人になれるのだ。心を開き、孤独とはオサラバだ。
耕田院(山形県)

すてき

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