四国八十八ヶ所を何度も巡礼された禅の名僧～その②～

四国八十八ヶ所を何度も巡礼された
禅の名僧 山本玄峰師~その②~
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前回の話の続きです。
※山本玄峰師については前回の投稿をお読み下さい。
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目のほとんど見えない体で眼病平癒のために裸足で四国八十八ヶ所を七回巡るという願をかけた芳吉(山本玄峰)は雪蹊寺の山本太玄師に拾われる。
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四国八十八ヶ所の雪蹊寺(三十三番札所で臨済宗の寺院)の山本太玄師のもとで出家した山本玄峰は２６歳で滋賀県 永源寺で修行
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３２歳、岐阜県多治見市 永保寺では豆ランプの明かりを頼りに本を読んで勉強できるまでに視力は回復していた。
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３８歳、山本太玄師の遷化にともない土佐の雪蹊寺に帰り住職となる。
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４３歳、雪蹊寺を法友に譲り、４９歳、静岡県 龍沢寺の住職となる。(荒廃していた幾つもの寺院の復興につとめた)
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叡知に富み、人情に厚く、豪放磊落な人柄は多くの人々をひきつけた。「玄峰さんのような人に外国に行ってもらうのは将来日本のために非常に役にたつ」と企業の社長の経済的援助で５８歳(大正１２年) の時にアメリカ、イギリス、ドイツを外遊。
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玄峰師の名声は全国に広まり、玄峰師の導きを受けようと政財界の大物たちが馳せ参じることになった。終戦時の首相 鈴木貫太郎や戦後の首相 吉田茂、池田勇人など後に日本の政治の中枢を担う人物たちが玄峰師の助言を求めて訪れた。
７７歳、昭和１７年 太平洋戦争が激化し、日本本土への初めての空襲が行われる。
山本玄峰師８０歳、昭和２０年鈴木貫太郎氏(海軍出身)が総理大臣の任を受けるべきかどうかで玄峰師の意見を聞く
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鈴木貫太郎氏「老師、今日はわざわざおこしくださり、ありがとうございます。日本は今、国家存亡の危機です。『武人政権をとって国興ったためしなし』と古人が言うとおり、私は武人政治には反対です。武人である私はどうするべきか悩んでおります。」
山本玄峰師「あなたは日常の政治家でもないし、総理になる人でもない、総理になる者は世の中の悪いことも良いこともよく知っている人であり、あなたは純粋すぎる。しかし、こういう非常時こそあなたのような金も名誉もいらぬ尽忠無私の人が必要だ。そして、あなたは二・二六事件で一度あの世にいっている方だ。だから死生は乗り越えていらっしゃる。あなたをおいて他はない。戦争を止めるために(総理大臣を)お引き受けなさい。」鈴木氏は二・二六事件の時に襲撃され銃弾四発を受ける重症を負ったが一命をとりとめた過去があり、玄峰師はこのように鈴木氏を励ました。そして玄峰師は「日本は(横綱ではなく)大関じゃから、大関は勝つもきれい、負けるもきれい。日本はきれいに無条件に負けることじゃ。これは命をかけた人間が五人いればできる。
今、『本土決戦じゃ、聖戦完遂じゃ』と言って騒いでおるが、そんな我慢や我執にとらわれておったら、国家はつぶれ国民は流浪の民になる。」と、日本の無条件降伏を求めるポツダム宣言の出る半年前に言った。
ポツダム宣言が出され、それを受諾するかどうかの御前会議が開かれたころ、玄峰氏は総理大臣となった鈴木貫太郎氏に「これからは大事な時ですから、耐えがたきを耐え、忍びがたきを忍んで、体に気を付けながらやって下さい。」という手紙を送った。
この手紙の文言が有名な終戦の時の玉音放送となったという。
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玄峰氏８２歳(昭和２２年)、
臨済宗妙心寺派の管長に就任。
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玄峰師は出家する前に四国八十八ヶ所を七回巡拝したわけだが、それ以後も四国巡拝を続けている。(生涯に１７回)
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１４回目(昭和２８年)※ここまでは徒歩で巡拝。
最後の三回は車での巡拝であった。
１５回目(昭和３３年)９３歳
１６回目(昭和３４年)９４歳
１７回目(昭和３５年)９５歳
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昭和３６年 ６月３日、９６歳で遷化。「旅に出る、支度をせい。」これが玄峰師の最期の言葉であった。
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亡くなる一年前まで四国八十八ヶ所を巡拝。
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「死んでから仏になるはいらぬこと この世のうちによき人となれ」
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朝夕、心に種をまき手入れをして、この世できちんと生きて行くことを説いた。
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江戸末期に生まれ、明治、大正、昭和を生き、終戦の際の玉音放送の一節「耐え難きを耐え、忍び難きを忍び」の言葉を作り、終戦後の新憲法立案の際、憲法調査委員会が「民主主義」と「天皇制」とのバランスに悩んだ時に「天皇は空に輝く国民の象徴みたいなもんだ」との明解答を出した人としても名を残している。
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山本玄峰師は四国遍路を第二の人生の出発点として生き抜いた
人であり「四国遍路で救われた人」の代表格である。
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※この文章は年に２回発行している安楽道(安楽寺新聞)の過去の記事を参考にしています。
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