三輪神社のお参りの記録(1回目)
愛知県上前津駅

名古屋市中区に広がる大須は、古くから続く商店街と若者文化、歴史的な寺社が共存する、名古屋を代表する繁華街のひとつです。その中心地の一角に鎮座するのが、三輪神社です。地元の人々のみならず、大須を訪れる多くの観光客や参拝者からも親しまれているこの神社は、大須観音と並んで、街を象徴する神社仏閣の一つとして広く知られています。

三輪神社の歴史は古く、その創建は江戸時代にさかのぼるとされます。特に注目すべきは、尾張藩第16代藩主・徳川義宜（よしのり）公が祀られている点です。徳川義宜公は幕末の動乱期に藩主を務め、戊辰戦争の際には旧幕府方として苦境に立たされた人物でもあります。その義宜公を祀ることで、地域の歴史と人々の想いが神社の中に受け継がれているのです。

境内はさほど広くはないものの、手入れが行き届いており、清浄な空気が漂っています。鳥居をくぐると、まるで賑やかな大須の通りから一歩離れた異世界に踏み込んだような、不思議な静けさと神聖さに包まれます。参道の両脇には植栽や小さな祠が配されており、商業地の真ん中にありながらも、厳かな雰囲気を保っている点が印象的です。

三輪神社の名前は、奈良県桜井市に鎮座する日本最古の神社のひとつ、大和の三輪山を信仰の対象とする大神（おおみわ）神社に由来しているとされています。そのためか、境内には蛇を神の使いとする信仰も見られ、運気上昇や縁結び、商売繁盛など、さまざまな御利益を求めて訪れる人の姿が後を絶ちません。お守りや御朱印にもその意匠が見られ、信仰の深さと広がりを感じさせます。

また、神社は四季折々の行事や祭礼にも力を入れており、特に正月や節分、夏祭りの時期には多くの参拝者で賑わいます。大須商店街での買い物や食べ歩きの途中で、ふらりと立ち寄ることのできる立地にあるため、気軽に神仏に手を合わせるという、日本人の生活の中に根ざした信仰のかたちを今に伝えているとも言えるでしょう。

大須の現代的なエネルギーと、三輪神社が持つ伝統的な静けさ。その対比がこの場所の魅力をいっそう際立たせています。華やかな通りに囲まれながらも、神域としての気高さを保ち続けている三輪神社は、まさに名古屋の街の“心の拠り所”として、今もなお多くの人々に親しまれています。