明王とは?煩悩を断ち切る不動明王や愛染明王など明王の見分け方を徹底解説
※記事中に使用したイラストの無断転載を禁止します。
「明王ってどんな仏様?」
「なぜ怒った顔をしているの?」
「それぞれの違いを知って、お寺めぐりをもっと楽しみたい」
全国8万ヶ寺以上のお寺を紹介する日本最大の神社お寺・御朱印の検索サイト「ホトカミ」編集部の高原です。
お寺に参拝すると、武器を持ち怒った顔でこちらを睨みつけている仏像を目にすることがありますよね。
それらの仏像は「明王」と呼ばれる仏様です。
如来や菩薩が穏やかな表情をしていることが多い中で、なぜ明王は怒った顔をしているのか、不思議に思われる方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、明王が怒った表情をしている理由や、主な明王の見分け方と特徴について紹介します。
仏像ごとの違いやその背景も知ることで、お寺への参拝がより楽しく、深い体験になるはず。
ぜひ最後までお読みいただき、実際にお寺を訪れてみてください!
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悟りを開いた完璧な存在「如来」の基本を解説
仏像は上から「如来」「菩薩」「明王」「天部」の4つの階層に分かれています。
今回の記事で紹介する明王たちは、上から3番目の位に属しています。
明王は基本的に怒った表情や様々な武器を持っています。
明王は仏の道を外れた人をも救う
明王は、仏の教えを守らない人々を怒ってでも仏の道へ引き戻す仏様です。
人々の悟りを妨害する「煩悩」を手にもつ剣で断ち切ります。
サンスクリット語のビドヤーラージャ(Vidyārāja)が語源になっています。
・Vidyā=明呪(みょうじゅ):真言などの呪文
・rāja=王
の2つの言葉を合わせて「明呪の王」、または「明呪の力を持つ者の王」の意で明王と呼ばれるようになりました。
「明呪」については記事後半で詳しく説明します。
ぜひお読みください!
明王は【武器を持ち怒っている】
仏教の教えに背く人々を導き救う仏様です。
明王とは密教から生まれた仏で、大日如来の化身とされています。
明王の多くは怒ったような表情をしており、右手には剣、左手には羂索など武器やアクセサリーなど体に装飾をつけています。
怒った顔で武器を持っていたら、明王です。
明王を見分ける4つのポイント
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明王を見分ける4つのポイント
①牙を剥き、目が吊り上がった表情:忿怒相(ふんぬそう)
②長い髪を後ろで結び左側に垂らす髪型:弁髪(べんぱつ)
③逆立った髪型:焔髪(えんぱつ)
④様々な武器
【迫力満点!】代表的な2つの明王を紹介
明王には数多くの種類の仏像がありますが、今回は2種類の明王を紹介します。
不動明王(ふどうみょうおう):炎・武器・ポニーテール
不動明王は、悪魔と煩悩を退治する仏様です。
不動明王は燃え上がる光背と武器を持ち怒り顔をしています。
・ポニーテールを左に垂らす(弁髪:べんぱつ)
・燃え上がる光背(火焔光背:かえんこうはい)
・右手に剣
・左手に縄(羂索:けんさく)
この4つのポイントを覚えましょう。
不動明王は、仏の道に従わないものを叱りつけてでも諭し、悟りを求める心を起こさせる仏様です。
サンスクリット語の「アチャラナータ(Acalanāta)」が語源で、「動かない者」という意味です。
また、ヒンドゥー教の最高神シヴァも同じく「アチャラナータ」と呼ばれるため、不動明王はシヴァが仏教に取り入れられたものとされています。
炎の光背(火焔光背)と右手に持つ剣は悩みや欲望といった煩悩や災難を断ち切り、左手の羂索で全ての生き物を救うとされています。
不動明王はそのほかの明王とチームで祀られることもあります。
そのチームのことを五大明王 と言います。
五大明王は不動明王を中心に
・東:降三世明王:「現在・過去・未来」の3つの世界の「欲望・怒り・無知」を降伏させる明王
・西:大威徳明王:水牛に乗り、人々を害する悪を征服する明王
・南:軍荼利明王:悪を退け、甘露で私たちを救う、体に蛇を巻きつけた姿が特徴的な明王
・北:金剛夜叉明王:煩悩を杵で打ち砕き食い尽くす明王
です。
不動明王が有名なお寺
・成田山新勝寺(千葉県)不動明王像
成田山新勝寺の不動明王は弘法大師が自ら開眼したとされています。
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・東寺(京都府)不動明王坐像
国宝にも指定される東寺の不動明王は、立体曼荼羅の左側に位置します。
日本最古の不動明王です。
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愛染明王(あいぜんみょうおう):髪を逆立て、肌は真っ赤
愛染明王は人の欲望から悟りを導く仏様です。
愛染明王は【真っ赤な肌】を持っています。
・3つの目
・真っ赤な肌
・逆立った髪
・6本の腕
・丸い光背
この5つのポイントを覚えましょう。
丸い光背は日輪=太陽を意味するものとなっています。
また、6本の腕にはそれぞれ弓・矢などの武器を持っています。
愛染明王は、私たちが抱える「愛」などの煩悩を受け入れ、乗り越えることで悟りに近づくために手を貸してくれる仏様です。
このことから、肌や光背の色が煩悩の激しさを表す赤で表現されています。
愛染明王が有名なお寺
・西大寺(奈良県)愛染明王坐像
1247年に善円という仏師によって制作された、高さ30cmほどの小さな仏像です。
西大寺の秘仏で年に2回ご開帳されます。
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・妙高寺(新潟県)愛染明王坐像
鎌倉時代に制作された、高さは約2mの仏像です。
こちらも秘仏ですが、毎月26日にご開帳されています。
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明王は密教特有の仏様
記事前半でも触れた通り、明王には「真言(呪文)の王」という意味があります。
ここからは、「明王」の起源を解説していきます。
【秘密の仏教】密教とは
明王は、密教と呼ばれる独自の教えから生まれた仏様です。
密教は、すべての物事の根源を大日如来とし、秘密の教えや修行を通じて仏になることを目指す仏教の一派です。
ヒンドゥー教の教えに影響を受けて、6世紀ごろにインドで生まれました。
日本では空海が真言宗を開き、8世紀前半ごろから広がり始めました。
密教の中では、密教以外の一般的な仏教は顕教と呼ばれます。
-
顕教と密教の違い
- 私たちの善行や願いによって現れた仏様が、迷いを取り除き悟りを開くための教えや修行を説く
- 教えが言葉や文字でわかりやすく示されているため、民衆に広く浸透した
- 悟りがどのようなものかは説明されない
- 悟りを開くために無限の歳月を要する
- 大日如来を全ての根源とする
- 顕教で言葉で説明することができない、悟りそのものを真言などの呪文や絵、仏像などを通して表現する
- 秘密の教えや修行によって、生きたまま仏になること(即身成仏)を可能にする
- 民衆には広く開かれていなかった
顕教
密教
明王の呪文の力を表現した仏像
明王は「真言(呪文)の王」という意味です。
密教では、真言などの呪文のことを「明呪(みょうじゅ)」と呼び、これには煩悩を打ち砕く力があるとされています。
真言は仏になるための修行や儀礼において重要な役割を果たしており、この力を象徴した存在が明王 です。
如来や菩薩が穏やかな顔で仏の慈悲を表現しているのに対し、明王は怒りの表情や力強い姿で、煩悩を打ち破る「明呪」の力を示しています。
真言宗のお寺にはこうした明王の仏像が多く祀られ、護摩行の際には真言が唱えられます。
終わりに
ここまで、明王の見分け方や特徴について紹介してきました。
人々を怒ってでも仏の道へ引き戻す「明王」
迫力のある姿には、仏の教えの力強さが表現されています。
仏像に込められた教えや物語を知ることで何気なく手を合わせていた仏像から、新たな学びや感動を得られるはずです。
ぜひ、この機会に仏像を見にお寺に参拝してみてはいかがでしょうか。
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神社お寺の検索サイト「ホトカミ」運営代表
吉田 亮
月間120万人の神社お寺ファンが使う神社お寺の検索サイト「ホトカミ」を運営する株式会社DO THE SAMURAI代表取締役。
東京大学理科II類入学後、文学部言語文化学科日本語日本文学(国語学)専修課程卒業。
2013年より日本文化や歴史を後世に繋ぐ事業を開始、2016年法人化。
これまで2000人以上の参拝者との対話や、累計1000万アクセスを超えるお参りに関する記事の執筆編集、100年後に神社を残すために社会と神社の接点を創出する。
ホトカミ編集部 御朱印記事ライター
高原 健太郎
日本文化や神社お寺が好きです。
独特の雰囲気に魅了されてから、寺社めぐりが趣味になりました。
イラストレーター
田中ひろみ
絵文人・仏像研究家(株)TERABIT代表、奈良市観光大使女子の仏教サークル「丸の内はんにゃ会」代表。
カルチャー センター講師。元ナース。テレビ出演、講演も多数。ART ・俳句・盆踊らー
著書 『イラストレーターが作った仏像ハンドブック』(ウェッジ) など約70冊
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