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耕田院の日常(402回目)山形県羽前大山駅

「日にち薬」

投稿日:2024年03月08日(金)
輪橋山徒然話  2024-3-8. 「日にち薬」

◆どうも「時間」がはやく進んだり、ゆっくりと進んだりということがあるようだ。いつも、楽しい時間はあっという間に終わり、退屈な時間は長々と続く。

◆お寺においでになるお年寄りは、毎日毎日の1日は長いのだけれど、1か月・1年はあっという間に過ぎていくという。若い頃は、1日があっという間に過ぎ、1年間はあんなに長かったのにとしみじみいう。

◆また、年齢以外に時間の流れを決めるものに、人生の様々な巡り合わせや出会いがある。

◆特に深い悲しみや苦しみ、「絶望」の中にいるときの時間の過ぎようは、本当にゆっくりだ。かみしめるようにゆっくりと過ぎる。まるで入り口の見えない暗いトンネルを歩くようなものである。

◆「春の来ない冬はありません。明けない夜もありません」とラジオの人生相談ハーソナリティの方が語るこのフレーズは、実に、真理だと思う。季節や夜と朝、そして人の心さえもまた、日々刻々と変化する自然の営みの中にあるからだ。つまりこの世は「無常」なのである。同じところに留まるものはなどない。それが「春の来ない冬はありません。明けない夜もありません」なのだ。

◆無常とは一切万物が生滅変転して、常住でないこと。現世におけるすべてのものがすみやかに移り変わって、しばしも同じ状態にとどまらないという意味なのだ。

◆だから、今ある「絶望」にも始まりがあり、終わりがあるのだ。「絶望」のトンネルから出るには1年も2年もかかるかもしれない。しかし、必ず光が射すはずなのだ。

◆このことを瀬戸内寂聴さんは、「日にち薬」ということばでお説きになる。

「どんな悲しみや苦しみも必ず歳月が癒してくれます。そのことを京都では『日にち薬(ひにちぐすり)』と呼びます。時間こそが心の傷の妙薬なのです」と。

◉もちろん、「日にち薬」とは、時間がトンネルにいることを忘れさせてくれるという意味ではない。「悲しみや苦しみ」が、時間とともに、次第に「落ち着くところ」に「落ち着く」という意味なのである。「悲しみを受け入れ、調う」という言葉になるのであろうか。

◆最愛の人を失った方が、手を合わせて、日々を過ごすうちに、ふとご自分のそばに、亡き人いるような気配を感じられるようになったという。そのことで、ずいぶんと救われたという。そんな心持ちなのであろう。

◆人は生きていく以上様々な「悲しみや苦しみ」にぶつかる事は避けられない。しかし、同時に「悲しみや苦しみ」を「受け入れ、調え」乗り越えていくことで、人はそれ以前よりも強くなり、また優しくなれるのだと思う。

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耕田院(山形県)

すてき

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