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耕田院の日常(397回目)山形県羽前大山駅

向田邦子

投稿日:2024年03月03日(日)
輪橋山徒然話 2024-3-3.

◆花は桜。

 花ひらき はな香る
 花こぼれ なほ薫る

◆この「花」は51歳の若さで、不運な飛行機事故に遭い無くなった向田邦子さん。「花ひらき はな香る」は彼女の墓碑銘。名優森繁久彌氏の慟哭の筆だ。

◆「わが家の遠足のお弁当は、海苔巻であった」で始まる向田邦子さんのエッセーがあった。

「海苔巻の端っこ」

わが家の遠足のお弁当は、海苔巻であった。
遠足の朝、お天気を気にしながら起きると、茶の間ではお弁当作りが始まっている。
一抱えもある大きな瀬戸の火鉢で、祖母が海苔をあぶっている。黒光りのする海苔を二枚重ねて丹念に火取っているそばで、母は巻き簾を広げ、前の晩のうちに煮ておいた干ぴょうを入れて太めの海苔巻を巻く。遠足にゆく子供は一人でも、海苔巻は七人家族の分を作るのでひと仕事なのである。                    (父の詫び状より)

◆彼女が始め脚光を浴びたのはホームドラマだった。ホームドラマは一話ずつ、「海苔巻の端っこ」のようなエピソードをさりげなく入れて、ちっとした日常の機微を描いていく。

◆一話一話の起承転結がはっきりしていて、でしゃばりすぎず、清々しい、それでいて、きちっと山場があり、余韻があった。

◆現代は「孤独」だ「無縁社会」だと言われる。この向田ドラマのキーワードも、「やがて、失われゆく家族の絆」だった。

◆令和の今もなお彼女の残された作品にはよき時代の「香り」と「薫り」がする。冒頭の墓碑銘の「花開き」通りである。ちなみに「香り」とは、鼻で感じる匂いのこと、「薫り」は雰囲気や肌で感じる匂いとのことである。

◆作者のいのちは散ってしまっても、作者の心、作品の命は永遠に散ることはない。向田作品こそ、「花びらは散っても 花は散らない 形は滅びても 人は死なない」と松原泰道老師が説かれる通りである。

◆さて、彼女の最期のエッセー「夜中の薔薇」にこんな文章がある。

「花を活けてみると、枝を矯(た)めることがいかにむつかしいかよく判ります。
折らないように細心の注意をはらい、長い時間かけて少しずつ枝の向きを直しても、ちょっと気をぬくと、そして時間がたつと、枝は、人間のおごりをあざ笑うように天然自然の枝ぶりにもどってしまうのです。よしんば、その枝ぶりが、あまり上等の美しい枝ぶりといえなくとも、人はその枝ぶりを活かして、それなりに生きてゆくほうが本当なのではないか、と思ったのです。」

◆「それなりに生きてゆく」とは自分らしくという意味であろうか。下載の清風のごとく、こだわりを捨て、重荷を降ろし、軽くなった船で、飄々と走る様でもあり、ある意味死をも達観したような、凛とした文である。

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耕田院(山形県)

すてき

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