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耕田院の日常(353回目)山形県羽前大山駅

「杓底一残水」

投稿日:2023年11月29日(水)
「バーチャルウォーター」と道元禅師

○食べるためだけの牛肉1グラムを生産するのに、1リットルのペットボトル約15本必要だという事実がある。

◆道元禅師は、仏前にお供えする水を、門前を流れる川から柄杓で水を汲みに行っておられた。その際、必要な分の水を使ったら、使わなかった残りの水を元の川に戻していたといわれている。これを「杓底一残水 汲流千億人(しゃくていの一残水、流れを汲む千億人)」という。

◆「今」目の前の川には水が豊富にあり、「今」失われる心配は無い。しかし、「今」どんなに水が豊かにあったとしても、一滴の水も粗末に扱ってはならないということだ。仮に、その一滴でさえも、川に戻せば下流で水を使う人、またその先の為になるという教えだ。

◆確かに「今」は恵まれている。水も電気も紙も使いたいときに使える。しかし、地球規模で考えれば資源には限りがあり、現実に一杯の水に困っている人がいる現実がある。そこから目を背けてはならない。

◆道元禅師の「杓底一残水 汲流千億人(しゃくていの一残水、流れを汲む千億人)」は、全てを見通した真理の上にあるのだが、それを証明するかのような言葉が「バーチャルウォーター」だ。

◆「バーチャルウォーター」とは、製品や食品の生産に使われる水の量を指す。例えば、1キログラムの牛肉には約15,415リットルの水が使われるとされる。この水の量は、飼料や飲水など、「人が食べるためだけ」の牛肉1キロを生産する場合の水の消費を示している。

◆ウシのゲップとCO2について以前ポストしたが、それと同じように、「水」を「肉」に換算している。牛肉1グラムで1リットルのペットボトル約15本というとだ。

◆このバーチャルウォーターの視点から見れば、日本は最悪の国の一つである。食料や原材料の多くを輸入に依存しているからだ。この輸入品の「バーチャルウォーター」が膨大なのである。言い換えれば他国の「杓底一残水」まで我が国で消費しているのだ。

◆例えば、輸入される小麦や大豆などの農産物は、生産国で大量の水を消費している。米国産の牛肉や大豆は、水資源が乏しい地域で生産されていることが多く、これらの国では地下水位の低下や河川の流量減少など、深刻な水不足が生じている。いわゆる砂漠化だ。

◆1グラムの牛肉が1リットルのペットボトル約15本という事実とあらゆるところで起こっている砂漠化から目を背けてはならない。

◆「バーチャルウォーター」として見えてきた問題に目を向けること、それは持続可能な未来を築くための必要不可欠なステップなのである。

◆そのヒントが道元禅師の「杓底一残水」の教えにあるのだ。

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耕田院(山形県)

すてき

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