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耕田院の日常(309回目)山形県羽前大山駅

人は執着する心からのがれられないのか」

投稿日:2023年07月03日(月)
「人は執着する心からのがれられないのか」について考えた。2023/6/17輪橋山徒然話

永遠の愛も、平和も、衣食住の快楽も、手に入れたと思ったときから、それを失う怖れという苦が始まります。人は執着から逃れられなくなるのです。(  #瀬戸内寂聴 )

◆しかし、執着を解き放つことができれば、そこには新しい世界が開ける。そんなことを教えてくれる話がある。「おじさんの かさ」。小学校一年生の国語の教材だ。(さの ようこ)

主人公のおじさんは、とってもりっぱな「かさ」をもっていた。
くろくてほそくて、ぴかぴかひかったつえのような「かさ」。

おじさんはあんまり傘を大切にしすぎて、雨の日も傘をささない。
どうしてって。傘が雨に濡れるのがいやだったから。

◆一年生は読むことが大好きだ。例えばこんな音読をする。①の文章をクラス全員、②の「かさがぬれるからです」は代表の子。あるいは、その逆、二人組といろいろの役割分担をする。

① すこしくらいの雨は、ぬれたままあるきました。
② かさが ぬれるからです

① むもうすこしたくさん雨がふると、雨やどりして、雨がやむまでまちました
② かさが ぬれるからです

① いそぐときは、しっかりだいて、はしっていきました
② かさが ぬれるからです

① 雨がやまないときは、「ちょっとしつれい、そこまで入れてください」としらない人のかさに入りました
② かさが ぬれるからです

① ある日、おじさんはこうえんで休んでいました。
② こうえんで休むとき、かさの上に手をのっけて、おじさんはうっとりします

◆たっぷり音読したあと「おじさんのうっとり」について考える。動作化といってかさの上に手をのっけて、一人一人「うっとり」してみるのです。

◆おじさんは、雨のある日、傘を持って雨宿りをしていた。子どもたちは雨の中で傘をさしながら楽しげに歌っていた。そのうたを聞いて、おじさんに心境の変化が起こるのだ。

「あめが ふったら ポンポロロン。
あめが ふったら ピッチャンチャン。」

◆このお話の山場だ。雨が降ったら、ポンポロロンやピッチャンチャンという音が本当に鳴るのだろうか、と。「ほんとうかなあ」と興味をそそられたおじさんは、ついに、大切に閉じていた傘を開き、雨の中を歩き出す。

◆するとどうだろう。

「雨がふったら ポンポロロン……」

おじさんの「りっぱなかさ」に雨があたって、ポンポロロンと音がする

「ほんとうだ、ほんとうだ。雨がふったら ポンポロロンだあ」

おじさんは、しずかにかさをつぼめていうのです。

「ぐっしょりぬれたかさも、いいもんだなあ だいいち、かさらしいじゃないか」

りっぱなかさは、りっぱにぬれていました おじさんはうっとりしました

◆ふとしたきっかけで心持ちが変わる。この話、執着を手放す話とも言えるのではないかと思った。あの話の続編と重なる。

◆あの話とは1ヶ月ほど前の「チーズはどこに消えた?」(スペンサー・ジョンソン)である。続編は『迷路の外には何がある?』である。

◆ちょっとおさらいする。「チーズはどこに消えた?」は二人の小人が突然消えてしまった大好きなチーズに対して、どう対応するかのアプローチが描かれていた。一匹(ホー)は葛藤の末に、全てを捨て新たなチーズを探しに迷路に出発し、もう一匹の(ヘム)はその場に留る。続編は、そのヘムのその後を描く。

◆この続編のスタートは「従来どおりの考え方をしていては新しいチーズは見つからない」絶体絶命の窮地で、ヘムはとうとう迷路に出てチーズを探す決心をする。迷路に出てもいたるところで、ヘムの行動や思考を制限するものがある。それは、ヘムの「従来どおりの考え方の執着」だ。今までうまくいったというやり方、思いを捨てられないのである。「おじさんのかさ」では「かさを開かない」ということ。この物語では「ヘムの信念」という言葉を使っている。

◆「信念」は言い換えると「過去の自分への固執」である。ヘムは、ひとつひとつ「信念」解き放ちながら、成長していくのだ。

◆いつもニコニコ、一筆啓上付箋写経。
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耕田院(山形県)

すてき

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