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耕田院の日常(302回目)山形県羽前大山駅

良寛さんの書の極意

投稿日:2023年06月25日(日)
◆大宇宙と一体化するようなスケールを持ちながら、表現される形はごく静かで小さい静寂美といわれる良寛さんの書について考えた 2023/6/9 輪橋山徒然話

◆上手といえば上手、下手といえばこれほど下手な書はない。しかし、なぜか人を引ききつけて離さない。それが大愚良寛さんの書だという。

◆画家でもあり、陶芸家でもあり、美食家でもあり、書家でもある北大路魯山人は、「良寛様の書」という次の文章を残している。

◆「良寛様の書は質からいっても、外貌からいっても、実に希(まれ)にみるすばらしい良能の美書であって、珍しくも、正しい嘘のない姿である。いわゆる真善美を兼ね備えたものというべきであろう。かような良能の美書の生まれたのは、良寛様その人の人格が勝れて立派であったからである。書には必ず人格が反映しているもので、人格が反映していない人格以上の書の生まれ出ることなど、まずもってあり得ない。」(昭和13年6月「魅力と親しみと美に優れた良寛の書」)

◆先日一冊の本を求めた。

◆「ほっとする 良寛さんの般若心経 加藤 僖一」筆者の加藤 僖一さんは、書の研究者であり、良寛研究で著名な新潟大学名誉教授だ。

◆「ほっとする 良寛さんの般若心経」は三種類の良寛筆の般若心経から、その書き振りからその魅力を伝えている。あわせて、良寛さんの般若心経の写経の一句ごとに易しい説明と良寛さんの詩が添えられている。

◆例えば「菩提薩埵」(ぼだいさつた)のところでは、「菩薩」はさとりを求める者の意味であることと菩提行を教える良寛さんの「心月輪」という長詩の一節が添えられている。これも本書の魅力である。

◆筆者加藤 僖一さんは良寛さんの書とは「並々ならぬ努力を積みながら、そのことを露も表さず、童心と戯れるように認めたところにある」という。そして、見ようによっては間が抜けていてあどけない。それははじめから書法を超越しているからだという。法に入りて、法を出る「守 破 離」の境地だという。

◆天衣無縫、融通無碍の良寛さんの「空中習字」という逸話を紹介している。

◆良寛さんは、朝起きると大空に向かって右手を上げ「一二三 いろは」を書いたとか、千字文を毎日一回書いたとか伝えられています。大空は無限に広く、紙の上に書くように寸法の制限がありません。のびのびと自由におおらかに書くことができます。ツバメが大空を舞うように 蝶が花から花へ旅するように時には鋭く時には穏やかに -略-

良寛の書がリズム感に富むのは、大宇宙のリズムと良寛の心のリズムが一つに響き合うからでしよう。-略-

◆かの夏目漱石は大正5年11月に亡くなる1ヶ月ほど前、上野帝室博物館で開催されていた良寛展で良寛の六曲屏風一双の書を見るなり「ああ。」と感嘆の一言を発し、「これなら頭が下がる」と評したそうだ。

◆さて、「烈しい生と美しい死を」という瀬戸内寂聴さんの書をみた。瀬戸内晴美とあった。出家される前の書なのか。自由闊達、世間を闊歩する、人気作家の書に見えた。

◆いつもニコニコ、一筆啓上付箋写経。
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耕田院(山形県)

すてき

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