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耕田院の日常(221回目)山形県羽前大山駅

割切れないものを割り切れるようにする知恵

投稿日:2023年03月18日(土)
◆「割切れないものを割り切れるようにする知恵は、どこにかにかならずある」という話。

◆アラブに見事に「割切れないものを割り切った話」がある。

◆「私が死んだら、私のラクダの半分は長男に、3分の1は次男に、そして、9分の1を三男にゆずる。」と遺言を残し父は死んだ。
 
◆ところが、父親の所有していたラクダは17頭だったので、どう考えても17頭のラクダを、2分の1、3分の1、9分の1に分けることができないことがわかった。とうとう、3人の兄弟で言い争いまで始まってしまった。

◆そこへ、1人の旅人がラクダに乗ってやってきた。さてこの旅人が、この難問を見事に解決したという。いったい、どんな方法で解決したのだろうか。

◆なんと旅人は「私のラクダを差し上げましょう」と自分乗ってきたラクダを、17頭に足し、合計を18頭としたというのだ。

◆すると18頭の半分の9頭を長男。次男は3分の1の6頭、三男は9分の一の2頭をもらい、みごとにケンカは丸くおさまった。さて、9+6+2=17. あれ!! 1頭余る。
「よしよし。では、最後に残った一頭は、わしがもらって行こう。」と、自分の乗ってきたラクダに乗って、去っていったそうだ。

◆なぜだろう。

本来3人の分け前の割合を全部足してみると了解する。
1/2+1/3+1/9=17/18
そうなのだ。1にはならないのだ。つまり、遺言は1/18足りないということを見通した遺言なのだ。旅人は1頭足して18頭で考えればよいと気がついていたのだ。

◆似た話が日本にもある。

大岡越前の名さばきの「三方一両損」。

◆左官の金太郎は、三両の金が入った財布を拾い、一緒にあった書付を見て持ち主に返そうとする。財布の持ち主はすぐに大工の吉五郎だとわかるが、江戸っ子である吉五郎はもはや諦めていたものだから金は受け取らないと言い張る。しかし、金太郎もまた江戸っ子であり、是が非でも吉五郎に返すと言って聞かない。

「江戸っ子の生まれぞこない金を貯め」
「そりゃーもっとは俺のお金だった。一旦懐から飛び出したんだ二度と敷居をまたがせね
えんだ 」

◆互いに大金を押し付け合うという奇妙な争いは、ついに奉行所に持ち込まれ、名高い大岡越前が裁くこととなった。

◆双方の言い分を聞いた越前は、どちらの言い分にも一理あると認める。その上で、自らの1両を加えて4両とし、2両ずつ金太郎と吉五郎に分け与える裁定を下す。金太郎は3両拾ったのに2両しかもらえず1両損、吉五郎は3両落としたのに2両しか返ってこず1両損、そして大岡越前は裁定のため1両失ったので三方一両損として双方を納得させた。

◆大岡裁きは身銭を切って、双方の心意気を立て、丸く収めている。実に清々しいではないか。

◆さて、新約聖書には 「金持ちが神の国に入るより、ラクダが針の穴を通る方が易しい」という言葉があるそうだが、最近のわが国は、お金を全面に出し過ぎな気がしている。

◆先日のロケット打ち上げ失敗では、2000億の損失だの、コスト、コストとSNSで騒がしかったという。もともとは「金金金」と大ぴらにいわないのも、日本人のよさではなかったのかと思うのだが。

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