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耕田院の日常(197回目)山形県羽前大山駅

誘惑 その1

投稿日:2023年02月22日(水)
今朝の輪橋山徒然話は「誘惑」。

◆こんな話だ。

◆むかし、あるところに老婆がいた。老婆は一人の禅僧に庵(いおり)を建て、衣食を送り、修業を資(た)すけた。それを二十年間もの間続けた。

◆ある日、老婆は思った。
もうかれこれ、二十年間も経つ。さぞかしあの禅僧もかなりの修業を積んだことであろうと。

◆それでは、一つ試してみようと老婆は考えた。

◆老婆がどんなメンタルテストをしたかと言うと、まず、自分の腰元の中でも、年頃で一番美人の女を選び、そして、何やらそっと命令をいいつけ、かの禅僧の修業している庵室へ行かせたのだ。

◆「何やらそっと命令?」ひょっとして、「色じかけ!!」まさかの「誘惑」か。

◆若い腰元が庵室を覗いて見ると、かの僧は、室の中央に静かに坐禅を組んでいた。そこへずかずかと寄って行って、彼女は、いきなり禅僧にもたれかかり、「あなた、こうして、どんな気持ち」と言った。

◆さて、皆様、20年修行した禅僧はどのような返事をしただろうか。

①  受け入れた
②  きっぱりと断った

◆禅僧は次のような返答をした。

禅僧は、顔色一つ動かさず、「枯木寒巌に倚(よ)る、三冬暖気無し」と返答した。

この返答は「まるで枯木が冷え切った岩に倚りかかったようなものさ、寒の真最中吹きさらしの気持ちだ」という意味になる。

◆受け入れてしまったら大変なことになる。

◆若い腰元は、老婆のところへ戻って行き、禅僧の一部始終を報告した。

◆さて、第二問だ。老婆は、禅僧の返答をどう思ったろう。

①  修行の成果を褒めた
②  自分の20年を後悔した。

◆さて、老婆のとった行動は次の通りだ。

報告を受けた老婆は禅僧の謹厳(きんげん)な様子に、感心するとの思いのほか、老婆は大変怒り「俗物の僧を永らく優待していた。わたしは見込み違いをしていた」と言って、その僧を追い出し、住まわしていた庵室まで穢(けが)らわしいと言って焼き払ったのだ。

◆謹厳とは、つつしみ深く、軽々しい行いをせず、まじめという意味であるが、そんな禅僧に対する老婆の激怒はすざまじい。老婆は後悔しただけではない。「穢(けが)らわしい」とまで言って、庵室を焼き払い、禅僧を追い出したのだ。

◆この話は、「婆子焼庵(ばししょうあん)」(禅の本で五燈会元というのに書いてある老婆が庵を焼く話)という題で、禅の公案だ。禅の公案とは、禅宗の師匠が弟子に与えて修業させる試験の宿題のようなものである。

◆なぜ老婆は、戒律を守り、謹厳な僧の態度を俗物と罵ったのだろうか。→明日に続く。

※岡本かの子さんの「仏教人生読本」からです。読みやすくしてあります。岡本かの子さんは、大阪万国博覧会の「太陽の塔」の作者で、「芸術は爆発だ!」の芸術家・岡本太郎さんの母親であり、小説家、仏教研究者です。

◆いつもニコニコ怒りません。「オンニコニコハラタテマイゾヤソワカ」は、自分もまわりも明るく・仲良く・イキイキと導くおまじない。
耕田院(山形県)

すてき

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