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耕田院の日常(27回目)山形県羽前大山駅

「女神の代受苦」 2022/5/27「朝4時半の住職の話」

投稿日:2022年08月28日(日)
◆家人が倒れたことがある。16.7年前のことだ。

◆真冬だった。近くの病院では手術が無理で、ヘリで大学病院まで飛んだ。月山超えではなく最上川を沿って上っていった。下は猛吹雪だが、上は真っ青な空が広がっていた。病院近くの陸上競技場の真っ白いグランドに着陸マークがあった。自衛隊の方々が人力でつけてくれたのだろう。

◆病院までの4車線道路は、除雪が間に合わず2車線。雪国でも珍しい大雪の月曜日。そこを救急車は逆走した。救急の入り口には何人ものお医者さんと看護師さん。テレビドラマと同じだった。

◆運良く春には、お寺に戻ることができた。しばらくして、家人は寺にある「黒い木像」の傷が一本増えているとつぶやいた。胸のところに上から下に一本。

◆異国の香りがする「黒い木像」にも、きっと数奇な運命があったのだろう。わかっていることは、船のりだった家人の親族が、自分の生まれた町に寄贈したものだということ。そして、ずっと町役場に飾られていたこと。しかし、町村合併で町が消滅し、どういういきさつか、結局私のお寺にあることだ。

◆知人の見立ては、外国船の船首につける女神のだという。船の守り神だ。そのお顔立ちは、たぶん南米風だ。

◆私は、家人の「傷が一本増えている」のつぶやきに、はっとした。その女神の傷は、菩薩の大慈悲心であられると思ったからだ。「代受苦(だいじゅく)」である。

◆お地蔵様の御誓願に「代受苦(だいじゅく)」の誓いがある。己が他者の苦しみを代わって受け、救いに導くということだ。自らに傷をつけ、苦しみをやわらげ、命を救ったのがこの女神の仏心、代受苦なのだ。さすれば、南の国の女神の像は、家人の痛みを和らげて、命を助けてくださった有難い仏さまなのでもある。

◆あの時は、お世話になっているお坊さまは、入院中、毎朝、お堂に籠りご祈祷してくださった。クラスの子どもたちは千羽鶴をいくつも作って届けてくれた。今、拝んでも、女神の傷に、目に見えないたくさんの祈りと願いを感じる。全てがこの一本の傷につながったのだ。有難いことだ。

◆女神の傷の一つひとつに拝んだ人、願った人の心があるのだ。人生があるということだ。

耕田院(山形県)

すてき

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