仙波町大釜の夏保沢を登っていくと、沢水の流れる傍らに常盤御前の墓といわれる五輪塔がある。
あまりの活躍から、源義経は兄の頼朝に疎まれ追われる身となり、奥州藤原氏を辿り平泉に落ち延びた。
義経の母の常盤御前は、源氏の統領であった源義朝の愛妾となったが、義朝の死後は苦難な道をあゆみ、藤原長成と結婚した。
常盤御前は奥州に落ちのびた義経を追って、夫長成と娘婿である有綱とともに三人で奥州へ向かった。人目を避けるために裏街道である出流路を通るため大釜の道を選んだ。
道は険しく、荷を運んできた白馬が足を滑らせ沢に落ち、荷物を全て失くしまった。
三人は力を落とし、長成も常盤御前も体は弱り、やむなく大釜の人々の世話になり当地に落ち着いたが、最後まで「義経に会いたい。義経に会いたい。」と言いながら、ついにこの地で息を引き取ってしまう。
常盤御前が亡くなってから、有綱は一人奥州に向かったが、こちらも風の便りに途中で亡くなってしまったという。
大釜の人々はこの出来事を悲しみ、五輪塔を二基建てて供養し、家来の有綱と白馬のために有綱大明神を建て白馬の彫刻をご神体として祀った。
今でも大釜の地には、常盤御前に由来する「お花畑」「殿畑」「馬場」といった地名が残されている。
五輪塔は、当初は常磐御前のものと藤原長成のものの二基あったが、風雨に流され今では一基のみが祀られている。
常磐御前がなぜこのような山道を知っていたのか？　それは義経の父源義朝が下野国の役人をしていたことがあるためではないかと云われる。
常磐御前は過去にもこの地を訪れたことがあり、その際、病気になった子どもの看病の際、土地の者の紹介で牧の不動様に祈願し、回復したお礼に茶釜をこの地に置いていったそうで、これが「大釜」の由来であり、その茶釜は今でも大切にされている。

奥州平泉に落ちた源義経を追って、この地まで来て果てた常磐御前の墓所と伝わる。

不詳　鎌倉時代？

大釜の人々