唐澤山神社のお参りの記録(1回目)
栃木県吉水駅

栃木県佐野市、唐沢山の峰に、静かに威容を誇る唐澤山神社。標高二百四十二メートル、ここはかつて、平安の名将・藤原秀郷が築いた唐沢山城の本丸跡にあたります。幾重もの石垣に守られたこの山城は「関東七名城」のひとつと讃えられ、難攻不落の名を馳せました。

藤原秀郷は、平将門の乱を鎮め、国の安寧を守った武勇の士。その功績を後世に伝えるため、明治十六年、旧佐野氏の旧臣らがこの地に社を創建しました。明治二十三年には別格官幣社に列せられ、社殿、中門、神橋、神楽殿が整えられます。匠の技が凝縮された社殿には、日光東照宮の修繕を担った職人たちの精緻な意匠が息づいています。

参道を進めば、往時の息吹をそっと囁きかけます。山肌を渡る風は、幾百年の物語を運び、参拝者の胸奥に静かな緊張を宿します。晴天の日、山頂から望む佐野の展望はとても気持ちがいい。

唐澤山神社は、ただ祈りを捧げる場にとどまらず、武士の矜持と時代の記憶を伝える聖地です。社頭で深く一礼したとき、山上の静謐と秀郷公の不屈の魂が、そっと背を押してくれるように感じられました。