酒田神社のお参りの記録(1回目)
神奈川県開成駅

酒田神社は、神奈川県足柄上郡開成町延沢に鎮座する古社です。最寄り駅は小田急線開成駅で、そこから徒歩およそ30分ほど。東京への通勤圏内を思わせる住宅街が広がるのどかな風景の中に静かに佇んでいます。訪れた際、境内には由緒書の掲示は見当たりませんでしたが、神奈川県神社庁の公式サイトによると、かつては「諏訪社」とも呼ばれていたようで、そのことから諏訪神社の系統に連なる社であることがうかがえます。

同じく神社庁の記載によれば、御祭神は実に多く、伊弉諾命、吉備津彦命、大物主命、誉田別命、建御名方命、事代主命、日本武尊、大山祇命、天照皇大神、倉稲魂命、菅原道真の十一柱。いずれも日本神話や歴史において重要な役割を担う神々であり、この地が多方面からの信仰を集めてきたことが伝わります。これほど多くの御祭神を祀る神社は地域でも珍しく、村の安寧、五穀豊穣、学業成就、商売繁盛など、さまざまな祈願が込められてきたのでしょう。

境内は広々とした開放感に包まれています。社殿の背後には高木が立ち並び、風にそよぐ枝葉の音が穏やかに響きます。密生しすぎず、適度に陽光を通す木立の配置が心地よく、昼下がりには木漏れ日が社殿の屋根や石畳をやさしく照らしていました。その景観が、静謐ながらも温もりを感じさせる空間を作り出しています。

また、境内には慰霊碑が建立されており、かつてこの地にあった酒田村の出身者85柱の御霊が祀られています。碑の存在からも、この地が「酒田村」として歩んできた歴史の重みが感じられます。神社の名にもその名残が受け継がれており、地域の人々の記憶とともに今も静かに息づいている神社です。