函館厳島神社のお参りの記録(1回目)
北海道函館どつく前駅

北海道函館市弁天町に鎮座する厳島神社。最寄りは函館市電「函館どつく前」停留所で、そこから徒歩2分ほどという至近距離にあります。市電の旅を楽しんだ後、その終点に降り立つと、すぐそばに鳥居と社殿が姿を現します。市電本線の完乗を終えた直後の参拝であったため、達成感とともに、旅路の締めくくりをこの厳島神社で迎えることができました。路面電車の終点と「厳島」という社名が重なることで、自然と勧請元である安芸の宮島・厳島神社を思い起こさせるのも印象的です。

御祭神は市杵島姫命。創建は宝暦3年と伝えられ、函館がまだ松前藩の支配下にあった時代にさかのぼります。由緒によれば、安芸の宮島厳島神社から御分霊を勧請し、以来この地に鎮座してきました。境内の由緒書には「古い建造物が多い」との記載が見られますが、それは単に社殿や建築物のことだけでなく、函館という港町の歴史そのものとも深く結びついているように思えます。創建以来、津軽海峡を渡ってやって来た商人や船乗りたちが、この社を篤く信仰し、航海の安全や商売繁盛を祈り続けてきたのでしょう。

境内に立つと、背後には函館山の雄姿が控え、前方へと目を向ければ海がすぐそこにあることがよくわかります。海沿いを走る路面電車とほぼ同じ高さに位置しており、参拝者の立つ場所もまた、海と陸とを結ぶ結節点のような雰囲気を漂わせています。かつてここを訪れた人々は、海風を受けながら参拝し、遥か本州から持ち込まれた文化や信仰をこの地に根付かせたことでしょう。なお、神社の鎮座する弁天町という地名もまた、当社に祀られる弁財天に由来すると考えられます。

函館は異国情緒漂う街として知られていますが、その背景には、こうした小さな社が積み重ねてきた信仰の歴史が息づいています。華やかな観光地の陰で、地域の人々の暮らしとともに歩んできた厳島神社は、今なおその静かな佇まいを保ちながら、参拝する人々を温かく迎え入れてくれます。今回の参拝は、単なる一社へのお参りにとどまらず、函館という街の成り立ちや文化を改めて感じ取るひとときとなりました。