瘡守稲荷神社／宮地嶽神社

福岡県 小倉駅

寛永の頃、小倉城主小笠原侯に仕える真砂政次郎と言う武士が、主君に従って江戸に滞在するうちに、花柳街に遊び瘡疾（性病）を患いました。
当時の医薬では効果少なく、友人の勧めで江戸南方の瘡毒に霊験新といわれる瘡守稲荷神社に詣で、平癒を祈願しました。その時政次郎は、「速やかに癒えしめ給わば、帰郷して祠を建て、厚く敬ひ奉らむ」と誓詞を捧げました。その甲斐あって、幾許もなく病癒え、壮健の身となって帰郷することが出来ました。
しかし、帰郷した政次郎は、多忙に取紛れて一年余も誓詞のことを忘れていました。すると、ある梅雨の夜、夢心地のうちに門前に騎馬の音が聞こえ、更に「汝は、江戸にて瘡の癒えたるを忘れたりや」との叱責の声を聞きました。
政次郎は大いに悔い、急ぎ神恩に報いるために、家人、親族の協力を得て、博労町（現在のこの地）に在った宝典寺別院の大日堂境内に祠を建て、寛永十四年（1638）五月十五日鎮座の祭典を挙げました。これがこの神社の起りです。
以来、小倉に疱瘡等の疫病が流行する度に、霊剣著しく、城主も深く感激して、小倉家の定紋（三階菱）つきの幕と提灯並に石灯篭を寄進されたといいます。
その後、昭和の時代に至って、老朽した祠を改築することになり、信徒総代安倍寛は講社一同を相計り、昭和三十四年に新しい社殿を建立しました。その折、近傍に在った宮地ごく神社の祠も荒廃していましたので、その祭神を新神殿に遷し、相殿祭神として崇敬を加えることになりました。
昭和六十三年十二月、この地を北九州市の表玄関として整備するために再開発事業が起り、施行者の小倉駅前東地区市街地再開発組合と再開発ビルの各店舗株式会社小倉そごうは、神社講社代表と協議を重ねた結果、再開発ビルの屋上に遷都奉り、今後は地域の鎮守として、またこのビルの安全と小倉そごうを始めとする営業車の商売繁盛の守護神としてあがめることになりました。遷都の期日は平成五年十一月一日です。
なお、この神社には軍荼利明王の神像が合祀されていましたので遷都の際、境内に別祠を建て、神社の守護として祀りました。