渋谷のオアシス金王八幡宮〜田所宮司に聞く、神様との付き合い方〜
渋谷駅周辺の氏神様・金王八幡宮にお仕えしながら、地元茨城県の酒門神社の宮司を務める田所さんにお話を伺いました。
「神社の境内は人が集まるところ」と考え、
お昼休みに境内でくつろぐ方々にベンチを提供したり、お祭りの時にはジャズの演奏も企画している田所さん。
地元の神社への想い、ご利益や神様との向き合い方についても語っていただきました。
村上 太郎
神社お寺を知ってもらうため、100年後も読まれる記事を目指しています。毎朝の坐禅が日課。
人が集まると神様が喜ぶ 渋谷のオアシス 金王八幡宮
ベンチもあります。境内でランチはいかが?
金王八幡宮には境内のベンチでランチをしている方が多いですね。
都会で心休まる場所がないからでしょうか、金王八幡宮には昔からよく人が集まりました。昔はジュースを飲んだり、タバコを吸ったりしている人が多かったですね。
そのうちに今度はお弁当を持って食べに来る人が増えました。会社のデスクから気分転換に訪れるようです。最初はお弁当を食べる方のために敷きものを用意しました。その後、人数が増えたのでベンチを置きました。
ランチに来る人たちは心を癒しに神社へ来ています。落ち着く場所が渋谷にないのなら、金王八幡宮がそういう場所になってもいいな、と思いました。
ただ、神様に失礼な方もいます。たとえばご社殿の石段に座って、神様にお尻を向けながら食事を取るのはマナー違反です。だからベンチを置いて、「ここではランチがOKですよ」というところを作ったのです。
禁止してしまうことは簡単です。それよりも「どうしたら神社がもっと良くなるか」を大切に考えています。
こうやって、神様を大切にしながら少しずつ変化を重ねて、長い間神社は続いてきました。
神様も人も一緒に楽しむ広場
大切なものを守りながらも変わり続けるのが、神社らしさですね。
金王八幡宮の神楽殿(かぐらでん ※注1)では、神楽以外の演奏会も楽しめると聞きました。
神楽殿では神楽に限らず、ジャズ演奏や漫才も披露されています。神楽殿は“神様が楽しい”と書きますが、「今の世の中で、神様と私たちが一緒に楽しめるものがないだろうか」と考えたことがきっかけです。
金王八幡宮の神楽殿は「面白殿(おもしろでん)」という名前がついています。「面白殿」と書かれた江戸時代の額が残っていたのですが、震災直後の耐震工事の時に神楽殿にかけ直しました。
当時は震災直後で、世の中が沈んでいたので、目の前がパッと明るくなる、「面白」な世の中になってほしいと思ったものです。
神社っていうのは境内が広場になっていますよね。私はこれを「人が集まるため」だと考えています。神社には人がたくさん集まる場所があり、人が集まると神様が喜ばれるのだろう、思っています。
『神人和楽(しんじんわらく)』という言葉がありますが、神様も人も楽しく和める神社にしたいですね。
お祭りとお葬式、どっちが大事?
氏子さんが大活躍!地元の神社のあり方
今までは金王八幡宮のお話を伺いました。
ご実家である酒門(さかど)神社はどんな神社なんでしょうか。
私の実家の酒門神社は、茨城県水戸市にある小さな神社です。私の家は代々酒門神社の宮司を勤めてきました。
宮司(宮司)として、ずっと酒門神社で神様のお守りをしたいという想いもありますが、今は一年の半分くらいを酒門神社でお仕えしています。
最近では地方の小さな神社は運営が大変だと聞いています。
兼務という形をとっているのもそのためなんですか?
そうなんです。酒門神社を引き継ぐ時にも、財政的な問題がありました。
これから先の運営方針を氏子(うじこ)(注2)さんと話す中で、「酒門神社につきっきりというのは難しい。大きな神社にお仕えしながら、こちらの神社もお守りをしていきたい」ということを伝えました。
神社の財政は氏子さんも理解してくれていましたし、兼務のかたちで継ぐことになりました。
最初は不安でしたが、氏子さん達の活動が活発になり、それまで以上に神社の運営を支えていただけるようになりました。普段から神社のお掃除などもしてもらっています。
お祭りの時も、何から何までほとんど用意してもらいます。私はお祭りの前日最終確認をするくらいで、すぐに「さあ、お祭りをやりましょう」となるんです。氏子さんが直接神様に奉仕してくださる、ありがたいことですよ。
「お祭りを優先したい」 氏子さんの熱い想い
時代の中で神社と氏子さんとの関わり方が変わってきたこともあるのではないでしょうか。
地方の神職と話をしていて、最近は氏子さんが「簡素化」という言葉を使い「年間の祭事を続けるのは大変だから省略しよう」と言うことがある、という話題になりました。
たとえば、お祭りのあとには直会(なおらい)といって、お食事会をしますが、最近では炊き出しをして、多くの人を集める余裕がなくなってきました。すると、「じゃあ、お弁当をとってやろう」という話になったりします。
今の時代はこうやって、縮小しながらもどうにか神社をつないでいこうと考えていくのは良いのですが、自分たち現代人は、伝統的な神様(神社)の質素な生活に比べて、毎日、盆と正月が一緒に来たような生活を送っています。
祭りの数を減らそうとか、直会をやめようとか言う前に、簡素化するのはまずは自分たちでは?と思います。
そんな中でも氏子さんの熱意を感じることも多いです。ある若い氏子さんなのですが、お祭りの時に、「みなさん葬式の時には休むのに、何百年も前から決まっているお祭りの日が休めないなんてどういうことなんだ」と言っていました。
一日休んで地元のためのお祭りに参加することがどうしてできないのか、お祭りもお葬式も大切だよね、と。
私は会社に勤めている人は大変だから、お祭りのためにお休みを取らなくてもいいよと思っていたんです。その時は逆に教えられましたよね。衝撃を受けました。
知らなかった!地元の神様のご利益
見方によって違う、神様のいろいろな顔
お参りするときってどんなお願いごとをしてもいいんでしょうか?
金王八幡宮には、いろいろな方がお参りに来ます。毎朝お参りに来る方もいます。「おはようございます」と言いに来ているのかもしれません。学生の方なら「今度の試験でいい点が取れますように」というお願いかもしれません。何をお願いするかということは自由です。
少し話が変わりますが、神様という目に見える大きな存在があったとしますね。たとえばその大きな神様を、右から拝んでいる時は恋愛の神様で、左から拝んでいる時は商売の神様、というのが私の考える神様のあり方なんです。
さらに別の角度から、健康の神様を拝んでいる人もいる。私たちは、一つの大きな神様という存在を、さまざまな角度から拝んでいるのだと思います。
それぞれの神様は、一つの大きな存在として通じ合っているんです。
本質は一緒だけれど見ている角度が違う、ということですね。
日本の神道らしい考え方だと思います。
だから、金王八幡宮は、戦が起こっているときには武運の神様でしたが、縁結びをお願いしても叶います。天神様は学問の神様と言われますが、商売繁盛を願ったって通じるんです。
地元の神様に素直に向かってください
私は、ご利益をもとめて方々の神社へ行くのではなく、まずは普段からのお参りを通じて、地元の神様を大切にしてほしいと思います。地元の神社は、人々が長い間お祈りを捧げて、ご利益をいただいてきた実蹟として、今に残っている場所です。
そうなんですね。お参りについての考え方が変わりました。
最近はインターネットで専門的なことまで詳しく調べてから参拝に来る方もいます。そうすると堅苦しくなってしまうんじゃないの、と私は思うんです。きちんとお参りする姿勢というのも重要なんだけれども、それでは神道のおおらかさがなくなってしまいます。
一番大切なのは参拝する方の気持ちです。素直に神様に向かってください。いい作法というのもあるのですが、それよりも心持ちを大切に参拝してほしいと思います。
あとは、お参りができたということに感謝をする気持ちが大切です。健康じゃないとお参りに行けません。加えて、自分が精進することです。そういう人を神様は見捨てないですよ。
インタビューの日は雨の中、いっそう金王八幡宮が美しかったです。最近、地元の神社に行っていないなあ、と思ったあなた、これをきっかけにお参りをしてみませんか。ホトカミではたくさんの投稿をお待ちしています。
金王八幡宮の情報
住所:東京都渋谷区渋谷3丁目5番12号
最寄り駅:渋谷駅(JR・東京メトロ・東急・京王
アクセス:最寄り駅から徒歩5分
駐車場:なし
電話番号:03-3407-1811
FAX:03-3409-1043
ホームページ:http://www.geocities.jp/ynycr674/
御祭神:応神天皇
創建時期:1092年
御朱印:有り
拝観料:無し
酒門神社の情報
住所:茨城県水戸市酒門町92最寄り駅:JR東水戸駅
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