始めるコツは「面白がること!?」お寺がインターネット使っていいのか聞いてみた【難波別院インタビュー】
あなたはお寺に対してどんなイメージを持っていますか?
お墓まいりに行く、お線香の匂いがして、古いものがたくさんある、などといったイメージでしょうか。
また、お坊さんの仕事といえば、お葬式やお墓などでお経を唱えたり、アニメの一休さんみたいに竹ぼうきをもってお寺を掃除したりというイメージがありますよね。
しかし現代には、イメージどおりのお坊さんの仕事だけではなく、パソコンを使って仕事をするお坊さんもいます!
そんな現代的なお坊さんが集まるお寺は、大阪の中心にある真宗大谷派のお寺、難波別院(なんばべついん)です。
難波別院では、最新のITを駆使してお寺の仕事をしています。
ITとは、Information Technology(情報技術)の略です。
あなたはこの記事をパソコンで読んでいますか?
スマートフォンで読んでいますか?
こうして、あなたがこのインタビュー記事を読むことができるのも、まさにITの恩恵のひとつです。
それではいったい、お寺でどうやってITを駆使してるのでしょうか?
今回は、パソコンを使いこなし、プログラミングやデザインなどを自分たちでやってしまうというハイテクなお坊さんたちが集う難波別院のみなさんにお話を伺いました。
現代で活躍するお坊さんは、なぜITを学んだのか?
どのように、ITのスキルをお寺の仕事に活かしているのか?
ITを導入する最初の一歩目の不安を、どうやって解消したら良いのか?
この記事では、こんな内容をお届けします。
まずは、難波別院のみなさんの紹介をします
難波別院のみなさんの紹介
吉田 亮
1990年岐阜生まれ。東京大学文学部卒。
在学中から「日本の文化や歴史を現代に生かし、未来に繋げたい」と神社ツアーや塾の運営など行う。
横井 郷
愛知県出身の仏教系大学生。一般家庭出身だがさまざまなご縁により仏教に興味を持ち、
あらゆる視点から仏教の可能性を追求している。
好きな仏さまは蔵王権現(ざおうごんげん)。
- お寺のゆるキャラグッズをデザイン
- お寺の新聞も自分たちで作れます!
- 納骨壇のデータベース管理も自作のプログラムで
- ホームページ作成から広がる「お寺×IT」
- IT導入のコツは「面白がること」
- インタビュー記事を執筆して
- 難波別院の情報
目次
お寺のゆるキャラグッズをデザイン
上本さんはブットンくんグッズをデザインされているそうですね。とても可愛くて、ブットンくんへの愛が伝わってきます。どういった経緯でデザインされるようになったんですか?
もともと、私が所属している部署でブットンくんグッズを販売していたのですが、はじめは業者さんに外注していました。
そもそも、私はデザインに関わる仕事を志望していました。それを知った上司が、
AdobeのIllustratorというデザインができるソフトについて学ぶきっかけをつくってくれました。
そこから自分でイラストを描き、今では業者さんに頼らず、ブットンくんグッズを自分たちでデザインし、販売しています。
すごいですね。これ全部ですか?
ここにあるグッズは全部、私がデザインしました。
実際にデザインを手がけていて、どうですか?
本当にやりがいのある仕事をしていると感じます。
もともとデザインの仕事に就きたいと思っていた私が、難波別院に就職して1年目からブットンくんのデザインの仕事を任せてもらいました。
一度は諦めていた自分の夢をかなえることができました。
それは、すてきですね。仕事とブットンくんへの想いがデザインからも伝わってきます。
お寺の新聞も自分たちで作れます!
上場さんは、新聞の発行に関わってらっしゃるそうですね。 原稿を書くだけでなく、編集などもやってらっしゃるんですか?
私は新聞編集部で、南御堂(みなみみどう)という新聞の原稿を執筆するだけでなく、編集もしています。
原稿のデザインや配置などの編集には、AdobeのInDesignというソフトを使っています。
私が原稿の中身から、デザインまですべてのデータを編集しているので、業者さんには印刷してもらうだけです。
しかし、以前はデザインするスキルがなかったため、既存の新聞で使われてきた枠のなかでしか表現することができませんでした。なかなか思うようにいかなかったことも多いですね。
自分でデザインできるようになって、6年ほど経ちました。 実は、20年前にIllustrator(イラストレーター)というデザインソフトを導入した人が、竹中さんなんです。
20年も昔からIllustratorを導入ですか?
(竹中さん)
そうですね。
当時はまだ、文章を編集するWord(ワード)も普及していなかった時代です。一般的には、まだパソコンを使わずに文章を編集していました。
今から20年前、Mac(iPhoneなどをつくっているApple製のパソコン)に出会いました。そして、当時はかなり高価だったIllustratorを購入しました。そしたら、今まで難しくてできなかった仕事がパソコン上で、簡単にできてしまいました。
驚きましたね!
これは絶対、うまくいく!と思い、他の人にも勧めてみたのですが、
「なんでそんな高いもん買わなあかんねん」と言われてしまいました。
まだまだパソコンで仕事をするというのが珍しい時代ですもんね。
はじめは怒られてしまったのですが、自分が買ったものを見せて「こんなことができます!」と伝えるうちに、そこまで言うなら買ってもいいよ、ということで難波別院でもデザインソフトを導入することになりました。
それ以来、30人近くの職員ほぼ全員がIllustratorを使っています。これがないと仕事ができないほど、使いこなしていますね。
以前は、新聞だけでなく冊子なども、業者さんに頼んでつくっていました。今では、こちらでデザインはすべてつくれるようになったので、業者さんには印刷だけお願いしています。
それによって、もちろん経費も削減できますし、自分たちがつくりたいものをつくれるようになりましたね。
納骨壇のデータベース管理も自作のプログラムで
大江さんは、どんなお仕事をなさっているのですか?
一般の方が描くお坊さんのイメージのように、10年ほど、お経を読んでお参りしていました。
現在は、プログラミング(※1)をして、難波別院の納骨壇(のうこつだん/※2)の管理システムをつくっています。
※1 プログラミング:コンピュータがどう動くかを記述すること。
※2 納骨壇:故人のお骨を収納する屋内のお墓。
納骨壇の管理システムまで作ってらっしゃるんですか!まるでプロのプログラマーみたいですね。もともとプログラミングが得意だったんですか?
いえ、はじめは本当にパソコン初心者でした。大学時代はパソコンも持っておらず、社会人になって初めてノートパソコンを持つようになったほどです。
こんなにパソコンを使って仕事をするようになるとは、全く思っていませんでした。
納骨壇の管理システムでは、檀家さんの大切なデータをすべて管理しています。
もとのデータベースは、竹中さんがつくったものでした。
しかし、竹中さんが難波別院にいないときは、誰もデータベースの中身をいじれる人がいません。
そこで、私が初心者向けのプログラミング講座に通って学び、竹中さんがつくったシステムをもとに新しいシステムをつくりました。
今では、納骨壇の管理システムだけでなく、書籍やグッズ販売のデータベースも自分でつくっています。
竹中さんはプログラマーを育てようと思っていらっしゃったのですか?
(竹中さん)
ITの専門の業者さんでお寺にも詳しい方に偶然出会い、プログラミング教育をして欲しいとお願いしました。当初は100万円を超えるくらいの見積もりだったのですが、結局70万円で請け負っていただきました。
納骨壇の管理システムを外注すると、700万ほどかかるんですよね。
70万の教育費で、700万の管理システムがつくれたわけですから、良かったなと思います。
大江さんは、実際にプログラミングをしていてどうですか?やはり大変なことも多いのでしょうか?
(大江さん)
もちろん、何回も何回もつまづきがありました。
けど、実際にシステムを使ってもらうなかで、意見を聞いて試行錯誤を繰り返し、今のように使いやすいシステムになっていきました。
みんなが使い、このシステム無しには仕事が回らないくらい便利なものをつくりたいと思っていたので、やりがいもあって仕事は楽しいです。
まさに、ホトカミと同じですね。私たちも、ユーザーさんに使っていただいて、たくさんの声を聞いて、改善を繰り返しています。やはり、便利だと多くの方に使ってもらえて嬉しいですし、意見をもらえるとやりがいも感じられて、楽しいですよね。
ホームページ作成から広がる「お寺×IT」
真宗大谷派にもたくさんのお寺があります。難波別院にとどまらず、他のお寺にもIT導入を広げていこうという動きはありますか?
私は「現代において、ネット上に情報がないお寺は存在しないのと同じ」だと思っています。
だから、難波別院もホームページを持っています。
難波別院 公式HP
少し前まではホームページをつくるのも業者さんに頼んでいました。
けど、ホームページ作成の初期費用が200万円、それに加えて毎月8万円の維持費がかかっていました。
この費用を無くすために、今では自分たちでホームページを作り、運営しています。
また、真宗大谷派の大阪のお寺の繋がりで、お坊さん向けのホームページ作成の勉強会を開いてみました。
ホームページ作成の勉強会ってなると、マジメに一生懸命やるというイメージがあるかもしれません。
けど、「なんで、動かへんねん!」とかパソコンに向かって文句をいいながらも、みんな楽しんで参加しています。
難波別院さんだけでなく、少しずつIT導入の輪が広がりつつあるんですね!
IT導入のコツは「面白がること」
ITやインターネットを活用したいけど、なかなか始めることができないというお寺の方も、多いのではないかと思います。そんな方たちに、どんなことをお伝えしたいですか?
たしかにITを導入したり、インターネットを活用してみたいと思っているお寺さんは多いと思うんですよね。けど、今までのやり方も変えなきゃいけなかったり、なかなか一歩目を踏み出すのは勇気がいるんですよね。
私の場合、実際にチャレンジしてみると、そこから可能性が大きく広がりました。
だから、一歩踏み出す勇気は大切だと思います。
宗教っていう言葉に抵抗がある方は多いかもしれません。
しかし、私はブットンくんというキャラクターのデザインを通じて、一般の人たちが仏教に興味を持ってもらえるきっかけをつくれたらなと思っています。
データベースをつくるときに「仕組みを先に作ることはできない」ということを教わりました。
やはり、大前提としてITで置き換えることができない大切な部分があり、そこを便利にするために仕組みを作ります。
ITを活用していたからこそ、ITで置き換えることができない部分の大切さに気づきました。
いきなりITを活用しようと思っても、なかなか難しいですよね。 ITを活用したからといって急にうまくいくことは、なかなかありません。
けど、だからといって一歩踏み出せない人には、
「面白がって、やってみてください」ということをお伝えしたいですね。
面白いと思えないという方は、まわりに面白がっている人を探してみてください。
面白いという気持ちは、伝染します。
つまらないという気持ちも伝染しますが、面白いという気持ちも伝染するんですね。
だから、ITの活用に迷ってらっしゃるお寺の方は、まずは面白がってみることが大事だと思いますね。
なるほど!すぐにうまくいくかどうかを気にするよりも、「面白がる」という心構えが大切ということですね。確かにインターネットが普及したのには、もちろん便利だからという側面もありますが、世界中の人たちが面白がって使っているから、ここまで普及してるのかな、なんて思いました。
面白がって、ITを導入するお寺やお坊さん、神社の方が増えたら嬉しいですね。
難波別院の皆様、貴重なお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。
インタビュー記事を執筆して
(横井)
仏教に関わってきた私ですが、難波別院のようなIT化を進めるお寺の在り方は初めて知りました。
難波別院のお話を聞くまで、ホームページ制作などは専門の業者がやるものだと思っていました。
だからこそお坊さんたちがお寺で、ITを活かし、グッズのデザインやホームページ作成、さらには納骨壇のデータベースまでつくっていると知り、
「そんなことできるのか、このお寺すごいぞ!」と驚きました。
難波別院のみなさんも、もともと専門家ではなく、普通の人と同じようにITに関しては初心者でした。
私も初めてホームページをつくろうとしたとき、なかなかうまくいきませんでした。
しかし、実際に教えてもらいながらやってみると、実家の墓石会社のホームページをつくることができました。
「自分でもできるんだ!」という発見が、嬉しかったです。
インタビューのなかで竹中さんは、
「ITの活用に迷ってらっしゃるお寺の方は、まずは面白がってみることが大事だと思います」と仰っていました。
この記事を通して、”面白がりながら”新しいことに取り組み始めるお寺や神社が増えたらいいなと思います。
難波別院の情報
住所:大阪府大阪市中央区久太郎町4-1-11
アクセス:大阪メトロ 御堂筋線、中央線、四つ橋線 本町駅より徒歩5分
駐車場:参拝者のみ境内に駐車可能
拝観時間:午前6時〜午後4時
宗派:真宗大谷派
本尊:阿弥陀如来
拝観料:なし
創建時期:1595年(文禄四年)
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