豊川稲荷東京別院のお参りの記録(1回目)
東京都赤坂見附駅

東京都港区元赤坂に所在する豊川稲荷東京別院。最寄り駅は東京メトロ赤坂見附駅で、そこから徒歩およそ8分。都心の真ん中、企業のビルが立ち並ぶ一角に、歴史ある寺院が静かに佇んでいます。正式には曹洞宗・閣圓福山妙嚴寺と称し、その境内に祀られているのが「豐川吒枳尼眞天」です。

この別院は、文政11年（1828年）に尾張の豊川稲荷（妙厳寺）から勧請され、江戸に参詣所として建立されました。当時、すでに百万都市として発展していた江戸では、庶民の娯楽や信仰の拠り所を求める気運が高まっており、豊川稲荷東京別院はそうした人々の心をとらえ、商売繁盛・家内安全の守護神として篤く信仰されるようになりました。

豊川稲荷は曹洞宗の妙厳寺に祀られる吒枳尼天を本尊としています。狐の姿を眷属とすることから稲荷信仰と結びつき、神仏習合の名残を色濃く残す独自の形態が今日まで続いています。この点に、日本の宗教文化の柔軟さと複雑さを見ることができるでしょう。

境内に足を踏み入れると、まず石造りの稲荷像が目を惹きます。都心にありながら、そこだけ時間がゆるやかに流れているかのようで、長い歴史の中で無数の人々が祈りを捧げてきたことを思うと、胸の奥が不思議と温かくなります。

また、豊川稲荷東京別院は芸能や文化の世界からも篤い信仰を集めてきた場所です。著名な芸能関係者が奉納した幟旗や石碑が並び、そこに込められた願いや祈りの深さを感じ取ることができます。現代でも企業の繁栄を祈る経営者や個人の開運を願う参拝者が絶えず訪れており、その信仰の厚みは今も脈々と受け継がれています。

「東京の真ん中に、こんな静謐な祈りの空間があるのか」と思わされるほど、境内は落ち着きに満ちていました。周囲にはオフィス街や赤坂御所が広がっていますが、一歩門をくぐるだけで空気が一変し、心がすっと整っていくのを覚えます。まさに日常の合間に立ち寄ることのできる、都心のオアシスと呼ぶにふさわしい場所です。