石神井神社のお参りの記録(1回目)
東京都石神井公園駅

東京都練馬区石神井町に鎮座する石神井神社。最寄りは西武池袋線石神井公園駅で、駅から歩いておよそ10分の距離にあります。周辺は住宅街ですが、整然と区画された新興住宅地というよりも、むしろ古い道筋に沿って家々が建ち並ぶため、地割りのランダムさが際立っており、この地域特有の歴史の積み重ねを感じさせます。

境内の由緒書によれば、御祭神は少彦名命で、創建年代は不詳とされています。周囲の井戸を掘った際に石剣が出土し、それが石神井の地名の由来となったと伝わっています。その石剣は御神体として奉納されており、この地と深い結びつきを持つ信仰の象徴といえます。少彦名命は医薬・知恵・農耕にまつわる神としても知られ、石神井という土地の暮らしと密接に関わってきたことがうかがえます。

神社は住宅に囲まれているものの、高層建築はなく、空が広く抜けた開放感のある空間となっています。鳥居をくぐると縦に細長い参道が伸び、その右手には社務所、左手には手水舎が配置されています。正面に鎮座する社殿は木造で、屋根は銅板葺き。入母屋造の屋根構造は複雑で、細部に職人の手の込んだ技を見ることができます。落ち着いた緑青色を帯び始めた銅板は年月を経た味わいを漂わせ、境内全体の落ち着きとよく調和しています。

訪れたのは朝の早い時間帯であったため、社務所は閉じられており、人影はありませんでした。神職が常駐しているのかどうかは定かではありませんが、地域の鎮守として大切に守られていることはひしひしと感じられます。住宅街の中にありながらも、境内に一歩足を踏み入れると穏やかな静けさが広がり、石神井の名の由来ともなった伝承に思いを馳せることができました。