仙氣稲荷神社のお参りの記録(1回目)
東京都南砂町駅

仙気稲荷神社は、東京都江東区南砂に鎮座する小祠です。最寄りの東京メトロ東西線・南砂町駅から歩いておよそ10分ほど、住宅地の一角にひっそりと佇んでいます。境内はこぢんまりとしていますが、鳥居と社殿が整えられており、地域の人々に静かに守られてきたことが伝わってきます。

境内前には江東区が設置した案内板があり、そこには「南砂せんき稲荷跡」と記されています。つまり現在の社殿は古くから続く信仰の名残であり、この地がかつて「仙気稲荷」と呼ばれ、地域に親しまれていたことを物語っています。名称の「仙気（せんき）」は、下腹部に起こる痛み、いわゆる疝気（せんき）に由来しており、古来この神社はそうした病気平癒に霊験があると信じられてきました。

江戸時代から昭和初期にかけては、地域ごとにこうした「お稲荷さま」が点在しており、病気平癒や生活の安寧を祈る場所として多くの参拝者を集めたと考えられます。中でも仙気稲荷は、病気という切実な悩みに直結する信仰対象であったため、人々の心の拠り所として大切にされてきたのでしょう。

現在では大規模な社殿や賑わいはないものの、周囲の住宅街に溶け込むように佇むその姿は、過去から現在へと信仰が連綿と受け継がれてきたことを感じさせます。現代に暮らす私たちが立ち寄ると、かつてここに足を運び祈りを捧げた人々の姿がふと重なり、神社という場所が持つ「時間の層」を思い起こさせてくれるようです。