たちさかじんじゃ
立坂神社のお参りの記録(1回目)
それは4月も半ばになり、ようやくこの辺りの桜も蕾が膨らみ始め、ちらほらとその淡い色の花弁を開き始めた頃だった。
今年の春は遅い。
近年稀にみる厳冬だとニュースでは伝えていた。
だがそんな冬もようやく終わり、春の兆しが見えてきていた。
今日は暖かく、過ごしやすい日だった。
夜になっても気温は下がらず、暖かいまま。
どうやら今日は寒さに震えることもなく眠れそうだ。
明日からもこんな日が続けばいいのに。
そう思いながら床に就こうとしていた。
寝転がりながら本を読み、眠くなったらそのまま寝る。行儀はよろしくないが、日課というか習慣だった。
この日もいつもと変わらず、以前から読み続けている推理小説を読んでいた。
この手のものはあまり読んだことがなかったのだが、友人に薦められ、半ば強引に押し付けられたようなものだった。
しかし読み始めると、これがなかなか面白い。
気づけば日が変わっていることもあった。
今読んでいるものは、その押し付けられたものの続編であった。
ふと時計に目を遣ると、また日が変わりそうだ。
いけない、このまま読んでいると明日の仕事に差し障ってしまう。
そう思い、本を置いて灯りを消した。
どれくらい経っただろう。
どういうわけか、深夜に目を覚ましてしまった。
いつもなら、朝まで熟睡するものだが。
推理小説を読んだせいで、気が昂ったのかもしれない。
窓の外がやけに明るい。
今日は満月だろうか。
ぼんやりとそう思いながら、寝返りを打った。
その時。
がさ。
外で物音がした。
風が出てきたのだろうか。
今いるのは実家の一階の自室。
庭に面している部屋だ。
この家は小高い丘の上なので、風通しがいい。
冷えて風邪をひくのは御免蒙りたいものだ。
布団と毛布にくるまって寝直そう。
改めて布団に潜り込もうとした、その時だった。
がさ、がさ、がさ。
また物音がする。
今度は風ではない。
何かが『いる』。
庭に入るためには、玄関からだいぶ回り込み、物置として使っているスペースにある柵を越えなければならない。
当然、柵には鍵が掛けてある。
それも2ヵ所。
ここまで物音を出さずに入り込むのは至難の業だ。
だが確実に自然の音ではないという、確証めいたものがあった。
がさっ。
窓のすぐ外で音がした。
布団を跳ね上げて身体を起こす。
いつもなら神々しささえ感じる月明かりだが、今は逆に見たくないものを映してしまう気がした。
静かな夜に、自分の鼓動がやけに大きく、早く脈打つのがわかる。
音を出さないように、布団から出る。
泥棒だろうか。
そう思うだけで、自分でも信じられないくらいにどんどん鼓動が早くなるのがわかる。
相手が何か刃物などを持っていたら、敵うはずもない。
部屋の押し入れの中に、中学生の時に使っていた竹刀が入っていることを思い出す。
がさがさ。かりかりかり。
自室の隣、居間の窓を引っ掻くような音が聞こえる。
一刻の猶予もない。
あれだけ温かく感じた空気が、凍るように冷たい。
押し入れの扉をそっと開けると、そこに竹刀はあった。
袋から出し、そっと握りしめる。
手が震えていた。
息を大きく吸い、自分を奮い立たせる。
ぎゅっと竹刀を強く握り直し、息をそっと吐いて落ち着かせる。
だが心臓の音は相手に聞こえてしまうのではないかと思うほど大きく、もはや収めるのは困難だ。
一歩、二歩。
忍び足で窓に近づく。
かりっ、かりかりかり。
また窓を引っ掻くような音。
恐怖で震える手に、ぎゅっと力を込める。
そっと摺り足で窓の横に近づき、相手の姿を捉えられる位置に立つ。
はっ、はっ、はっ。
鼓動が早く、息が浅い。
額と背中に冷たいものが流れ落ちる。
ごくり、と喉が鳴る。
落ち着け。
息を大きく吸い、覚悟を決めて窓の外を見る。
そこにいたのは犬や猫より一回りは大きな黒い影。
とりあえず人ではない。
一気に脱力し、思わず握った竹刀を壁にぶつけてしまった。
その瞬間、振り向いた黒い影がなんと二本足で立ち上がったではないか。
月明かりで照らされた、それは。
アライグマ。
はい、こちらの立坂神社さんは延喜式内社 伊勢国 桑名郡 十五座のひとつです!
社宝はなんと!
稀代の名刀、村正が納められています!
御朱印にも捺されています!
実物をぜひ見てみたいものですね!
私の竹刀が村正だったらよかったのに。
鳥居
明治時代に矢田八幡宮を合殿した名残だそうです。
こちらの扁額は立坂神社。
むっちゃいます。
三密なんて鶏にとっちゃ関係ないんです、多分。
放し飼いです、もちろん。
夢に出そう。
すてき
みんなのコメント(14件)
何が始まるんだろう、、とあたしもドキドキして読ませて頂きました。
アライグマ!!!
野生?それともペット?
神社の投稿より、そっちが気になって、気になって(-.-;)y-~~~
断捨離さん
コメントありがとうございます!
いやいや、社宝に村正があると聞いて、刀かぁ…と思っていたら、ふと昔の実家に住んでいた頃のことをおもいだしてしまって(笑)
ホント、あれは怖かった!
最後なんか寒さも何も感じてなかったと思いますし(笑)
あ、ちなみに野生のアライグマです。
一時期(ちょうどこの頃ですね)ウチの住宅街にアライグマが出て、ゴミを漁る被害が出てたのです。
その恐らく第一号が我が家だったのです💦
できるだけ忠実に再現したのですが、楽しんでいただけたら幸いです✨
そうそう、話には実は少し続きがありまして、私と目があったアライグマは、父が昨日掘ったさつまいもを片手に、ひょこっと二本足で立ち上がり、お互いにしばらく固まっていました(笑)
あとで知ったのですが、アライグマはビックリすると、驚きのあまり立ち上がることがあるようで💦
その後、さつまいもを持ったままなぜか一礼(?)をして去って行きました(笑)
私は興奮からの脱力の落差で、その場にへたりこんでしまい、結局朝まで眠れず、次の日、仕事になりませんでしたよ💦
実話か!実話なのか!!
せつなさん、小説読む人なんですねー😄 文章が上手い。
話の続きまで入れたら立派な物語として完成しますよー。
今回はコメント欄まで見た方が勝者ですな。
せつなさん
村正でなくて良かった😅
要らぬ殺生をしてしまいかねません😁
しみちゃん
コメント欄読んでます❗️
勝った😆👍
新たな表現パターン誕生ですね💡
次作も楽しみです🤗
しみさん🌈
コメントありがとうございます!
バッチリ実話、ノンフィクションで盛ってませんよ!
読むの好きですよ、今も📖
読むだけじゃなく、書くのも好きですね✏️
でもまぁ…
年単位で書いていなかったので、だいーーーーーぶ文章力落ちてますが!
これでも工夫してるんですよ?
一人称出てこない、主観的書き方をしたり、登場人物は書き手(この場合は私ですが)とアライグマだけです。
Shokoさん✴️
コメントありがとうございます!
大丈夫です!
そこはビシッと峰で気絶させて「安心せい、峰打ちじゃ」とキメますから!
次回作…
え、これ、振りですか?
実は本題の神社自体を、あれだけしか書いてないことの方に「神様や宮司様に怒られないかな」と思っていたり(笑)
ただ今、社用で銀行の窓口受付待ちに拝読してます☺️
ワタシ…電子書籍で読んでる?と思ってしまう程
ドキドキしながら釘付けになってしまいました(^v^;)
(まだ呼ばれません笑)
しみちゃん…私もコメント欄読みましたヾ(*^▽︎^*)〃
サツマイモ片手にオジキをして帰るアライグマなんて、面白い!
chi-noさん🍀
コメントありがとうございます!
電子書籍…
お金をいただいて、それを投稿取材費(主に御朱印代)にすれば、私もホトカミさんもウィンウィンですね!(最近聞かない言葉)
少しでも楽しんでいただけたならよかったです✨
断捨離さん🎆
ホント、頭だけこっちにペコッと下げて、立ったまま(さつまいもを持っているから)夜闇に消えて行ったんですよ!
もう私は呆然としてしまって(笑)
さつまいも盗られたことなんか、どうでもいいというか頭から抜け落ちていました💦
次回作…楽しみにしてます☺️
銀行の長い待ち時間😣…お陰様でゆっくり読書の
時間が持てました☺️ありがとうございます🙏🍀
chi-noさん🍀
えぇっ、そんなネタばかりの人生ってどうなんです!?
いや、楽しいかもしれませんけど!
ではお約束はできませんが、ネタの神様が降りてくださいましたら、書くことに致しましょう(笑)
気長にお待ち下さい🙏💦
投稿者のプロフィール
せつな473投稿
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